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水質汚染は健康や生態系に深刻な影響を及ぼします。私たちの日常生活や産業活動が川や海の水質悪化を招き、問題を深刻化させています。
本記事では、水質汚染の原因や影響について解説します。主な原因は、産業排水や生活排水、農業由来の汚染です。
地球温暖化や歴史的背景が問題を複雑化させています。本記事では、日本や世界の取り組みを紹介し、個人が取り組める対策を提案します。
水質汚染を防ぐには、一人ひとりの行動が重要です。未来を守るため、今からできることを始めましょう。
水質汚染の4大原因と影響

水質汚染の原因と影響は以下のとおりです。
- 産業排水による汚染
- 生活排水による汚染
- 農業による汚染
- 地球温暖化が引き起こす水質汚染
産業排水による汚染
産業排水は、工場や事業所から出る排水のことです。
日本では、第二次世界大戦後の高度成長期に水質汚染の原因になりました。
産業排水には、製造過程で使用する材料や薬品、重金属や化学物質などの有害物質が含まれます。
適切に処理せずに排出すると、水質汚染を引き起こします。1956年に報告された水俣病は、工場排水に含まれていた水銀が原因です。
工場から放流された水銀が海中の生物に蓄積し、汚染された水産物を人々が食べたことで健康被害が発生しました。
生活排水による汚染

生活排水とは、日常生活で使われ汚れた水のことです。台所や洗濯、お風呂や洗面所などから出る排水には、食べ残しや洗剤が含まれています。
生活排水に含まれる栄養分は水中の栄養過多を招き、アオコや赤潮を引き起こします。
アオコや赤潮は、プランクトンの異常発生によって発生します。水中の酸素が不足し、水中生物が大量死する原因です。
農業による汚染
農業による汚染は、主に農薬や肥料が原因です。
農薬は雨水で地中に浸透し、川へ流入します。水生生物への影響や、地下水汚染を通じた健康被害が懸念されます。
肥料に含まれる栄養分が川や海に流れると、栄養過多を招きアオコや赤潮の原因になります。
畜産排水も水質汚染の一因です。家畜の糞尿には病原菌や寄生虫が含まれています。適切に処理されていない場合、水質汚染を引き起こします。
地球温暖化が引き起こす水質汚染
地球温暖化による環境変化や気候変動も水質汚染の原因です。近年、集中豪雨や洪水などの異常気象が頻発しています。発生している問題は以下のとおりです。
- 土砂やごみが海や川へ流入し水質が悪化する
- 未処理の生活排水が海や川へ流入し水質汚染を引き起こす
気候変動による水温上昇は、水中の酸素濃度を低下させます。酸素不足は夏に発生しやすく、魚の大量死などを引き起こします。
水質汚染の現状と影響

水質汚染の現状と影響は以下のとおりです。
- 水質汚染の歴史的背景
- 日本や世界の水質汚染の現状
- 水質汚染が人へ与える影響
- 水質汚染が生物へ与える影響
水質汚染の歴史的背景
水質汚染とは、河川や湖、海や地下水などに有害物質が流入・蓄積し、生態系や人々の生活に悪影響を与える状態を指します。
18世紀後半の産業革命では、大量生産が始まり、工場排水に含まれる化学物質が水域を汚染しました。
当時は生産性が優先され、環境への配慮はほとんど行われていません。
日本では戦後の高度成長期に水質汚染が深刻化しました。
開発途上国で経済発展を優先するあまり、環境保護が後回しになり、水質汚染が拡大しています。
日本や世界の水質汚染の現状
日本では、水質汚濁防止法による産業排水の規制や、下水道・浄化槽の整備により、高度経済成長期と比べ水質が改善しています。
一部の川や湖沼では、現在も水質汚染が問題です。
世界では安全な飲み水を得られない人が22億人いると報告されています。
特に開発途上国では、不衛生な飲み水が原因の下痢性疾患により、多くの乳幼児が命を落としています。
水質汚染は日本だけでなく、世界的にも深刻な問題です。
人々の健康に迫る水質汚染のリスク

水質汚染は健康被害をもたらします。
汚染された水を飲むと下痢などの直接的な健康被害が発生し、水生生物に蓄積した有害物質を摂取することで間接的な被害も生じます。
日本では上水道の普及により飲み水は安全です。過去には水銀による水俣病やカドミウムによるイタイイタイ病といった公害が発生しました。
汚染された水は農業用水や工業用水として使用できず、生産に支障をきたします。汚染された水域を回復するには多大な労力や時間、費用が必要です。
海の汚染は漁獲量の減少や風評被害を招き、漁業関係者の収入が減少します。
水質汚染は環境だけでなく、社会全体に影響を及ぼす問題です。
水質汚染が生物へ与える影響
水質汚染は生態系にも悪影響を及ぼします。生活排水に含まれる栄養分が水中で栄養過多を引き起こし、アオコや赤潮が発生。
水中の酸素が消費され、生物が大量死する原因になります。
農薬や産業排水に含まれる化学物質は、生物を死滅させますが、食物連鎖を通じて生態系全体に悪影響を及ぼします。
水質汚染の改善に向けた取り組み事例

水質汚染の改善に向けた取り組み事例について、以下で解説します。
- 日本の取り組み
- 世界の取り組み
- SDGs達成に向けた対策
- 企業や地域の具体的な取り組み事例
日本の取り組み
日本では、1970年に制定された水質汚濁防止法により、水質汚染の改善が本格的に進められました。
法律により工場からの排水が厳しく規制され、産業排水による水質汚染は大幅に改善されました。
水質汚濁防止法だけでは不十分なため、以下の法律も制定されています。
- 海洋汚染防止法:海の水質汚染防止を目的とする
- 湖沼水質保全法:湖や沼の水質汚染防止を目的とする
下水道の整備や浄化槽の設置を進めることで、生活排水による水質汚染防止にも取り組んでいます。
世界の取り組み
世界では、開発途上国で水質汚染が深刻化しています。トイレや給排水設備などの衛生設備の普及が大きな課題です。
国連機関や国際協力機構(JICA)などの国際機関は、開発途上国での安全な水や衛生設備の普及を支援しています。
SDGs達成に向けた対策
SDGs(持続可能な開発目標)と水質汚染は密接に関係しています。
SDGsは、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でより良い社会を目指す17の国際目標です。
SDGsでは、水質汚染について以下の目標を掲げています。
- 目標6:安全な水とトイレを世界中に
- 水質汚染を防ぎ、安全な飲料水と衛生設備を普及することを目指します。開発途上国では、安全な水の確保が命を守る重要な課題です。
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 海洋プラスチックや生活排水、農業排水による赤潮や栄養過多を防ぎ、生態系の保護を進めます。沿岸部の水質保全も重要な取り組みの一つです。
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 水質汚染対策を通じて健康被害を減らし、病気を予防する取り組みを推進します。
- 目標12:つくる責任・つかう責任
- 工場排水や産業活動による汚染を減らし、持続可能な生産と消費の実現を目指します。
企業や地域の具体的な取り組み事例
企業や地域による水質保全の取り組みも活発に行われています。
調味料メーカーのキッコーマンは、工場排水の浄化で発生した活性汚泥を再利用し、肥料を使った植物を地域に寄贈しています。地域団体と協力して清掃活動も実施しています。
滋賀県では、琵琶湖の水質改善を目指した環境保全活動が盛んです。
県は7月1日を「琵琶湖の日」、5月30日と12月1日を「環境美化の日」と定め、多くの団体が清掃活動を実施しています。
令和5年度の「琵琶湖の日」では、滋賀県全域で延べ88,737人が参加し、472トンのごみを回収しました。
水質汚染の改善に私たちができること

水質汚染の改善に私たちができることについて解説します。
- 日常生活でできること
- 環境保全活動への参加
日常生活でできること
現在の水質汚染の原因である生活排水は、私たちが日常生活で使用した水です。
日常生活での工夫が、水質改善につながります。以下のポイントを意識しましょう。
- 節水を心がける
- お風呂の残り湯を洗濯に活用する
- 食器は汚れを拭き取ってから洗う
- 有害物質や油を流さない
- 食用油は新聞紙に吸わせて処分
- 薬品類は適切に処分する
- 環境にやさしい洗剤を使う
- 生分解性の高い製品を選ぶ
- 洗剤は適量を守って使用する
排水に有害物質を含ませないこと、そして排水量を減らすことが水質改善につながります。
環境保全活動への参加
環境意識を高めるためには、環境保全活動や環境教育への参加も重要です。
学校や地域住民が主体となって開催する清掃活動に参加することで、水質汚染への理解を深められます。
自治体が主催する環境問題に関するイベントやセミナーに参加するのも効果的です。
毎年6月は環境省の呼びかけで「環境月間」とされ、全国各地で多様なイベントが開催されます。興味のあるイベントに参加し、環境について考えるきっかけにしてみましょう。
まとめ

水質汚染の改善は、未来や次世代の暮らしを守るために欠かせません。
主な原因である生活排水は、日常生活の小さな工夫で改善できます。日々の行動を見直し、身近な取り組みから始めましょう。