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普段意識することが少ない「下水道」ですが、私たちの暮らしを快適で安全に保つ重要なインフラです。
この記事では、下水道の基礎知識からメンテナンスの重要性、環境負荷軽減への取り組みまでを解説します。
下水道は生活排水や雨水を処理し、公衆衛生を守るとともに都市の浸水対策にも重要です。合流式と分流式の違いや、地域ごとの料金制度も紹介します。
下水道の仕組みを理解し、日常生活を支えるインフラとしての役割や、維持管理の必要性を再認識しましょう。
下水道の基礎知識
下水道の基礎知識は以下のとおりです。
- 下水道の役割
- 下水道の仕組み
下水道の役割
下水道は生活環境を守り、快適な生活を支える役割を担っています。以下に3つの主要な役割を解説します。
- 生活排水の処理
- 下水道は家庭や事業所からの汚水を集め、処理場で浄化してから川や海に放流し、水質の悪化を防ぎます。
- 公衆衛生の向上
- 下水道はトイレや台所からの汚水を安全に処理し、病原菌や悪臭の拡散を防ぎ、快適な住環境の維持に役立っています。
- 雨水の排水
- 下水道は、都市部で雨天時に道路に溜まる雨水を排水し、浸水被害を防ぐ役割を果たします。近年の集中豪雨対策にも欠かせません。
下水道の仕組み
家庭からの生活排水は、敷地内の配管を通り、敷地外の公共汚水マスに運ばれます。
公共汚水マスは家庭排水を下水道管に接続する中継地点です。敷地内の配管は個人が、公共汚水マス以降の下水道管は自治体が管理します。
汚水は公共汚水マスを経て地中の下水道管を通り、終末処理場に向かいます。管内の勾配により自然に流れ、マンホールや中継ポンプ場を通過します。
中継ポンプ場は深い地中に達した水をくみ上げ、低地でも排水が流れる仕組みです。
下水道管は勾配を利用し、汚水や雨水を自然に流す仕組みです。深い場所に達した水や低地への排水はポンプでくみ上げます。終末処理場で浄化後、再生水として利用するか、川や海に放流します。
下水道の種類
下水道の種類は以下のとおりです。
- 公共下水道
- 流域下水道
- 都市下水路
公共下水道
公共下水道は市街地で整備され、地方自治体(市町村)が管理する下水道です。
家庭や事業所からの汚水を浄化し、川や海に放流するほか、雨水を効率的に排水して浸水を防ぐ役割も果たします。
終末処理場などの浄化施設を含め、総称して下水道と呼ばれます。
流域下水道
流域下水道は、複数の市町村にまたがる広域的な下水道です。自然な地形を利用し、水が集まるエリアごとに設計されているため、効率的な下水処理が可能です。
川や湖に流れ込む水域をまとめて管理し、複数の市町村を含む場合が多いため、都道府県が管理します。
都市下水路
雨水の排水を目的とした下水路は、公共下水道や流域下水道が整備されていない市町村に設置されています。
多くの場合、地上に開放された水路で、蓋などで覆われていません。下水路は、下水道管とポンプ場のみで構成され、浄化処理施設はありません。
集めた雨水はそのまま川や海に放流されます。生活排水を下水路に流す場合は、合併処理浄化槽での処理が必要です。
都市部では、雨水排水の効率化と浸水被害の防止が主な目的です。
下水道の排水方式の種類
下水道の排水方式の種類は、以下のとおりです。
- 合流式下水道
- 分流式下水道
地域によっては「都市排水路」や「雨水排水路」と呼ばれます。
合流式下水道
合流式下水道は、汚水と雨水を1本の管で集める方式です。早期に下水道を普及させる必要があった地域で採用されています。
大雨時には処理能力を超えると未処理の汚水が放流され、水質汚染の原因になります。そのため、集中豪雨への対策が必要です。
分流式下水道
分流式下水道は、汚水と雨水を別々の管で集める方式です。雨水は直接放流され、汚水のみが終末処理場で浄化処理します。
降雨時でも処理場への負担が少ない点がメリットです。分流式下水道は環境への配慮から近年多く採用されている方式です。
下水道のメンテナンス
下水道のメンテナンスと管理については、以下を参考にしてください。
- 下水道の保守点検作業
- トラブル発生時の対応
下水道の保守点検作業
下水道の維持管理には定期的な点検と調査が必要です。地下の下水道管が破損すると、道路の陥没や周辺環境への影響が生じ、大きな被害を招きます。
過去には下水道管の破損が原因で道路が陥没し、交通や人々に深刻な影響を与えた事故が多発しました。事故を未然に防ぐため、自治体は定期的な点検と調査が必要です。
調査は以下の方法で実施します。
- テレビカメラ調査:下水道配管内にカメラを挿入し管内を確認する
- 目視調査:大型径配管では人が入り、ひびや接合部を確認する
- 地中レーダー調査:電磁波で地中の空洞や地盤沈下を調査する
トラブル発生時の対策
万が一、道路陥没事故が発生した場合、以下の対応を行います。
- 事故現場で立入禁止や交通整理を実施し、二次被害を防ぐ
- 地中レーダーやカメラ調査で原因を特定する
- 陥没箇所に砂や砕石を充填し仮舗装で道路を仮復旧する
- 仮復旧後に現場周辺を詳しく調査し、下水道管を更新・修繕する
道路陥没事故は一度でも発生すると大きな被害につながるため、未然に防ぐための保守点検作業が必要です。
定期的な点検や早期の異常発見により、事故のリスクを最小限に抑えます。
下水道の料金について
下水道料金については、以下を参考にしてください。
- 下水道の料金体系
- 使用料の違い
下水道の料金体系
下水道料金は、水道や井戸水の使用量にもとづいて計算され、料金体系は自治体ごとに異なります。料金は「基本料金」と「従量使用料」で構成されます。
井戸水の使用量は、メーターが設置されている場合は計測値にもとづき、メーターがない場合は自治体が定めた基準量をもとに算出します。
基本料金は一定量までの使用をカバーする固定料金で、超過分には従量使用料が適用されるのが一般的です。
新潟市の料金設定を例に挙げ、50㎥の汚水排除量を2か月分として計算しました。
項目 | 詳細 |
基本料金(20㎥まで) | 2,380円 |
超過料金(21〜50㎥まで) | 158円×(50 – 20)=4,740円 |
小計 | 2,380円+4,740円=7,120円 |
消費税(10%) | 7,120円 ×1.10=7,832円(10円未満切り捨て) |
合計請求額 | 7,832円 |
使用料の違い(地域別)
下水道は自治体ごとに管理され、運営費用も各自治体で計算されます。下水道使用料や計算方法は自治体によって異なります。
代表的な自治体の基本料金は、以下のとおりです。
- 東京都:1か月で8㎥まで560円
- 横浜市:2か月で16㎥まで1,260円
- 名古屋市:2か月で20㎥まで1,120円
下水道の現状と未来
下水道の現状と未来は以下のとおりです。
- 下水道の現状と課題
- 下水道の未来
下水道の現状と課題
1960〜1970年代の高度経済成長期に整備された下水道は、老朽化が進み、耐用年数を超えています。管の破損や水漏れが頻発しており、更新や修繕、長寿命化が急務です。
対応には多額の財源が必要で、現状を把握し、計画的な取り組みが求められます。
下水道今後の目標
下水道は汚水を処理するだけでなく、水資源を循環させる持続可能なシステムを目指しています。
- デジタル技術による管理と運営
- デジタル技術の活用により、人材不足を補い、効率的な下水道管理が可能です。センサーやAIを用いた監視システムで、異常の早期検知やメンテナンスが迅速に行えます。
- 脱炭素化
- 脱炭素化とは、CO2排出を抑えて地球温暖化を防ぐことです。下水処理過程で生じるエネルギーを電力に転換し、汚泥を肥料や燃料として再利用する取り組みが進められています。
- 防災対策
- 集中豪雨や短時間豪雨による浸水被害対策として、効率的な排水システムや貯水タンクの整備が重要です。地震に備えて下水道管や処理施設の耐震化が進められ、早期復旧に向けた緊急対応計画も整備されています。
下水道に関するよくある質問
下水道に関するよくある質問は、以下のとおりです。
- 下水道の整備はなぜ必要なのか?
- 下水道に流してはいけない物とは?
- 下水道料金はどのように決まる?
- 下水道は地震に弱い?
下水道の整備はなぜ必要なのか?
下水道は、生活を安全で快適に保つための重要な役割です。
汚水を適切に処理し、感染症の拡大を防ぎ、公衆衛生を守るために欠かせません。生活排水を浄化して川や海に放流し、水質保全にも寄与しています。
豪雨による浸水被害を防ぐため、下水道は雨水を効率よく排水し、街の安全を守る役割も果たしています。
下水道に流してはいけない物とは?
- 油や脂肪分
- 油や脂肪分は水質を悪化させ、配管が詰まる原因です。
- 水に溶けない物
- ティッシュペーパーや食べかすなどは水に溶けず、配管を詰まらせます。トイレに流せるお掃除シートも、詰まりの原因になるため注意が必要です。
- 危険物・有害物質
- ガソリンやシンナー、アルコールなどの揮発性物質、農薬や殺虫剤などの薬品は流さないでください。下水管内で爆発の危険があるうえ、処理場の機能を低下させます。
下水道料金はどのように決まる?
下水道料金は水道の使用量に応じて計算され、自治体ごとに異なります。
基本使用料(一定の汚水排出量を含む)に従量使用料と消費税を加えた形で算出されます。
下水道は地震に弱い?
下水道管は道路の地下に埋設されており、地震の影響を受けやすい構造です。
短い管をつなぎ合わせた設計のため、接合部が揺れに弱く、ズレや外れが生じます。液状化が起きるとマンホールが浮き上がります。
被害が同時多発的に発生する恐れがあり、復旧には多くの時間が必要です。以上の弱点を克服するため、下水道の耐震化が進められています。
まとめ
下水道は都市部を中心に整備され、家庭からの汚水を浄化し、川や海に放流する役割を果たします。
下水道の持続性を高めるには、デジタル化や脱炭素化、エネルギー再利用が必要です。
雨水の排水にも重要で、集中豪雨による浸水被害の防止に欠かせません。
地震への耐震性強化や早期復旧体制の整備も重要です。私たちの生活を快適で安全に保つため、下水道の役割や仕組みを理解することが大切です。