
この記事では、浄化槽に与える「嘔吐、過食、油を含む排水の影響」と、適切な対処法について詳しく解説します。
具体的に、クボタHY型浄化槽を使用した実例をもとに、写真を交えて正常な状態との比較を行います。
実際の現場での影響や対応方法についての理解を深めることができます。
不適切な排水は、浄化槽の機能を低下させるだけでなく、環境への負担も増加させてしまいます。
この問題は、浄化槽を使用する多くの方々にとって、非常に重要な課題となっています。
油や嘔吐、過食によって起きる問題

対処方法を結論からいうと以下になります。
- 油の使用と排出量を最小限に
- 嘔吐時は専用バッグを活用
- 定期的な浄化槽清掃を徹底
- 調理後の油は新聞紙やキッチンペーパー、凝固剤で処理

槽内の様子はこちらの動画でも視聴できます↓
異常ありと正常な状態の違い
(正常な状態は2枚目の写真です)


水の流れの順番を理解しやすくするために、各部分に番号を割り当てました。
配管や計量マスが詰まる主な理由は、油や汚泥が固まることにあります。
油を多用する料理後は、食器の油を「キッチンペーパーや新聞紙」でよく拭き取り、洗剤で洗いましょう。
それぞれの写真を比較すると、汚れの度合いが明らかに異なることがわかります。
HY型浄化槽においては、「エアリフト配管」が詰まりやすい部分として知られています。
エアリフト配管が詰まると、浄化槽が満水状態になり、お風呂、トイレ、台所など、水周り全体に問題が生じます。
また、2番の左側に見える配管は、オーバーフローを防ぐための配管です。
オーバーフロー用配管は、マンホールから汚水が溢れることを防止する役割があります。
正常な浄化槽との違い!2槽目
(正常な状態は2枚目です)


3、4で行われる好気処理の過程では、微生物同士が相互に摂食し、体積を増す現象が起こります。
この増大した微生物たちは重さによって底部に沈降し、そこから汚泥返送管を通じて再び最初の槽へと返送されます。
モリモリ食べておっきくなるぞ!

色とニオイで識別する浄化槽の状態
処理された水は、5番目の沈殿槽に移行します。
沈殿槽では、液体と固形物が分離され、その後上澄み水は滅菌消毒されてから放流されます。


5番の沈殿槽を見てもらうとわかると思いますが、通常の状態と比較して水の色が大きく異なることが確認できます。
写真ではお伝えできませんが、ニオイもあります。
沈殿槽から、越流堰を経由して消毒剤により滅菌処理が施され、その後放流されます。

油、嘔吐、過食の処理が困難な理由

浄化槽なのになぜうまく処理できないの?
「嘔吐や油が処理できない理由」
浄化槽は、家庭で発生する汚水を微生物が分解し浄化するという仕組みです。
通常、「体内で一連の消化過程が完了した排泄物は、肛門から排出」され、浄化槽へ流れます。
この過程の場合、体内で処理されている分、浄化槽にかかる負荷は少なくなります。
しかし、嘔吐や過食が引き起こす「体内で処理される前に口から排出される」現象は、浄化槽にとって大きな負荷をもたらしてしまいます。
特に、「油や食べかすなどの不純物が含まれる嘔吐や過食」の場合、微生物の餌となり、微生物が増え過ぎてしまうです。
浄化槽の処理能力を上回ると、処理が追いつかなくなる危険性があります。
このようなトラブルを防ぐためには、嘔吐や過食を予防することが重要です。
エサが多くなる=微生物が増えすぎる=水質が悪くなります。
嘔吐、過食、油使用によるニオイの問題
飲食店の近くを通った際、下水から油のようなニオイを感じることがあります。
原因は、飲食店では大量の油を使用しているため、処理が追いつかずニオイが発生しているということです。
油が配管や槽内に蓄積されると、不快なニオイの原因となります。
ニオイが気になる場合、解決策として「シーディング剤」の使用を検討してみてください。
シーディング剤は微生物の活性化を促進し、これにより脱臭効果や水質改善効果が期待できます。
使用方法は非常に簡単で、トイレに直接シーディング剤を流すだけです。

まとめ

- 油は直接流さず、紙や固めるテンプルを使用して処理
- トイレでの嘔吐は避け、吐いた場合は水を流して詰まりを予防する
- 嘔吐物の水分は紙で吸収させ、可燃ごみとして処分する
- 浄化槽のニオイが気になる場合、浄化槽清掃を実施する
管理業者から「油の使用が多い」と指摘された場合、浄化槽が正常に動作していない可能性が高いです。
このような状況の最適な対応は「浄化槽清掃」です。
指摘を受けた際は、清掃を検討することをおすすめします。
清掃には費用がかかりますが、浄化槽の詰まりやニオイ、そして近隣や環境への影響を考慮すると、定期的な清掃は必須です。
具体的な清掃のタイミングや頻度については、管理業者と相談することが最善です。
浄化槽の問題を予防し、清潔で快適な生活環境を保つことができます。

オーバーフローとは溢れないようにする配管のこと。