
- 経年劣化
- 槽内の汚れや堆積物
- 排気管や通気孔の詰まり
- 酸素供給不足
- 廃棄物や油脂の誤った処理
- マンホールの密閉不良
定期的な保守点検や浄化槽清掃で、私たちに寄せられるお客様からの相談の多くは、「家屋内や浄化槽周辺から発生する不快なニオイ」に関するものです。
これらのニオイは、時に浄化槽からのSOSとなることもあります。
通常、浄化槽が適切に使用・管理されていれば、ニオイを発生させることはありません。
しかし、浄化槽の「経年劣化やブロワーの故障」が発生すると、ニオイの原因となります。
この記事では、お客様から頻繁に寄せられる浄化槽のニオイについてのお悩みをまとめ、原因と解決策をわかりやすく解説しています。
今回のテーマについての解説を動画でも行っております。
詳細な解決策を学びたい方は、ぜひ動画を視聴ください。
浄化槽とは?微生物が主役の水処理システム!

浄化槽は、下水道の整備がされていない地域に多く設置されている「汚水処理装置」で、目的は水質の浄化です。
浄化槽は、「嫌気ろ床槽1室」「嫌気ろ床槽2室」「ばっ気槽」「消毒槽」の4つの区画を通して、水を浄化します。
重要なのは、この浄化プロセスにおいて、「2種類の微生物」の働きが欠かせない点です。
槽内では微生物が活動し、水中の有機物を分解して浄化処理を行います。
まず、嫌気ろ床槽1室において有機物が分解され、その後、嫌気ろ床槽2室において更に細かく分解・処理されます。
続いて、ばっ気槽に移送され微生物は水中の窒素を還元します。
最後に、消毒槽で残留する微生物や大腸菌が滅菌されることで処理が完了し、浄化された水が放流されます。

窒素について詳しく解説した動画はこちら↓
嫌気性微生物:酸素が嫌いな微生物
嫌気性微生物とは、酸素を必要としない微生物のことを指します。
家庭から排出されるトイレ、台所、浴室の生活排水は、最初に「嫌気ろ床槽1室」に流れ、固形物と水が分離されます。その後、「嫌気ろ床槽2室」に進む流れになります。
こちらの槽には、「ろ材」という嫌気性微生物が住みやすい環境を提供する装置が使用されています。
汚水がろ材を通過する際に、嫌気性微生物が固形物を分解し、水を浄化しています。
この過程を経ることで、水は次第に透明になります。
以下の動画では、微生物の基本的な特性や、浄化槽の仕組みについてわかりやすく解説しています。
浄化槽の活性化!好気性微生物の重要性!
「嫌気ろ床槽1室と2室」を通過した後の水は、次に「ばっ気槽」へと移送されます。
ばっ気槽では、「ブロワー」を用いて酸素が供給され、酸素を必要とする「好気性微生物」が働き、汚水をさらに分解します。
そして、最後に「消毒槽」へと水が流れます。ここでは、塩素を使用して大腸菌などの細菌を滅菌し、安全な水として河川や用水路へと放流します。
最終的に、浄化槽の終着点となる「消毒槽」にて、塩素を用いて大腸菌をはじめとする細菌を滅菌します。
この過程を経た安全な水が、最終的には河川や用水路へと放流されます。
ニオイはどこから?原因と解決方法

浄化槽からのニオイは、何が原因で発生するのでしょうか?
ニオイ問題の解決のためには、まず原因を理解することが重要です。
以下では、ニオイが発生する原因について詳しく解説します。

ニオイの原因「ガス」
浄化槽からのニオイは、主に「尿から発生するアンモニアや硫化水素などのガス」が原因です。
アンモニアは、鼻を突くような尿のニオイを発生させ、硫化水素は腐敗した卵やタマネギに似たニオイを放ちます。
動画では、ガスが実際にどのように発生しているかを映像から確認いただけます。
不快なニオイの原因と解消法
浄化槽の周辺から不快なニオイが漂う場合、機械の故障や水質の悪化が原因となることがあります。
- マンホールの蓋の破損:ニオイの拡散防止のため、蓋の点検と交換が必要
- 浄化槽の機能低下:微生物の働きによる有機物の不十分な分解が原因
- エアー不足:酸素供給の不足による好気性微生物の機能低下
- 異常な堆積物や汚れ:定期的な清掃と汚泥の除去が必要
- 排水管や配管の問題:詰まりや破損が原因でのニオイ発生
- 不十分なメンテナンス:定期的な浄化槽の清掃や点検が必要
周辺のニオイ問題は、定期的な管理と適切な対策によって解決できます。
排水口からの不快なニオイ
排水口からの不快なニオイは、浄化槽からの逆流が原因かもしれません。
キッチンや洗面台の下には、「S」字の形をした排水管があり、これを「排水トラップ」と呼びます。
この排水トラップの役割は、ニオイが逆流するのを防ぐことです。
排水トラップが破損したり、正常に機能しなくなった場合、排水口から不快なニオイが漂ってくる可能性があります。
家庭で実践可能!効果的な脱臭法!

- 油・食べカスの対策:洗う前にキッチンペーパーで拭き取り、槽内のニオイを防ぐ
- 節水の重要性:適量の水使用と一度に大量の水を避けて、浄化槽の負荷を軽減
- 洗剤の適量使用:過剰な使用は避け、槽内の微生物を保護
- ブロワーの風量調整:酸素供給を増やすことで微生物の活性を促進。設定は業者に相談
- 排水溝の清掃:詰まりや汚れを定期的に取り除く
これらの方法を実践することで、家庭で浄化槽のニオイ改善に取り組むことができます。
ただし、具体的な状況や浄化槽の種類に合わせて、以下に続きの解説をいたします。
- 洗剤の選択:環境に優しいものや無添加の洗剤で微生物への影響を抑える
- 定期メンテナンス:清掃や点検を実施し、汚泥や詰まりを除去。シーディング剤で微生物を活性化
- 脱臭剤の活用:浄化槽専用脱臭剤でニオイ成分を分解
- 専門家への相談:問題解消できない場合は、浄化槽の専門家に助言を求める
ブロワー故障の主な原因と対処法!
ニオイの原因として最初に疑うべきは、「ブロワーの故障」です。
ブロワーが故障した場合、浄化槽全体の機能が停止し、微生物による分解も停止します。これがニオイの発生源となる可能性があります。
ニオイを感じた場合は、最初にブロワーが正常に稼働しているかを確認してください。
「異音が聞こえる」あるいは「運転が停止している」など、異常の兆候が見られる場合は、浄化槽の管理会社に連絡し、修理や交換の必要性を相談してください。
修理や交換の間、少なくとも生活の快適性を保つためには、消臭剤の使用がおすすめです。
「サナ・ザ・合併」は、悪臭の元を生化学的な仕組みで効果的に分解し、優れた消臭効果を発揮します。

ブロワーの交換時には一時的にニオイが発生することがあるため、予め消臭剤を常備しておくことをおすすめします。
これらの対策を取ることで、ブロワーの故障によるニオイ問題を解決し、浄化槽の正常な機能を回復させ、快適な生活を取り戻すことができます。
マンホール破損がニオイの原因?
マンホールの耐用年数は一般的に30年といわれていますが、これは標準的な値であり、使用状況や環境条件により変動します。
特に、車が乗る場合は約15年、車が乗らない場合でも約20年が目安と考えてよいでしょう。
長期間の使用や過度な負荷が原因でマンホールにひびが入ったり破損したりすると、浄化槽からの不快なニオイが発生する可能性があります。
その場合、唯一の解決策は「マンホールの交換」です。
マンホールの蓋は、ニオイの制御だけでなく、浄化槽への「落下防止や雨水の侵入防止など、多様な重要な役割」を果たしています。
破損していると、予期せぬ事故や問題を招く可能性があります。
したがって、マンホールの適切な管理と、必要に応じた交換が重要となります。
ご自身の生活環境を守るためにも、適切なメンテナンスを心掛けてください

新築でも注意!ニオイ発生のリスクと対策!

新しく設置された浄化槽では、「微生物の環境が整うまでに約6ヶ月程度」の時間が必要となります。
そのため、この期間中はニオイが発生する可能性があります。
これは、汚水を分解する微生物がまだ十分に繁殖していないため、浄化槽の機能が完全には発揮されていないためです。
このような状況を解決するためには、「シーディング剤」の使用がおすすめです。
微生物の活性化を促進し脱臭効果もあります。
シーディング剤は、微生物を活性化させ、ニオイの発生を抑える効果があります。
「サナ・ザ・合併」の使用方法は、使用開始直後だけでなく、清掃後の使用にも最適です。
この商品は、「ニオイを抑えるだけでなく、水質改善の効果も高くて環境にも優しい特長」があります。

害虫が引き起こすニオイとは?
浄化槽内は一年中温暖で、「虫にとって住みやすく、食物に困らない理想的な環境」を提供しています。
害虫は細かい隙間から侵入し、浄化槽内で卵を産むことで繁殖します。
特に「アメリカミズアブ」は害虫の代表格で、その幼虫は周囲に不快なニオイを放ちます。
その姿は非常に不快で、長年にわたり浄化槽に携わってきた私でさえ、その存在に嫌悪感を抱くほど。
ミズアブ対策に効果的な殺虫プレート「バポナ」が活躍します。
「バポナ」は槽内に設置するだけで効果があり、その効果は約3ヶ月間持続します。
バポナの利用により、槽内に存在する害虫に関する悩みを解消することができます。
特に春から夏にかけて使用すると、「虫の繁殖が活発な時期に効果を実感しやすい」です。

虫の画像は使用していないので、安心して見てください。
ニオイを軽減する方法と維持管理の重要性!

ニオイの原因について解説してきましたが、浄化槽を快適に使用するためには「正しく使用」することが大切です。
使い方のポイントは以下の通りです。
- 廃棄物の処理:油や食べカスを流さず、適切に処理して分解を助ける
- 節水:浄化槽の負荷を減らすため、水の使用を控える
- 洗剤使用の注意:菌のバランスを保つため、洗剤は必ず適量のみ使用する
これらの使い方に加えて、「法定検査や保守点検、清掃」といった維持管理を定期的に行いましょう。
適切な維持管理を行うことで浄化槽の機能を最大限に活用し、ニオイの発生を軽減することができます。
浄化槽に流すべきでないもの!
生活排水は微生物によって分解され、きれいな水へと変えられます。しかし、全てを完全に分解するわけではありません。
特にトイレでは、トイレットペーパー以外の物は流すべきではありません。
「流せるお掃除シート」なども微生物によっては分解できず、排水管の詰まりや故障、不快なニオイの原因となります。
台所では食べ残しはしっかりと処理し、流す前に油を拭き取るなど油分を流さないように注意しましょう。
お風呂でも、髪の毛が流れ込まないように注意が必要です。
生活習慣の見直しと浄化槽の正しい利用方法を守ることで、浄化槽の性能を最大限に発揮し、持続的な清潔さを維持することが可能です。
要注意!洗剤の使用に隠された落とし穴
通常の使用量を守る限り、洗剤の使用は浄化槽に影響を及ぼすことはありません。ただし、過剰な使用は避けるべきです。
特に「アルカリ性洗剤」カビ取り剤やパイプ用洗剤などは浄化槽にとっては天敵となります。
大量に使用すると槽内の微生物が死滅し、処理機能が低下する可能性があります。少量であれば問題ないため、適切な使用量を守ることが大切です。
できる限り「中性洗剤」または「酸素系洗剤」の使用をおすすめします。
これらの洗剤は微生物に対する影響が少なく、浄化槽の健全な環境を維持するのに適しています。
浄化槽オーナー必見!責任と義務

浄化槽の管理は法律により「法定検査、保守点検、清掃の実施」が義務づけられています。
これらの維持管理を適切に行うことで、浄化槽からのニオイを抑制し、快適な生活環境を保つことができます。
浄化槽の適切な維持管理は、所有者の「責任と義務」であり、快適で健康的な環境を実現するために欠かせない要素です。
定期的に検査や保守点検を行い、廃棄物の適切な処理や節水に努めることも重要です。
これらの取り組みを通じて、「持ち主としての責任を果たし、未来の子どもたちへ良好な水環境を継承」することができます。
まとめ

浄化槽の正しい使用法を実践することで、生活の質を向上させることが可能です。
法律に基づき「法定検査、保守点検、清掃」が浄化槽の維持管理として求められます。定期的に実施することで、浄化槽からの不快なニオイを制御できます。
加えて、日々の生活においても留意すべき事項が存在します。
油や食べ物の残りかすを適切に処分し、節水を心掛けるとともに、洗剤も適正な量を用いることが重要です。
以上の取り組みによって、浄化槽の機能を最大限に発揮し、ニオイの発生を最小限に抑えることが可能となります。
私たち浄化槽管理士は、専門的な知識と豊富な経験を活かし、日々さまざまな問題解決に向けて尽力しております。
