浄化槽って何?仕組み・種類・メンテナンス方法解説!【生活排水の基礎知識】

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浄化槽って何?仕組み・種類・メンテナンス方法解説!【生活排水の基礎知識】

「浄化槽とは何か」「どのような仕組みで動いているのか」と疑問に感じたことはありませんか?

浄化槽は、家庭から出る生活排水をきれいに処理し、環境への負荷を抑えて放流する設備です。正しく使い、定期的に管理することで、快適な暮らしと自然環境の保全を両立できます。

この記事では、浄化槽の仕組み種類、維持管理の方法について解説します。記事を読めば、浄化槽の正しい知識や環境への負担を減らす方法がわかります。

浄化槽とは?汚水を浄化処理する設備

浄化槽の目的や役割、歴史を以下で解説します。

  • 浄化槽の目的と役割
  • 浄化槽の歴史と普及状況

浄化槽の目的と役割

浄化槽は家庭や施設の汚水を浄化し、環境汚染を防ぐ設備です。下水道未整備地域で特に重要な役割を果たします。

槽内の微生物が有機物を分解し、処理した水を安全に河川へ放流します。

浄化槽の維持管理は法律で義務付けられており、定期的なメンテナンスが必要です。

» 維持管理について

浄化槽の歴史と普及状況

1960年代、水洗便所の普及に伴い、トイレ排水を処理する単独処理浄化槽が広まりました

1985年に「浄化槽法」が施行され、設置や運用に関する基準が法的に定められました。地方や離島では、今も浄化槽が重要な排水処理手段として活用されています。

法改正や補助金制度により普及が進みましたが、都市部では下水道の整備が進んだことで、浄化槽の需要は減少傾向にあります。

SDGsなど環境保全が重視される現代では、浄化槽は生活環境を守るために欠かせません。

» 浄化槽の仕組み

浄化槽の仕組み

浄化槽は複数の槽で構成されており、それぞれの槽が異なる浄化機能を担っています。微生物の働きによって、生活排水に含まれる汚れを段階的に分解・処理します。

以下で、浄化槽の構造と汚水処理の流れについて解説します。

  • 浄化槽の基本構造
  • 汚水処理の流れ
  • 浄化処理の仕組み

浄化槽の基本構造

浄化槽は汚水をきれいな水にするため、次の4つの処理工程で構成されています。

  • 1槽:固形物と液体に分離する
  • 2槽:微生物により有機物を分解する
  • 沈殿槽:再度浮遊物を分離する
  • 消毒槽:塩素消毒により滅菌後放流

浄化槽にはブロワーが設置されており、微生物の活動に必要な酸素を供給しています。微生物の働きは、汚水の浄化処理において欠かせない要素です。

点検やメンテナンスを行いやすくするため、マンホールや点検口が設けられています。

» ブロワーの仕組み

汚水処理の流れ

家庭や施設から排出された汚水は、浄化槽で段階的に処理されます。処理された水は、水質基準を満たしたうえで河川などに放流されます。

汚水処理の流れは、以下のとおりです。

  1. 夾雑物除去:大きなゴミと油脂を除去
  2. 固形物の沈殿:汚水中の固形物を重力で沈める
  3. 生物処理:微生物で有機物を分解
  4. 固形物の除去:微生物処理後の残留固形物を取り除く
  5. 塩素による滅菌:大腸菌などの病原体を除去
  6. 放流:処理済みの水を側溝や河川に放流

有機物を分解する微生物には、酸素を必要とする好気性と、酸素を必要としない嫌気性の2種類があります。

処理された水は、河川や側溝に放流されます。

浄化作用の仕組み

浄化作用の仕組みは、以下のとおりです。

微生物による分解
浄化作用の中心は、微生物による有機物の分解です。槽内の微生物が汚濁物質を分解し、水質を改善します。
物理的処理
ろ過や沈殿といった物理的な処理も重要です。水中のごみや砂などの固形物を除去します。
化学的処理
紫外線やオゾンを用いた有害物質の分解、化学的・電気的な処理により、小さな物質や細菌を除去します。
生物学的処理
微生物だけでなく藻類や水生植物も窒素やリンを吸収し、浄化作用を発揮します。
空気の供給
瀬や落差による水の動きは、大気中の酸素を水中に溶解させ、微生物の活動を促進します。
吸着作用
担体や木炭などの多孔質材料は、表面に微生物が付着し、効果的な浄化作用を発揮します。
希釈効果
きれいな水が合流すると汚濁水が希釈され、水質が改善します。

浄化槽は自然の浄化作用を利用しています。人工的な浄化システムも河川の仕組みを模倣し、効果的に水質を浄化します。

浄化槽の種類

浄化槽にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。主な種類は以下の3つです。

浄化槽の種類特徴
合併処理浄化槽台所や洗面所、トイレなど生活排水全般を処理する
単独処理浄化槽トイレから排出される汚水のみを処理する
高度処理型浄化槽通常の浄化槽よりさらに高い水質に浄化する

合併処理浄化槽

合併処理浄化槽は、トイレ・お風呂・台所の排水をまとめて処理します。単独処理浄化槽に比べて構造が複雑で、処理能力が高いのが特徴です。

設置費用はやや高めですが、長期的には維持費が抑えられ、コストパフォーマンスに優れています。

法律で定期的なメンテナンスが義務付けられており、コンパクトな設計のため広い設置スペースは必要ありません。

» 合併処理浄化槽とは

単独処理浄化槽

単独処理浄化槽は、トイレの汚水のみを処理する設備です。一戸建て住宅や古いアパートで使われています。構造は、沈殿分離室と生物槽の2室から成ります。

トイレ以外の排水は処理できず、環境への負荷が大きいため、現在は新規設置が禁止され、形式認定も取り消されています。

環境保全の観点から、下水道や合併処理浄化槽への切り替えが推奨されており、補助金の活用も可能です。

» 浄化槽補助金について

高度処理型浄化槽

高度処理型浄化槽は、通常の浄化槽よりも高い浄化能力を持ちます。

微生物、薬品、膜フィルターを組み合わせて水を処理し、住宅地や観光地など幅広い場所で利用されています。

価格は高めですが、窒素やリンを除去できるため、湖や沼の水質改善にも効果があります。

維持管理には専門的なメンテナンスが必要です。

浄化槽の維持管理

浄化槽は家庭や施設の汚水を河川に戻す役割を担うため、定期的な清掃や点検が必要です。

種類や地域によって、法律で定められた点検回数は異なります。

維持管理を適切に行い、浄化槽を正しく運用しましょう。

  • 浄化槽の設置要件
  • 保守点検の重要性
  • トラブル発生時の対処法

浄化槽の設置要件

浄化槽を設置する際は、以下を参考にしてください。

  • 申請:建築基準法や浄化槽法にもとづく
  • 地域の規制:条例や規制が地域ごとに異なる
  • 浄化槽の選定:延べ床面積や排水量に応じて決定する
  • 設置場所の確認:面積と地盤の状況を事前に検討する
  • 排水設計:スムーズに流れるように設計する
  • 保守点検:浄化槽設置後に定期点検を実施する

浄化槽の設置は専門業者に依頼します。

環境保全地域では規制が厳しいため、地域の要件に合わせた対応が必要です。計画的な設置とメンテナンスで清潔な水質環境を維持しましょう。

» 浄化槽工事について

保守点検の重要性

保守点検は、浄化槽の機能維持とトラブル防止に欠かせません。定期的な点検で故障や性能低下を防ぎ、安定した汚水処理が可能です。

点検を怠ると、悪臭や詰まりのリスクが高まります。保守点検は、浄化槽の長期的な機能維持に不可欠です。

» 保守点検の詳細

トラブル発生時の対処法

トラブル発生時は迅速な対処が必要です。浄化槽でよく起こるトラブルと対処法を以下に紹介します。

トラブル事例対処法
異臭の発生通気口の詰まりや槽内の異常を確認し、専門業者に点検を依頼する
水漏れや逆流すぐに使用を停止し、専門業者に緊急修理を依頼する
アラーム発生原因を調査し、対策を講じるか専門業者に依頼する
泡が多量に発生
水位上昇
ブロワーや排水ポンプを点検し、必要に応じて修理を依頼する
浄化槽のトラブルと対処法

トラブルを防ぐには、定期的な保守点検が不可欠です。適切な維持管理を行うことで、故障や悪臭などのリスクを大幅に減らせます。

まとめ

浄化槽は、日常生活と環境保全に欠かせない設備です。汚水を物理的・生物学的・化学的に処理し、きれいな水として自然に戻します。

法令に基づくメンテナンスを行うことで、トラブルを防ぎ、長期間の安定運用が可能になります。浄化槽の仕組みを理解し、持続可能な生活と清潔な水環境を守りましょう。

» 浄化槽法について