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浄化槽と下水道は、どちらも生活排水を浄化処理するためのシステムです。設置費用や維持費、メンテナンスに違いがあります。
この記事では、浄化槽と下水道の仕組みや特徴、メリット・デメリットについて解説します。両者の違いを比較しながら、どちらが適しているかを説明します。参考にしてください。
浄化槽と下水道の仕組みと違い
浄化槽と下水道の仕組みと違いは、以下のとおりです。
- 浄化槽の仕組みと特徴
- 下水道の仕組みと特徴
- 浄化槽と下水道の違い
浄化槽の仕組みと特徴
浄化槽は、下水道が整備されていない地域で使われる汚水処理設備です。微生物の働きを利用して排水を浄化し、処理水を側溝や河川へ放流します。家庭用の場合、サイズは乗用車ほどで、敷地内に設置されます。
かつてはトイレの汚水だけを処理する単独処理浄化槽が主流でした。現在は、トイレの汚水と生活雑排水(洗濯や風呂など)を処理する合併処理浄化槽が普及しています。
個人所有の設備のため、維持管理は所有者自身が行う必要があります。
下水道の仕組みと特徴
下水道は、地域全体の家庭から汚水を集め、下水道管を通して汚水処理施設で一括して浄化するシステムです。整備は自治体の計画にもとづいて行います。
公共インフラであるため、維持管理は自治体が担当します。利用者は下水道使用料を支払うのみで、追加費用やメンテナンスの手間はかかりません。
浄化槽と下水道の違い
浄化槽と下水道はどちらも生活排水を浄化するシステムですが、規模に違いがあります。浄化槽は各家庭の敷地内で汚水を処理し放流する個別型の設備です。
下水道は地域全体の汚水を終末処理施設で集中して処理する集中型のシステムです。浄化槽は個人所有のため、維持管理は設置者が行う必要があります。
下水道は自治体が所有・管理しており、下水道管や処理施設の維持は自治体が担当します。
浄化槽と下水道のコスト比較
浄化槽と下水道のコスト比較は以下のとおりです。
- 初期設置コスト
- 維持管理コスト
- トータルコスト
初期設置コスト
浄化槽は自宅の敷地内に設置するため、購入と設置に費用がかかります。大きさにより異なりますが、5人槽の場合、設置費用の目安は100〜150万円です。
地域によっては補助金を利用できるため、かなりの額が減額されます。補助金の条件や金額は自治体によって異なるため、事前に確認しましょう。
下水道の設置自体に費用はかかりませんが、接続する際には下水道受益者負担金と接続工事費が必要です。下水道受益者負担金は、下水道建設費の一部を土地所有者が負担します。
土地の面積に応じて1㎡あたり300〜500円が一般的です。接続工事費は、家庭からの排水を公共の下水道管に流すための工事費で、30〜80万円が目安です。
維持管理コスト
浄化槽の管理者(所有者)は、法律にもとづき保守点検、法定検査、清掃を行う義務があります。維持管理にかかる費用に加え、ブロワーやポンプを稼働させるための電気代も必要です。
年間の維持費は浄化槽の大きさや機種によって異なりますが、5人槽の場合は年間で5〜10万円が目安です。浄化槽が故障した際は、修理費用が発生します。
下水道使用者は、自治体から請求される下水道使用料のみが必要で、他の費用はかかりません。下水道使用料は水道の使用量に応じて費用がかかります。
トータルコスト
浄化槽と下水道のトータルコストは、家庭の状況により異なるため、一概に比較するのは難しいです。どちらも環境保護に欠かせない設備であり、維持費がかかるのは避けられません。
浄化槽は設置費用が高いと感じるかもしれませんが、市町村の補助制度を活用すれば、費用負担を大幅に軽減できます。
設置や維持の際には、自治体の補助金制度を確認することが大切です。以下の表を参考にしてください。
浄化槽(5人槽) | 下水道(土地面積100㎡) | |
初期コスト | 設置工事費 100〜150万円 | 下水道受益者負担金:3万円〜 接続工事費:30〜80万 |
維持管理コスト | 保守点検 15,000〜30,000円 | 下水道使用料(2か月に1回請求) 1人世帯(13.3㎥):2,618円 4人世帯(53㎥):8,349円 ※新潟市の下水道使用料をもとに計算 |
法定検査 5,000円 | ||
清掃 20,000〜50,000円 | ||
電気代 10,000〜30,000円 | ||
年間合計 50,000〜115,000円 | 年間合計 下水道使用料 1人世帯(79.8㎥):15,708円 4人世帯(318㎥):50,094円 |
浄化槽と下水道の機能性の違い
浄化槽と下水道の機能性の違いは以下のとおりです。
- 処理能力と環境への影響
- 点検・メンテナンスの手間
- 緊急時・災害時の対応力
処理能力と環境への影響
浄化槽は、水の汚れを示すBOD(生物化学的酸素要求量)を90%以上除去する性能を持っています。窒素やリンも除去できる高度処理型の浄化槽もありますが、価格が高いため、家庭槽ではあまり普及が進んでいません。
下水道はBOD除去率が90%以上で、施設によっては99%以上の処理も可能です。窒素やリンの除去も行われ、地域全体の汚水を集中して処理できるため、下水道には高度な処理技術が導入されています。
浄化処理能力においては下水道が優れています。
点検・メンテナンスの手間
浄化槽は個人の敷地内に設置されているため、維持管理を所有者が行わなければなりません。法律にもとづき、浄化槽の管理者は保守点検や法定検査、清掃を定期的に実施する義務があります。
下水道は敷地外の設備が自治体によって管理されるため、個人でメンテナンスを行う必要はありません。浄化槽が故障した場合、修理費用は個人の負担ですが、下水道に関しては修理費用は自治体が負担します。
緊急時・災害時の対応力
浄化槽は下水道に比べ、災害に強い特徴があります。浄化槽は個人の敷地内に設置され、災害が発生しても被害が比較的少なく、早期の復旧が可能です。
下水道は地域全体にわたって広範囲に配管が設置されているため、地震などの災害では広域に被害を受けます。破損箇所が多くなると、復旧作業が長期化しやすい点が下水道の弱点です。
浄化槽のメリット・デメリット
浄化槽のメリット・デメリットは以下のとおりです。
- 浄化槽のメリット
- 浄化槽のデメリット
浄化槽のメリット
浄化槽は、下水道が整備されていない地方や山間部など、どこにでも設置できる設備です。維持管理費は年間で一定額のため、水道を多く使用しても、増加することはありません。
浄化槽は各家庭に独立して設置されているため、地震などの災害時も被害は限定的です。万が一破損した場合でも、修理により早期復旧が可能です。
浄化槽のデメリット
浄化槽は少人数の家庭では、下水道に比べて初期費用や維持費の負担が大きくなります。メンテナンスは個人で行う必要があり、手間もかかります。
停電時にはブロワーが停止し、浄化槽の処理機能が低下するため、注意が必要です。
下水道のメリット・デメリット
下水道のメリット・デメリットは以下のとおりです。
- 下水道のメリット
- 下水道のデメリット
下水道のメリット
下水道のメリットは、公共インフラとして整備されているため、個別にメンテナンスする必要がない点です。高度な処理が可能で、環境に優しい点も挙げられます。
使用料を支払うだけで維持管理に追加の費用や手間が発生しません。水道の使用量が少ない家庭では、費用負担が軽減できます。
下水道のデメリット
下水道は都市部に整備されているため、地方や山間部では利用できません。
水道の使用量が多い家庭では、下水道料金の負担が大きくなります。
広範囲に配管が設置されているため、地震などの災害が発生すると、多くの場所で同時に被害が生じてしまいます。修理に時間がかかり、復旧までの期間が長引くことはデメリットです。
浄化槽から下水道への切り替え方法と費用
浄化槽から下水道への切り替え方法と費用は、以下のとおりです。
- 切り替え方法
- 切り替え時にかかる費用
- 補助金の活用
切り替え方法
浄化槽を設置している場合でも、下水道が利用可能になると、下水道へ接続する必要があります。下水道への切り替え手順は以下のとおりです。
- 自宅に市町村から供用開始の通知が届く
- 下水道受益者確認の書類が市町村から送付される
- 内容を確認し、必要に応じて提出する
- 下水道受益者負担金の納付方法は一括払いか分割払いから選択する
- 市町村指定の工事業者に見積もりを依頼する
- 工事内容を確認し、契約する
- 工事期間は3〜10日、トイレが使用できないのは約1日
- 市町村が工事の適正を検査する
- 公共下水道使用開始届を提出する
- 下水道の使用開始
切り替え時にかかる費用
下水道が供用開始(下水道へ接続できる状態)されると、敷地の広さに応じた下水道受益者負担金を市町村に支払います。下水道に接続していなくても、負担金の支払いが必要です。
浄化槽から下水道に切り替える際は、自宅の敷地から下水道管へ配管をつなぐ接続工事が必要です。費用は下水道管の位置や敷地の広さによって異なりますが、目安は30〜50万円です。
浄化槽を撤去する場合は、汲み取りや撤去にかかる費用が別途発生します。
補助金の活用
下水道への接続工事費は自己負担ですが、市町村によっては補助制度や無利子の貸付制度があります。
補助金は供用開始から3年以内に申請が必要な場合が多いため、早めの確認が重要です。
市町村ごとに制度の内容や申請方法が異なるため、事前に詳細を調べておきましょう。
まとめ
下水道と浄化槽のどちらが良いかは、家族の人数や水道の使用量などにより異なるため、一概に決められません。それぞれのメリットとデメリットを理解することが大切です。
浄化槽は個人の敷地内に設置でき、人口の少ない地域や山間部などでも導入可能です。メンテナンスを個人で行う必要があり、手間がかかる点がデメリットです。
下水道は公共のインフラで、個人のメンテナンス負担がない点が大きなメリットです。家族が少ない場合や、メンテナンスの手間を省きたい方に向いています。
浄化槽と下水道の選択が可能な場合、それぞれの特徴を理解し、家庭に適したものを選びましょう。