浄化槽の法定検査を受けないとどうなる?保守点検だけでは足りない理由

浄化槽の法定検査を受けないとどうなる?保守点検だけでは足りない理由

「法定検査を受けてください」と言われても、内容がわからず不安になる方は多いです。

法定検査をすすめられたとき、次のような疑問がよく出てきます。

  • みんな法定検査を受けているの?
  • 保守点検をしているのに、法定検査が必要なの?
  • 受けなかった場合どうなるの?

浄化槽管理士歴10年以上の私が法定検査の内容や費用を解説します。保守点検との違いや正しい管理のしかたも紹介するので、参考にしてください。

法定検査の役割を理解し、日々の管理に役立ててください。

先に結論です。法定検査を受けないと、都道府県から指導や勧告を受けます。それでも受けずに命令にも従わないと、30万円以下の過料の対象になります。

法定検査とは|衛生と環境を守る第三者検査

この章では、次の3つを説明します。

  • 法定検査の目的
  • 法定検査の種類
  • 法定検査の頻度

目的|維持管理と放流水質を確認する

法定検査の目的は浄化槽の管理が正しく行われているか確かめ、人の健康と周りの環境を守ることです。

検査では、放流水が法律の基準を満たしているかを調べます。

保守点検や清掃が行われているか、使い方が正しいかもあわせて確かめます。

保守点検や清掃をしていても、法定検査を受けることは義務です。検査は、都道府県が指定した機関が中立の立場で行います。

種類|7条検査と11条検査の2つ

法定検査には、浄化槽設置後に行う「7条検査」と設置翌年から毎年1回行う「11条検査」の2種類があります。

法定検査の種類詳細
浄化槽設置後の検査(7条検査)新設の浄化槽について、工事・設置・機能が適切かを確認する。放流水を持ち帰り、BODを測定する。
年1回の定期検査(11条検査)7条検査の翌年以降に毎年行う。保守点検や清掃が正しいか、浄化槽の機能が保たれているかを確認する。

頻度|初回は使用開始の3か月後から5か月以内でその後は毎年1回

7条検査は、浄化槽を使い始めて3か月を過ぎてから5か月以内に受けます。

11条検査は7条検査の翌年から、毎年1回受けます。

法定検査の内容|外観・水質・書類の3項目を確認

法定検査の内容は、次の3つです。

  • 外観検査
  • 水質検査
  • 書類検査

外観検査|設置と使用状況をチェック

外観検査では浄化槽の周りに異常がないか、正しく設置されて機能しているかを確かめます。

設置状況
本体の沈下や破損・設備の傾き・土砂の流入がないかを確かめる。
使用状況
雨水や異物が流れ込んでいないかを確かめる。
設備の稼働状況
ポンプやブロワーが正常に作動しているか確かめる。
槽内の状況
汚物や異物の蓄積、槽内の水位や水流を確かめる。

水質検査|放流水の6項目を測定

水質検査では、浄化槽から放流される水の状態を調べます。検査項目は次のとおりです。

  • 水素イオン濃度
  • 溶存酸素量
  • 透視度
  • 残留塩素濃度
  • 汚泥沈殿率
  • 生物化学的酸素要求量(BOD)

水質検査で、放流水が環境基準を満たしているか確かめます。

書類検査|保守点検と清掃の記録を確認

書類検査では、保守点検記録・清掃記録・前回の清掃日を確かめます。記録から、保守点検や清掃が正しく行われているかを判断するのが目的です。

保守点検や清掃を怠ると浄化槽の働きが落ち、川の水が汚れる原因になります。検査結果をもとに、必要な対策を早めに進めましょう。

法定検査でよくある指摘と判定の基準

法定検査でよくある指摘

法定検査で指摘されやすい内容と、判定の基準は次のとおりです。

  • よく指摘される内容
  • 判定は「適正」「おおむね適正」「不適正」の3段階

よく指摘される内容

検査員はいろいろな項目を細かく調べます。よく指摘されるのは次の点です。

  • 漏水・湧水
  • 消毒剤の不足
  • 水質の悪化
  • 機械の不具合
  • 配管の問題
  • 槽内の破損・故障

問題が見つかると所有者や管理業者に報告され、管理業者が指摘された箇所を直します。消毒剤が切れていれば補充に来てもらうといった流れです。

検査と保守点検の両方をきちんと受ければ、不具合を早く見つけてすぐに直せます。

判定は「適正」「おおむね適正」「不適正」の3段階

結果が「適正」なら問題ありません。「おおむね適正」は大きな問題はないものの、直したほうがよい点がある状態です。

「不適正」は浄化槽の働きや水質、管理のしかたに問題がある状態です。すぐに直す必要があります。対処法は後のよくある質問で紹介します。

» 浄化槽法定検査判定ガイドライン(外部サイト)

法定検査の費用|7条は約13,000円・11条は約6,000円

法定検査の費用は、浄化槽の大きさや地域で変わります。

10人槽以下の浄化槽の場合、設置後の7条検査は約13,000円・毎年1回の11条検査は約6,000円です。

浄化槽が大きいほど検査費用も上がります。金額は地域で差があるので、近くの検査機関に確かめてください。

法定検査と保守点検の違い|作業内容と頻度を比較

法定検査と保守点検の違いを、次の3つに分けて紹介します。

  • 法定検査の作業内容
  • 保守点検の作業内容
  • 保守点検の頻度

法定検査は第三者機関が行い、保守点検や清掃が正しいかと浄化槽の機能を確かめます。

一方、保守点検は専門業者が行います。浄化槽をいつも正常に動かすための日常的な管理が目的です。

車に例えると、保守点検はオイル交換で法定検査は車検にあたります。

法定検査の作業内容|外観・水質・書類と問題対応

法定検査の作業内容は、次の表のとおりです。

法定検査作業内容詳細
外観検査浄化槽の構造や設置状況を確認
水質検査放流水を持ち帰り、水質が基準を満たしているか検査
書類検査保守点検記録や清掃記録を見て、正しく管理されているかを検査
問題発生時の対応検査員は浄化槽の問題を指摘し、修理や改善をすすめる

検査で問題が見つかると、直すように指摘されます。

法定検査は都道府県が指定した第三者機関が行います。保守点検と合わせて二重のチェックになるので、浄化槽を守るうえで欠かせない仕組みです。

問題を早く見つけて直せば、浄化槽の機能を保ち環境への影響も小さくできます。

定期的に点検していても、法定検査で新しい不具合が見つかることもあります。次の動画は、法定検査で「問題なし」と判定された2日後に撮影した槽の中の様子です。

わずか2日で異常が起きていて、浄化槽の中の状態は毎日変わることがわかります。

保守点検の作業内容|各槽と周辺設備をチェック

保守点検の作業内容は、次の表のとおりです。

保守点検作業内容詳細
浄化槽周囲点検マンホールの状況・破損や臭気・ブロワーの異音や振動確認
槽内の点検ブロワーの風量や放流ポンプ・配管の状態を確認
一次処理槽の点検ろ材や汚泥・スカムの有無や厚さを測定
二次処理槽の点検警報の有無・逆洗の状況を確認
沈殿槽の点検沈殿物や浮遊物の確認
消毒槽の点検消毒剤の補充・沈殿物や浮遊物の確認
保守点検全体衛生害虫の駆除・必要に応じて清掃

保守点検の頻度|20人以下は4か月に1回以上

保守点検の頻度は、浄化槽の種類や大きさで変わります。処理対象人数が20人以下の場合、4か月に1回以上の点検が必要です。

浄化槽は一か所でも不具合があると、正しく働きません。そのため定期的な点検が必要で、浄化槽を長持ちさせる役割もあります。

保守点検の内容は次の動画でも解説しています。

浄化槽は24時間動き続け、長い期間の管理が必要です。点検の予定を相談できる業者を選びましょう。
» 浄化槽適正維持管理システム(外部サイト)

法定検査を受けないとどうなる|30万円以下の過料も

法定検査は、浄化槽法で受けることが義務づけられています。

検査を受けない人への対応は、指導から始まり命令に従わなければ30万円以下の過料の対象になります。流れは次のとおりです。

  • 指導・助言:都道府県から受検するよう求められる
  • 勧告:期限を決めて受検するよう勧められる
  • 命令:受検するよう命じられる
  • 過料:命令に従わないと30万円以下の過料の対象になる

この決まりは、2020年4月に施行された改正浄化槽法で加わりました。受けないまま放っておくと、行政の対応は段階的に厳しくなります。

過料とはルールを守らせるためにお金を払わせるしくみです。刑事罰の罰金とは違い、前科にはなりません。

過去には井戸水を使う地域で地盤沈下が起き、浄化槽から水がもれる問題が報告されています。井戸水に汚水が混ざって大腸菌O157による食中毒が起き、亡くなった方もいるほど深刻な事故でした。

» 事故の詳細(外部サイト)

自分では問題がないと思っていても、近所の人に迷惑をかけているかもしれません。トラブルを防ぐには保守点検と法定検査の両方が必要です。

必ず法定検査を受けましょう。

» 浄化槽法違反についての詳細

法定検査の申し込み方法|指定機関を調べて電話・ネットで依頼

法定検査の申し込み手順は、次のとおりです。

  • 指定検査機関を調べる
  • 電話やネットで申し込む

指定検査機関を調べる|都道府県の公式サイトを確認

各都道府県の公式サイトでは、法定検査を行う指定検査機関が紹介されています。

お住まいの都道府県の公式サイトで確かめましょう。

日本環境整備教育センターや関連団体のサイトでも、全国の指定検査機関一覧が掲載されています。


» 日本環境整備教育センター(外部サイト)

電話・ネットで申し込む|地域ごとに方法が違う

申し込み方法は地域や指定機関で違います。まず電話やネットで手順を確かめてから、手続きを進めましょう。

連絡先は、都道府県の公式サイトで調べられます。

法定検査のよくある質問|検査する人・不適正・受検率・断り方

法定検査について、よく聞かれる質問に答えます。

  • 法定検査は誰が行うもの?
  • 保守点検契約をすれば法定検査は自動で行われる?
  • 「不適正」と判定されたときの対処法は?
  • 検査記録の保管期間は?
  • みんな法定検査を受けているの?
  • 法定検査は断れる?

法定検査は誰が行うもの?

法定検査は、都道府県が指定する検査機関の検査員が行います。

検査員になるには、次の条件が必要です。

  • 浄化槽の検査に関する専門知識と技能
  • 2年以上の実務経験
  • 浄化槽検査員講習会を受けて、修了後の試験に合格する
  • 合格すると浄化槽検査員の資格証が交付される

保守点検契約をすれば法定検査は自動で行われる?

保守点検契約を結んでいても、法定検査は自動で行われません。検査は、浄化槽管理者が申し込んで初めて行われます。

管理者本人が申し込むか、設置工事業者や保守点検業者を通じて申し込みましょう。

法定検査を続けて受けている方には、検査の時期に合わせて手紙で案内が届きます。

申し込みに不安がある場合は、契約している管理会社に相談すると安心です。

「不適正」と判定されたときの対処法は?

不適正と判断されたら、指摘された内容を確かめて改善を進めます。保守点検業者や清掃業者に検査結果を伝え、対応を頼みましょう。

状況によっては、都道府県知事から使用停止や改善命令が出されます。従わない場合は、6か月以下の拘禁刑や100万円以下の罰金が科されます。

一人で悩まず、契約している管理会社に相談して改善を進めましょう。

検査記録の保管期間は?

保守点検や清掃の記録は、3年間の保存が法律で決められています。法定検査の結果も同じく3年間は保管しましょう。

記録があると、浄化槽の状態や管理の履歴をあとから確かめられます。

トラブルを防ぐために、浄化槽を使っている間ずっと記録を保管している方もいます。

みんな法定検査を受けているの?

環境省の調査では、令和5年度末の11条検査の受検率は全国で49.8%でした。毎年受けている浄化槽は、およそ半分にとどまっています。

一方で、設置後に受ける7条検査の受検率は97.4%です。最初の検査は受けても、毎年の検査を続けていない家が多いことがわかります。

法定検査は断れる?

法定検査は浄化槽法で決められた義務なので、断ることはできません。費用や日程が合わないときは、検査機関に相談して日程を変えてもらいましょう。

下水道につないで浄化槽を使わなくなった場合は、使用をやめてから30日以内に廃止の届出を出します。届出を出せば、それ以降の法定検査は必要ありません。

まとめ|法定検査は保守点検と別の義務

法定検査は、浄化槽を使う管理者の義務として法律で決められています。保守点検業者や清掃業者とは別の第三者機関が行います。

法定検査の目的は、浄化槽の正しい維持管理と放流水の水質確認です。

浄化槽は構造が複雑で、正しく機能しないと悪臭や水質汚染の原因になります。

費用は7条検査が約13,000円、11条検査が約6,000円が目安です。受けないと指導や勧告の対象になるので、指定検査機関に申し込んで毎年受けましょう。

法定検査は中立の立場で浄化槽の状態を確かめ、環境を守る役割を果たします。

必ず法定検査を受け、安全で安心できる生活環境を維持しましょう。

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