BODは生物化学的酸素要求量のことで、水の汚れ具合を示す指標です。
BODの数値が高いほど水は汚れており、魚などの水の生き物への影響も大きくなります。生活排水や産業排水は、BODを高める主な原因です。
浄化槽管理士歴10年以上の私がBODの仕組みや数値が高くなる原因と水質を守るための対策を解説します。
家庭でできる対策も紹介するので、毎日の水の使い方を見直すきっかけにしてください。
BODとは|微生物が使う酸素の量で水の汚れを表す指標

BODとは、水の中の微生物が有機物を分解するときに使う酸素の量を表す指標です。
有機物とは、動物や植物の死骸・食べ物のかす・紙くず・布などの汚れのことです。測定する水を20℃で5日間置き、その間に減った酸素の量を調べて求めます。
微生物が使う酸素の量が多いほど有機物も多く、BODの値も高くなります。つまり、BODが高いほど水が汚れているということです。
数値が高いと水中の酸素が足りなくなり、生き物が住みにくくなります。
一般的な魚が住める水のBODは5mg/L以下、水道水のもとになる川の水は3mg/L以下が目安です。
BODが高くなる原因|有機物・排水・環境の変化

BODが高くなる原因は、次の3つです。
- 有機物の大量流入
- 生活排水・産業排水の流入
- 集中豪雨などの環境変化
有機物の大量流入
BODが高くなるいちばんの原因は、有機物が大量に流れ込むことです。
有機物は微生物に分解されるときに酸素を使います。流れ込む量が多いほど使われる酸素も増え、BODが上がります。
主な流入源は、家庭から出る生活排水や工場などから出る産業排水です。
生活排水・産業排水の流入
生活排水に含まれる食べ物のかすや洗剤には有機物が多く、BODを上げる原因です。下水道や浄化槽できちんと処理された排水は、BODが低く抑えられます。
一方で管理されていない浄化槽の排水や処理していない排水が川や海に流れ込むと、水が汚れてBODが高まります。処理した排水でも、有機物をすべて取り除けるとは限りません。
次の表は、流したものを魚が住める水質まで薄めるのに必要な水の量を示したものです。
| 流すもの | BODの量(g) | 魚が住める水質(BOD5mg/ℓ以下)にするために必要な水の量(ℓ) |
| 使用済み天ぷら油(大さじ1杯/20mL) | 30 | 6,000 |
| 牛乳(コップ1杯/200mL) | 16 | 3,300 |
| ビール(コップ1杯/180mL) | 15 | 3,000 |
| 米のとぎ汁(1回目/500mL) | 6 | 1,200 |
| シャンプー(1回分/4.5mL) | 1 | 200 |
| 台所用洗剤(1回分/4.5mL) | 1 | 200 |
食品工場や紙・パルプ工場などから出る産業排水にも、有機物が多く含まれています。きちんと処理せずに流すと、生活排水と同じようにBODを上げて水を汚すのが問題です。
集中豪雨などの環境変化
自然環境の変化も、BODを上げる原因の一つです。たとえば集中豪雨で土砂や枝葉が川や海に流れ込むと、BODは高くなります。
土砂には有機物が多く含まれ、枝葉も植物からできた有機物です。どちらもBODを直接押し上げます。
近年は集中豪雨が増え、下水処理施設の処理能力を超えることもあるほどです。処理しきれなかった汚水がそのまま川や海に流れ込むと、BODが上がります。
栄養分が多く流れ込んだ湖や沼では、アオコと呼ばれる藻が大量に発生します。
アオコが増えすぎて魚が死ぬと、その死骸の分解に大量の酸素が使われてBODが上がるのです。
BODが高いときのリスク|酸欠・生態系の乱れ・悪臭

BODが高いときに起こるトラブルとリスクを3つ紹介します。
- 水生生物が酸欠で死ぬ
- 生態系のバランスが崩れる
- 悪臭や衛生上の問題が起こる
水生生物が酸欠で死ぬ
BODが高くなると、酸素を使って有機物を分解する好気性微生物が大量の酸素を消費します。その結果、魚・貝・エビなどの水生生物が酸欠で死んでしまいます。
とくに酸素を多く必要とする魚は影響を受けやすく、水面で口をパクパクさせるのは酸素不足のサインです。
さらに死骸の分解にも酸素が使われるため、酸欠はますます進み水生生物全体に悪い影響が広がります。
生態系のバランスが崩れる
BODが上がると、有機物が分解されて栄養分が増えます。その栄養で藻が増えすぎると、アオコが発生するのです。
アオコは水中に届く光をさえぎり、光合成ができなくなった水草を枯らす原因になります。
水草は魚が卵を産んだり稚魚が育ったりする場所です。水草が減ると、生態系全体に影響が広がるおそれがあります。
悪臭や衛生上の問題が起こる
BODが高い水は有機物が多く、分解のときに大量の酸素が使われるため酸素不足になります。酸素が足りないと、有機物が分解されるときに悪臭が出ます。
これは、酸素がなくても働く嫌気性微生物が増えるためです。嫌気性微生物が有機物を分解するときに、硫化水素やアンモニアなどのガスが出ます。
硫化水素は毒性のあるガスで、においだけでなく人の健康にも悪い影響をおよぼします。
嫌気性微生物も有機物を分解しますが、BODを十分に下げるには好気性微生物の働きが必要です。
BODを下げる対策|家庭・産業施設・政府や自治体の取り組み

対策は、家庭・産業施設・政府や自治体の3つの立場に分けて紹介します。
- 家庭でできるBOD対策
- 産業施設でのBOD削減対策
- 政府・自治体によるBOD規制の取り組み
家庭でできるBOD対策
家庭でできるBOD対策でいちばん効果があるのは、生活排水に気をつけることです。
「家庭の排水口は海や川の入口」と考え、次の点に気をつけましょう。
- 油は排水口に流さず、ふき取るか固めてごみに出す
- 食べ物のかすは三角コーナーやごみ取りネットで捨てる
- 自然の中で分解されやすい洗剤を使う
排水に気をつけるだけでなく、浄化槽を使っている家庭では定期的な保守点検と清掃も大切です。浄化槽が正しく働いていれば、排水のBODを低く抑えられます。
産業施設でのBOD削減対策
産業施設では、排水処理設備の導入や製造工程の見直しによってBODを減らすことが求められます。
たとえば飲料・乳製品・醤油などの食品工場の排水では、油分や糖分がBODを上げる原因です。製紙工場では、木材や古紙からできたパルプの有機物がBODを高めます。
このように業種によってBODのもとになるものが違うため、それぞれに合った対策が必要です。
政府・自治体によるBOD規制の取り組み
政府は水質汚濁防止法という法律で産業排水を規制し、川や湖の水質を環境基準にもとづいて厳しく管理しています。
自治体も政府の方針に従って下水道の整備や浄化槽の設置を進め、生活排水によるBODを減らしているところです。
こうした取り組みで、水質はよくなってきています。ただし近年は、気候変動による洪水への対策も新しい課題です。
排水処理でBODを下げる方法|物理的・化学的・生物学的処理

排水処理でBODを下げる方法は、大きく3つに分けられます。
- 物理的処理
- 化学的処理
- 生物学的処理
物理的処理
物理的処理では、ろ過・沈殿・網目状のフィルターのスクリーンなどを使って水中の有機物を取り除きます。
とても小さな物質は沈みにくいため、薬剤で固まりにしてから取り除きます。
物理的処理の役割は、大きなごみや取り除きやすい有機物を先に取り除いてあとの処理をスムーズにすることです。
化学的処理
化学的処理は、薬剤を使って水中の有機物を分解したり取り除いたりする方法です。代表的なものに凝集沈殿法や酸化還元法があります。
凝集沈殿法では、細かい汚れを薬剤で固めて沈みやすくしてから取り除きます。酸化還元法は、薬剤で有機物を酸化して分解したり還元して無害にしたりする方法です。
生物学的処理
生物学的処理は、微生物の働きを利用した環境にやさしい方法です。
微生物が有機物をえさとして分解するため、処理にかかる時間は微生物の数や元気さによって変わります。
具体的には空気を送って好気性微生物を元気にし、有機物を分解させる方法です。家庭の浄化槽も、この生物学的処理で汚水をきれいにしています。
BODと関連する水質指標|CODと全窒素・全リン

BODと合わせて知っておきたい指標を2つ紹介します。
- CODとBODの違い
- 全窒素・全リンなどBODに関連する指標
CODとBODの違い
BODと似た指標に「COD」があります。違いは、次のとおりです。
| 名称 | 測定内容 | 使用される場所 |
| BOD(Biochemical Oxygen Demand/生物化学的酸素要求量) | 水中の有機物(汚れ)を微生物が分解するときに消費する酸素量 | 河川 |
| COD(Chemical Oxygen Demand/化学的酸素要求量) | 水中の有機物(汚れ)を化学薬品で酸化するときに消費する酸素量 | 湖沼・海域 |
CODは、水中の有機物を化学薬品で酸化するときに使われる酸素の量を表す指標です。
BODもCODと同じく、水中の有機物が分解されるときに使われる酸素の量を表します。違いは測定方法で、BODは微生物・CODは化学薬品を使って測ります。
水をきれいにする基本は、有機物を分解することです。微生物を使う場合は「分解」で化学薬品を使う場合は「酸化」と表現しますが、仕組みは同じです。
日本では川の水質指標にBODが使われ、湖や沼・海にはCODが使われます。
全窒素・全リンなどBODに関連する指標
BODやCODのほかに、全窒素と全リンも排水基準に定められています。水中にいろいろな形で含まれる窒素やリンをすべて合計したものが、全窒素・全リンです。
窒素とリンは植物や藻の栄養になりますが、増えすぎると富栄養化が起こります。富栄養化とは、栄養が多すぎてアオコなどが大量に発生する状態のことです。
窒素は微生物に分解されやすく、水中から抜けやすい性質があります。
一方でリンは水中に残りやすいため、とくに注意して管理する必要があります。
まとめ|生活排水に気をつけてBODを下げよう

BODは水の汚れ具合を表す指標で、数値が高いほど水が汚れています。川ではBODが使われ、湖や沼・海ではCODが主に使われます。
BODが上がる主な原因は生活排水です。
食べ物のかすや洗剤など有機物を多く含む排水がそのまま流れ込むと、水中の酸素が足りなくなり魚が死んだり悪臭が出たりします。
下水道や浄化槽を通しても、有機物をすべて取り除けるとは限りません。処理しきれなかった分は川や海に流れ込みます。
油や食べ物のかすを流さないといった小さな工夫の積み重ねが、きれいな水を守ることにつながります。