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田舎での暮らしを考えるうえで、トイレの処理方法は見過ごせないポイントです。下水道が整備されていない地域では、浄化槽の設置が必要となります。
移住を検討している方は、事前に浄化槽の仕組みや維持管理について理解しておくことが欠かせません。
本記事では、浄化槽の設置方法、維持管理の流れ、費用、自治体の補助制度について解説します。
補助金を活用すれば、初期費用の負担を軽減でき、安心して田舎暮らしを始められます。
浄化槽の基本知識

浄化槽について以下で解説します。
- 浄化槽の役割
- 浄化槽の仕組み
- 下水道との比較
浄化槽の役割
浄化槽は、下水道が整備されていない地域で使用される生活排水の処理設備です。家庭から出る汚水を浄化し、自然環境への影響を抑える役割を果たします。
槽内では微生物が有機物を分解し、排水を衛生的な状態にして放流します。正しく維持管理すれば、長期間にわたって安定した処理性能を保てます。
浄化槽の仕組み

家庭からの排水が浄化槽に流れ込むと、まず固形物と液体に分離されます。固形物は沈殿し、液体部分は中間層で微生物による分解が始まります。
続いて、ばっ気槽に空気を送り込むことで、好気性微生物が有機物をさらに分解し、水を浄化します。処理された水はろ過・消毒を経て、環境基準を満たした状態で自然に放流されます。
沈殿した汚泥は定期的に引き抜かれ、処理施設で高度処理された後、肥料などに再利用されます。
浄化槽を安全かつ効果的に使い続けるには、定期的な保守点検と法定検査の実施が欠かせません。
下水道との比較
下水道は公共インフラとして家庭やビルの排水を一括処理します。一方、浄化槽は各家庭が敷地内に設置し、排水を個別に処理します。
下水道は使用量に応じて毎月料金が発生しますが、浄化槽は設置後のメンテナンス費用がかかります。
浄化槽は敷地内に設置するため、大規模な配管工事が不要です。
初期費用は高めですが維持費は比較的安く、下水道がない地域でも環境に優しい水処理が可能です。
浄化槽の種類

浄化槽には以下の2種類があります。
- 単独処理浄化槽
- 合併処理浄化槽
単独処理浄化槽
単独処理浄化槽は法律改正前に設置された設備で、トイレの排水のみを処理します。「みなし浄化槽」とも呼ばれ、水洗トイレの汚水(し尿)を浄化します。
平成13年(2001年)4月1日以降、新規設置は禁止され、新たに設置する場合は合併処理浄化槽が必須です。
単独処理浄化槽を使用する家庭には、合併処理浄化槽への移行や公共下水道への接続が推奨されています。
合併処理浄化槽

合併処理浄化槽は家庭のすべての生活排水を処理する設備です。環境に優しく、設置スペースも少なくて済みます。
管理業者による定期点検が必要で、維持管理によって長期間の水処理が可能です。
浄化槽の設置方法

浄化槽の設置には、いくつかの課題があります。以下で主要な2点を説明します。
- 設置前の確認事項
- 申請方法と注意点
設置前の確認事項
浄化槽を設置する際は、工事着手前に必要な手続きがあります。
住宅新築時に建築確認申請を行う際は、申請書に浄化槽審査書を添付し、建築主事の確認を受ける(浄化槽法第5条第1項)。
工事は「浄化槽工事の技術上の基準」に従って行う必要がある(浄化槽法第6条)。
施工は都道府県知事の登録業者、または届け出を行った業者が担当する(浄化槽法第21条第1項・第33条第3項)。
浄化槽工事業者は国家資格である浄化槽設備士を配置し、設備士が直接工事を行うか、現場を実地に監督する必要がある(浄化槽法第29条第3項)。
浄化槽の設置には法的規制と専門的な管理が求められます。
申請方法と注意点

浄化槽を設置する際は、所轄自治体に設置許可申請が必要です。設置図面や計画書などの書類を提出します。
書類の種類は地域や浄化槽の規模によって異なるため、事前確認が重要です。
工事完了後は使用開始の届出を自治体へ提出します。
設置費用を抑えるため、自治体の補助金制度を活用しましょう。
浄化槽のメンテナンス

家庭用浄化槽は定期的なメンテナンスが必要です。環境への悪影響を防ぐため、次の3点を解説します。
- 浄化槽清掃
- 保守点検
- トラブル対処法
浄化槽清掃の頻度
浄化槽清掃は、年1回以上の定期的な実施が法律で義務付けられています。
清掃時には、専門業者がバキュームカーを使って槽内の汚泥を除去します。
使用状況や浄化槽の種類によって頻度は異なりますが、最低でも年1回の清掃が必要です。
保守点検の重要性

浄化槽の性能維持には保守点検と法定検査が必要です。
浄化槽法にもとづき、保守点検は年3回以上の実施が義務付けられています。
点検では、機器の異常や不具合を早期に発見し、ブロワーや放流ポンプの修理や部品交換を行います。
槽内の汚泥の蓄積状況を確認し、清掃を実施することで、浄化槽の処理能力を安定して保つことが可能です。
定期的な点検を行うことで、浄化機能の低下や悪臭の発生といったトラブルを防ぎ、安心して使用し続けることができます。
トラブルの原因
トラブル発生時は迅速な対応が求められます。以下のトラブルがあります。
- 異臭は換気の詰まりや損傷
- 排水不良は配管の詰まりや汚泥堆積
- 異常音はブロワーやポンプの故障
- 槽内の泡が多い場合は曝気不足
- 水位異常は排水管の問題や浸透不良
- 浄化槽の漏水
トラブルが発生したら、速やかに専門業者に連絡し対応を依頼しましょう。
浄化槽の費用

浄化槽の設置費用を把握することは重要です。以下で費用の内訳を解説します。
- 初期費用とランニングコスト
- 補助金の利用方法
初期費用とランニングコスト
浄化槽を設置する際には初期費用とランニングコストが発生します。ランニングコストには以下の項目が含まれます。
- 電気代
- 清掃・保守点検費用
- 法定検査費用
- 修理や部品の交換費用
補助金の利用方法

合併処理浄化槽の設置には補助金を活用できます。詳細は自治体のホームページや窓口で確認してください。
地域によって必要書類が異なるため、事前確認のうえ申請しましょう。
補助金を受けるには設置場所など特定の条件を満たす必要があります。消費税額の補助がある場合は工事費用の領収書が必要です。
工事は指定期間内に完了し、報告書や設置工事の写真、領収書を提出します。
申請手続きで不明点があれば自治体に確認してください。
まとめ

合併処理浄化槽は、下水道が整備されていない地域で広く使われている環境配慮型の汚水処理設備です。
浄化槽は、設置に必要なスペースが少なく、導入しやすい特徴があります。設置する際は、各自治体の条例にもとづいた手続きが求められます。
信頼できる業者に相談し、必要書類をそろえて申請を進めましょう。導入後は、定期的な清掃と保守点検が法律で義務づけられています。
設置や維持に一定の費用がかかりますが、自治体によっては補助金制度があり、経済的な負担を軽減できます。