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BOD(生物化学的酸素要求量)は水の汚れを判断する指標です。
数値が高いほど水質が悪化し、水生生物に悪影響を及ぼします。本記事では、BODの仕組みや数値が上がる原因、水質を守る対策について解説します。
生活排水や産業排水がBODを高める主な要因です。記事を読むことで、BODの理解が深まり、日常生活でできる対策がわかります。
BODを正しく知り、水質保全に役立てましょう。
BOD(生物化学的酸素要求量)の概要

BODとは、水中の微生物が有機物を分解する際に消費する酸素量を指します。
採取した水を20℃で5日間放置し、分解に使われた酸素量を測定することでBODを算出します。
酸素の消費量が多いほど有機物が多く、BODが高くなります。
BODが高いほど水中の有機物が多く、水が汚れていることを示します。水質の指標として利用され、数値が高いと水中の酸素が不足し、生物に悪影響を及ぼします。
有機物には動植物のほか、食品残渣や紙、布などが含まれます。
一般的な魚が生息できる水のBODは5mg/L以下とされ、水道水の原水となる河川の目安はBOD3mg/Lです。
BODが高くなる原因

BODが高くなる原因は、以下のとおりです。
- 有機物の過剰な流入による影響
- 生活排水・産業排水がBODに及ぼす影響
- 環境変化がBODに与える影響
有機物の過剰な流入による影響
BODが高くなる主な原因は、有機物の過剰な流入です。
有機物は微生物によって分解される際に酸素を消費します。消費量が多いほど酸素の消費も増え、BODが上昇します。
有機物の流入源には、生活排水や産業排水が挙げられます。近年では、気候変動による集中豪雨も影響を与えています。
生活排水・産業排水がBODに及ぼす影響
生活排水に含まれる食品残渣や洗剤には多くの有機物が含まれ、BODを上昇させる要因です。
下水道や浄化槽で適切に処理された排水はBODが低くなります。しかし、未管理の浄化槽や未処理の排水が河川や海に流入すると、BODが上昇します。
処理後の排水でも浄化しきれずに流出する可能性があり、安心とはいえません。
以下の表は、BODを下げるために必要な水の量を示しています。
流すもの | BOD(mg/ℓ) | 魚が住める水質(BOD5mg/ℓ以下)にするために必要な水の量(ℓ) |
使用済み天ぷら油(大さじ1杯/20mL) | 30 | 6,000 |
牛乳(コップ1杯/200mL) | 16 | 3,300 |
ビール(コップ1杯/180mL) | 15 | 3,000 |
米のとぎ汁(1回目/500mL) | 6 | 1,200 |
シャンプー(1回分/4.5mL) | 1 | 200 |
台所用洗剤(1回分/4.5mL) | 1 | 200 |
食品工場や紙・パルプ工場などの産業排水も、多くの有機物を含みます。適切に処理されないと、生活排水と同様にBODの上昇を引き起こします。
環境変化がBODに与える影響
自然のバランスが崩れると、BODが上昇します。集中豪雨で土砂や枝葉が河川や海に流入すると、BODが高くなります。
土砂には有機物が多く含まれ、枝葉も植物由来の有機物のため、BODを直接上昇させる要因です。
過剰な栄養分が流入した湖沼ではアオコが発生し、大量発生すると魚が死滅します。死骸の分解に大量の酸素が消費され、BODが上昇します。
酸素不足が続くと好気性微生物が減少し、嫌気性微生物が増加します。水質が悪化し、臭気が発生します。
嫌気性微生物も有機物を分解しますが、BODを十分に下げるには好気性微生物の働きが必要です。
自然には浄化作用がありますが、環境の変化が大きいと追いつかず、水質が悪化する恐れがあります。
BODが高いときのトラブルとリスク

BODが高いときのトラブルとリスクは、以下のとおりです。
- 水生生物が受けるBODの影響
- BODによる生態系バランスの崩壊
- 臭気や衛生リスクの発生
水生生物が受けるBODの影響
BODが高くなると、好気性微生物が大量の酸素を消費し、魚や貝、エビなどの水生生物が酸欠で死滅します。
酸素を多く必要とする魚類は影響を受けやすく、水面近くで口をパクパクさせるのは酸素不足のサインです。
死骸の分解にも酸素が消費されるため、酸欠が進み、水生生物全体に悪影響を及ぼします。
BODによる生態系バランスの崩壊
BODが上昇すると、有機物の分解で栄養分が増え、藻類が過剰に増殖し、アオコが発生します。
アオコは水中の光を遮り、光合成ができなくなった水中植物が枯れる原因に。水中植物は魚の産卵や稚魚の成育に重要なため、生態系全体に影響を及ぼす恐れがあります。
臭気や衛生リスクの発生
BODが高いと水中の有機物が多く、分解過程で大量の酸素が消費され、酸素不足になります。酸素が不足すると、有機物の分解時に臭気が発生します。
酸素を必要としない嫌気性微生物が増えるためです。
嫌気性微生物が有機物を分解すると、硫化水素(腐った卵のような臭い)やアンモニア(刺激臭)などの原因になるガスが発生します。
BODが高い場合に実施すべき対策

BODが高い場合に実施すべき対策については以下のとおりです。
- 家庭でできるBOD対策
- 産業施設におけるBOD削減対策
- 政府・自治体によるBOD規制の取り組み
家庭でできるBOD対策
家庭でできるBOD対策として効果的なのは、生活排水に注意することです。
「家庭の排水口は海や河川の入口」と考え、以下の点に気をつけましょう。
- 油は排水口に流さず、適切に処理する
- 食品かすは三角コーナーやごみ取りネットで捨てる
- 環境に優しい自然分解性の洗剤を使う
排水管理だけでなく、下水道や浄化槽が正しく機能しているか確認することも重要です。
産業施設におけるBOD削減対策
産業施設では、高度な排水処理設備の導入や製造工程の見直しによるBOD削減が求められます。
食品工場(飲料・乳製品・醤油など)の排水は、油分や糖分がBODを上昇させる要因になります。
製紙工場では、パルプ由来の有機物(木材や古紙)がBODを高めます。
業種ごとにBODの発生源が異なるため、特性に応じた対策が必要です。
政府・自治体によるBOD規制の取り組み
政府は水質汚濁防止法で産業排水を規制し、河川や湖沼の水質を環境基準にもとづいて厳しく管理しています。
自治体も政府の方針に従い、下水道整備や浄化槽の設置を促進し、生活排水によるBODの削減を進めています。
取り組みにより水質は改善していますが、気候変動による洪水対策なども求められます。
BODを低減するための方法

BODを低減するための方法は、以下のとおりです。
- 物理的処理
- 化学的処理
- 生物学的処理
物理的処理
物理的処理では、ろ過や沈殿、スクリーン(網目状のフィルター)を使い、水中の有機物を除去します。
微細な物質は沈殿しにくいため、化学的手法で凝集させた後に処理を行います。
物理的処理の役割は、大きなごみや除去しやすい有機物を取り除き、後の処理工程を効率化することです。
化学的処理
化学的処理は、薬剤を使用し、凝集沈殿法や酸化還元法で水中の有機物を分解・除去する方法です。
凝集沈殿法では、微細な金属類などを凝集させ、大きな塊にして沈殿しやすくします。
酸化還元法は、薬剤を用いて有機物を酸化(分解)または還元(無害化)する処理方法です。
生物学的処理
生物学的処理は、微生物を利用した環境にやさしい方法です。
微生物が有機物を餌として分解するため、処理時間は微生物の数や活性によって変わります。
酸素を供給しながら好気性微生物を活性化させ、有機物を分解します。
BODと関連する主要な水質指標

BODと関連する主要な水質指標は、以下のとおりです。
- CODとBODの違い
- 全窒素・全リンなどBODに関連する指標
CODとBODの違い
BODと似た指標に「COD」があります。違いは、以下のとおりです。
名称 | 測定内容 | 使用される場所 |
BOD(Biochemical Oxygen Demand/生物化学的酸素要求量) | 水中の有機物(汚れ)を微生物が分解するときに消費する酸素量 | 河川 |
COD(Chemical Oxygen Demand/化学的酸素要求量) | 水中の有機物(汚れ)を化学薬品で酸化するときに消費する酸素量 | 湖沼・海域 |
CODは、水中の有機物を化学薬品で酸化する際に消費される酸素量を指し、主に湖沼や海域で使用されます。
BODもCODと同様に、水中の有機物が分解される過程で消費される酸素量を示しますが、測定方法が異なります。BODは微生物、CODは化学薬品を利用して測定します。
水をきれいにする基本は、有機物を分解(酸化)することです。
微生物を利用する場合は「分解」、化学薬品を使う場合は「酸化」と表現しますが、仕組みは同じです。
日本では、河川の水質指標にはBODを、湖沼や海域にはCODを用います。
全窒素・全リンなどBODに関連する指標
BODやCODに加え、全窒素と全リンも排水基準に定められています。
水中にはさまざまな形で窒素やリンが含まれており、合計したものが全窒素および全リンです。
窒素とリンは植物や藻類の栄養源となり、過剰に供給されると富栄養化の原因になります。
窒素は微生物によって分解されやすく、水から抜けやすい性質があります。一方、リンは水中に残りやすいため、管理が特に重要です。
BODに関する知識のまとめ

BODは水質を判断する指標で、数値が高いほど水が汚れています。河川ではBOD、湖沼や海ではCODが用いられます。
BODが上昇する主な原因は生活排水です。
食品残渣や洗剤など、有機物を多く含む排水が未処理のまま流れると、水質が悪化します。
下水道や浄化槽を通しても、処理しきれずに川や海へ流入する可能性があるため、注意が必要です。
生活排水を見直すことで水質は改善できます。持続可能な社会のために、日々の工夫を重ね、未来のきれいな水を守りましょう。