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浄化槽にはコスト削減や環境保護、災害への強さといったメリットがあります。
しかし、定期的な保守点検や清掃、法定検査が必要で、悪臭や虫の発生といったデメリットも存在します。浄化槽の維持管理は所有者の義務です。
この記事では、浄化槽のメリット・デメリット、下水道との違いを解説します。浄化槽について知りたい方の参考になれば幸いです。
浄化槽のメリット
浄化槽のメリットは以下を参考にしてください。
- 下水道よりもお得
- 災害に強く原因の特定が早い
- 環境保全へ貢献できる
下水道よりもお得
家族が多く水道を使用する家庭では、下水道使用料が高額になります。下水道の使用料は基本料金と従量料金で構成され、水道使用量が増えると料金も増加します。
浄化槽を使用する場合、下水使用料がかからないため、水道使用量が多い家庭では下水道よりも浄化槽の方が経済的です。
災害に強く原因の特定が早い
浄化槽は耐震性が高く、過去の震災でも破損率が低いです。各家庭で独立した設備であることや、配管が短いことから、破損のリスクも低く、応急処置後に早期の再稼働が可能です。
故障時には異臭や排水不良、異音、水漏れなどの明確なサインが現れるため、原因を早期に特定できる点も浄化槽のメリットです。
水害や大きな地震の後に浄化槽の使用を迷う場合は、環境省や自治体が発行しているチェックシートを参考に判断しましょう。
環境保全へ貢献できる
浄化槽の使用は環境保全にも貢献します。ビール1杯(200ml)をそのまま川に流すと、水質を元に戻すために300リットルもの水が必要です。浄化槽は生活排水中の汚濁物質(BOD)を90%浄化し、河川に放流します。
川や海の環境に優しく、環境への負荷を大幅に軽減します。浄化槽はより良い環境保全のために重要な役割を果たしています。
浄化槽のデメリットは維持管理が必要なこと
浄化槽のデメリットは以下のとおりです。
- 保守点検・清掃・法定検査のメンテナンスが必要
- 初期設置費用やランニングコストがかかる
- 悪臭や虫の発生リスクがある
- 故障時の修理コストがかかる
- マンホールが景観へ影響を及ぼす
保守点検・清掃・法定検査のメンテナンスが必要
メンテナンスは大きく分けて保守点検、清掃、法定検査の3つに分類されます。
- 保守点検
- 4か月に1回以上の保守点検が必要です。点検では、浄化槽が正常に機能しているか確認し、ポンプやブロワーの修理・交換、消毒剤の補充を行います。異常や故障を早期に発見するためにも、保守点検は重要です。
- 浄化槽清掃
- 槽内に溜まるスラッジ(沈殿物)やスカム(浮上物質)が一定量を超えると、浄化槽の機能が低下します。年に1回以上の清掃が必要です。
- 法定検査
- 保守点検とは別に、法定検査も必要です。使用開始後3〜8か月の間に行う水質検査と、毎年1回の定期検査があります。
初期設置費用やランニングコストがかかる
初期設置費用やランニングコストは以下の表を参考にしてください。
初期費用・ランニングコスト | 詳細 |
浄化槽本体の費用 | 5人槽の場合、約80万円。容量やメーカーにより変動する |
設置工事費用 | 地面の掘削、配管工事、浄化槽の設置費用として10~100万円 |
付帯設備費用 | ポンプ、ブロワー、電気設備、制御盤の設置で1~10万円程度 |
設計・申請費用 | 設計図作成や行政への申請費用として数万円~数10万円 |
初期設置費用(5人槽の場合) | 一般的な戸建て住宅で100~200万円程度 |
電気代 | ブロワーの24時間稼働により、年間約1~2万円 |
保守点検 | 法律で年に3回以上の点検が義務付けられている。年間で約1万2千~2万円 |
清掃 | 年1回以上の清掃が義務付けられている。1回あたり約2~5万円 |
法定検査 | 設置翌年から毎年1回行われ、費用は約5千円 |
放流ポンプやブロワーの交換、浄化槽本体の修理には費用がかかります。修理費用は業者によって異なるため、複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
部品交換や浄化槽の寿命を延ばすため、定期的なメンテナンスや点検も欠かせません。
自治体によっては、保守点検や清掃、法定検査に対して補助金が提供される場合があります。地域の役所や自治体の情報を確認し、申請方法や基準を調べておきましょう。
故障時の修理コストがかかる
故障の頻度や修理コストは状況によって異なりますが、故障が発生すると機能不全に陥り、さまざまなリスクが生じます。定期点検を行い、修理コストの目安を把握しておくことが大切です。
以下の表を参考にしてください。
消耗品 | 費用 |
ブロワー修理 | 約1~5万円 |
ブロワー交換 | 約2~10万円 |
排水ポンプ交換 | 約8~20万円 |
漏水修理 | 約10~30万円 |
浄化槽本体の修理 | 約30~50万円 |
マンホールが景観へ影響を及ぼす
マンホールは臭気の漏れや落下事故を防ぐために重要です。浄化槽の設置場所は、建物に近い方が望ましいですが、外観を気にする場合は設置場所に配慮する必要があります。
メーカーによる色やサイズの違いを確認し、外観に配慮した配置を検討しましょう。
浄化槽と下水道の違い
浄化槽と下水道の違いは以下のとおりです。
- 利用状況は下水道が多い
- コストは浄化槽が安い
- 浄化槽はメンテナンスが必要、下水道は不要
- 環境への影響はどちらも小さい
利用状況は下水道が多い
全体の利用状況を見ると、下水道の利用が全体の約8割を占めており、浄化槽よりも圧倒的に多いです。人口の多い都市部では、下水道の普及率が高いです。
都市部では下水道が多くの利用者の排水を一括で集められるため、管理コストが抑えられるというメリットがあります。
浄化槽は下水道が整備されていない地域で重要な設備です。浄化槽と下水道は、それぞれに適した利用環境があります。
コストは浄化槽が安い
水道料金の観点から考えると、使用量に応じた料金が発生する下水道に比べ、浄化槽の方が月々の支払いは安くなる傾向があります。
水道水を多く使用する家庭では、浄化槽の方がコストを抑えられます。
浄化槽はメンテナンスが必要、下水道は不要
浄化槽と下水道の主な違いは、メンテナンス費用の負担です。浄化槽は個人所有のため、維持費は所有者が負担します。下水道は国土交通省の管轄で、所有権は地方公共団体にあります。
下水道の使用者がメンテナンス費用を負担することはありません。
環境への影響はどちらも小さい
浄化槽と下水道は、適切に使用することで環境への影響を最小限に抑えられます。下水道は運営にエネルギーを消費しますが、人口密度が高い地域では効率的に排水処理が可能です。
大量の排水を処理する場合、下水道の方が浄化槽よりも効率的で環境への影響も少なくなります。
家と家が離れている地方では、排水量も少なく、浄化槽の方が効率的です。都市部では下水道を、地方では浄化槽を選択することで、環境への影響を小さくできます。
浄化槽の維持管理のコツ
浄化槽の維持管理のコツは以下を参考にしてください。
- 浄化槽を正しく使用する
- 定期的な維持管理を実施する
浄化槽を正しく使用する
浄化槽を適切に使用するためには、以下の点に注意が必要です。
1人あたり1日の水使用量は約200ℓで、5人槽の浄化槽では1日約1,000ℓが処理能力の目安です。水の使用が多い場合や生活人数が一時的に増える場合は、水の使用量に注意しましょう。
油脂や洗剤の使いすぎは浄化槽の機能を低下させます。油脂は配管を詰まらせる原因になるため、食器やフライパンの油汚れは拭き取り処分しましょう。
洗剤は槽内の微生物に悪影響を与えるため、必ず適量を守り、注意して使用しましょう。
定期的な維持管理を実施する
浄化槽の維持管理には、専門知識や技術、経験、法的対応が必要で、専門業者に依頼することが重要です。専門業者は定期的なメンテナンスを通じて、浄化槽を最適な状態に保ちます。
保守点検や清掃、法定検査を行うことで、浄化槽の性能を最大限に引き出し環境への影響を最小限に抑えます。
浄化槽から下水道へ切り替えた場合
浄化槽から下水道へ切り替えた際の変化は以下を参考にしてください。
- ブロワーやポンプの電気代がかからない
- 浄化槽のメンテナンス代が不要になる
- 悪臭の発生が少なくなる
ブロワーやポンプの電気代がかからない
浄化槽のブロワーは24時間稼働して酸素を供給しています。下水道に切り替えるとブロワーやポンプの使用が不要になり、電気代もかかりません。
浄化槽のメンテナンス代が不要になる
浄化槽の所有者にはメンテナンス義務がありますが、下水道の所有権は地方公共団体が持っています。下水道使用者にはメンテナンスの義務がなく、メンテナンス代も不要です。
悪臭の発生が少なくなる
下水道は地方公共団体が維持管理しているため、故障やメンテナンス不足による悪臭が発生しにくいです。
一方、浄化槽では部品の故障やメンテナンス不足により微生物の働きが低下し、清掃不足などが原因で悪臭が発生します。
浄化槽から下水道への切り替え方法と費用
浄化槽から下水道への切り替え方法と費用は以下のとおりです。
- 切り替えの工事内容
- 切り替えに伴う費用
切り替えの工事内容
下水道切り替え工事には、個人が管理する部分と市役所が管理する部分があります。個人が管理する部分については、各自で業者を選ぶ必要があります。
- 本管工事
- 家の前の道路に下水管を設置する工事です。本管は家庭からの排水を下水処理施設へ送るための管です。
- 公共桝設置
- 本管工事が完了した後に設置されます。公共桝は、家庭からの排水が集まり、本管へ接続される部分です。
- 宅内工事
- 本管工事や公共桝設置は市が行いますが、宅内工事は個人の責任で行います。本管工事完了後、家庭の排水口から公共桝までの間に排水管を設置し、接続します。
切り替えに伴う費用
切り替えに伴う費用は以下の表を参考にしてください。
項目 | 費用詳細 |
配管工事費用 | 建物から公共桝までの配管や、浄化槽から下水道への切り替え工事にかかる費用。敷地の状況や距離によって異なり、30~50万円程度。 |
追加費用の発生条件 | 家の近くに下水道管がない場合や、幹線道路沿いの住宅では費用が高くなる。配管距離が長い場合やアスファルトの掘削が必要な場合、50~100万円以上かかることも。 |
浄化槽撤去費用 | 浄化槽から下水道への切り替えに伴う浄化槽の撤去費用は約5~10万円。 |
下水道使用の申請時に手数料がかかる場合もあり、手数料は自治体によって異なります。自治体によっては下水道切り替えに対する補助金が提供されます。
地域の役所や自治体の情報を確認し、申請方法や基準を調べましょう。
まとめ
浄化槽のデメリットとして、保守点検や清掃、法定検査が必要であり、ランニングコストがかかる点が挙げられます。
下水処理場や浄化槽で処理や維持管理を行っている方がいるため、インフラとしての必要経費と考えれば納得できます。
地域によっては浄化槽の設置に補助金が提供されるので、役所や自治体の情報を忘れずに確認しましょう。
定期的な清掃やメンテナンスを怠ると、悪臭や虫の発生、故障による修理費用が増えます。専門業者に依頼してメンテナンスが重要です。
浄化槽のメリットとデメリットを理解し、適切な維持管理が大切です。