浄化槽は「単独処理浄化槽」と「合併処理浄化槽」の2タイプに分類されます。
本記事では合併処理浄化槽との違いも比較し、「単独処理浄化槽」に焦点を当て、仕組みについて解説します。
単独処理浄化槽は歴史的に広く使用されてきましたが、処理能力には限界があります。
単独浄化槽と合併浄化槽の清掃方法の違いについては以下の動画で解説しています。
単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の比較
- 昔の浄化槽で現在新たに設置することはできない
- さまざまな型式が存在する
- 単独処理浄化槽の70%は未処理で放流している
「単独処理浄化槽」、別名「みなし浄化槽」とは法律改正前に設置された、トイレの排水のみを処理する設備です。
これに対し、「合併処理浄化槽」は家庭から排出するすべての汚水を処理できる設備です。事実上、単独処理浄化槽の進化形といえます。
単独処理浄化槽は処理能力の限界から製造中止となり、新規設置も禁止されています。家庭から発生する汚水のうち、トイレ排水は約30%を占め、残り70%はキッチンや浴室からの排水です。単独処理浄化槽ではこれらを処理することができません。
未処理の汚水が環境に流出すると重大な問題を引き起こすため、現在は合併処理浄化槽または下水道への接続が基本的な処理方法です。
単独処理浄化槽は4種類ある
大きく分けると4種類
- 接触ばっ気型浄化槽
- (新、旧)分離ばっ気型浄化槽
- 全ばっき型浄化槽
- 腐敗型浄化槽
沈殿分離接触ばっ気型浄化槽の特徴
接触ばっ気浄化槽の特徴は、第一槽と第二槽の水位が同じであり、接触ろ材が備わっていることです。
第一槽の沈殿分離室で汚水が固体と液体に分離されます。分離された中間水は接触ばっ気槽へ移され、微生物による浄化が行われます。
処理過程で重要な役割を果たすのが「接触ろ材」で、微生物が繁殖しやすい環境を提供します。微生物はろ材に生物膜を形成し汚れた水を浄化します。
点検時は、ろ材に付着した生物膜を取り除くため「逆洗」という作業が必要です。
以下の動画では、逆洗作業の手順と方法をわかりやすく解説しています。
沈殿分離ばっ気型浄化槽の特徴
沈殿分離ばっ気浄化槽は、先に説明した接触ばっ気浄化槽と構造上似ており、第一槽と第二槽の2つの部屋から成り立っていますが、いくつか異なる特徴があります。
第一槽の水位がばっ気槽よりも高く設計されている点、接触ろ材を使用していない点が挙げられます。
接触材の代わりに槽の容積を大きく取ることで、汚泥の滞留時間を延ばし微生物を用いた汚水処理の効率を高めています。
全ばっ気型浄化槽の特徴と注意点
全ばっ気型浄化槽の特徴は、一つの槽で「ばっ気槽と沈殿室が一体化」している点です。
汚水が流入すると撹拌が行われ、活性汚泥を生成し汚水を浄化処理します。
活性汚泥法は、汚水中に存在する微生物の活動を利用した浄水処理方法です。汚水を撹拌し微生物の増殖を促進させ、微生物が凝集することで重さが増し、沈殿する仕組みを活用します。
利用者数が増えるか使用頻度が高まると、容量が小さいため処理性能は落ちます。定期的な清掃が必要不可欠であり、年に2回以上の清掃が義務づけられています。
ブロワー不要!腐敗型浄化槽の特徴
単独処理浄化槽の初期形態は腐敗型浄化槽であり、平面酸化床型と散水ろ床型の2種類があります。
家庭用浄化槽では、平面酸化床型が多く採用されています。腐敗型浄化槽の特徴は、微生物の処理活動を促進するために空気を供給するブロワーが不要なこと。
多くの浄化槽ではブロワーが微生物への空気供給に必須ですが、腐敗型浄化槽はブロワーを使用しない珍しい型式になります。
腐敗型浄化槽の仕組みを理解するために、自然界の川の流れをイメージしてください。川ではブロワーなどを使用せずとも、水流や藻類、石の間の空間を通じて自然と空気が混入します。
腐敗型浄化槽は自然のプロセスを模倣して設計されており、汚水中の微生物が川の流れと同様の方法で自然に空気を取り込みながら、汚水を処理する仕組みになっています。
浄化槽の蓋はメッシュ構造となっており、「穴から空気を取り込む構造」になっています。
腐敗型浄化槽には排気口も備えられており、取り込まれた空気を外部に放出する役割を持っています。汚泥が嫌気状態になり、処理過程で汚泥は真っ黒に変色します。
平面酸化型浄化槽の特徴と仕組み【動画あり】
平面酸化型浄化槽は腐敗型浄化槽の一種で、家庭や小規模施設で広く使用されています。
この浄化槽では、汚水が凹凸のある酸化床を通過する際に、表面で微生物が生物膜を形成し、有機物を分解します。
平面酸化型浄化槽には処理能力に限界があるため、大量の汚水を処理する必要がある場合や、高い水質浄化レベルが必要な状況では適していないというデメリットがあります。
以下の動画をご覧いただければより詳しく理解できます。
散水ろ床型
散水ろ床型浄化槽は、散水樋の下に石を敷き詰めた構造を持つ浄化システム。
散水樋から落ちる水がろ過材に触れ、表面に付着した汚れが微生物の活動によって分解します。
以下の動画をご覧いただくことで、構造や仕組みを理解していただけます。
まとめ
単独処理浄化槽は適切に管理されている場合、一定の浄化効果を発揮しますが、トイレ以外の排水は処理されずに放流されるため環境負荷の一因です。
単独処理浄化槽や汲み取り式トイレを使用している家庭や施設は、下水道への接続や高度な浄化機能を備えた合併処理浄化槽への切り替えがオススメです。
改善策には高額な費用が必要となり、移行が難しいケースもあります。
リフォームの検討中や浄化槽に問題が生じている場合は、下水道への接続や合併処理浄化槽への移行する適切なタイミングです。