
大型浄化槽のメンテナンスには、一般家庭の浄化槽とは異なる重要なポイントがいくつか存在します。
本記事では、その特徴的な違いを詳しく解説するとともに、大型浄化槽の正しい維持管理方法についてもご紹介します。
具体的な運用手順のほか、定期的な点検や清掃方法、設備の適切な操作方法についても触れていきます。
また、過去のトラブル事例や特に注意が必要なポイントについても紹介。
これにより、効率的な維持管理を手助けとなる情報を提供します。
大型浄化槽は501人槽~

皆さん、「日本最大の浄化槽」はご存知でしょうか?
それは、なんと関西国際空港に設置されている浄化槽です。
現在は38,500人分(人槽)で、最終的には77,000人分(人槽)にまで増設される予定となっています。
デカすぎる!!
今回取り上げる浄化槽は、501人槽以上の大型浄化槽で、その運用と管理には「浄化槽技術管理者」という資格が必要となります。
この資格は501人槽以上の浄化槽の管理を行う際に必須で、取得には「浄化槽管理士」の資格取得が必要です。
試験において、「501人槽以上の浄化槽の管理」に関する問題が頻繁に出題されるため、受験を予定している方はこの点を重点的に学習しておきましょう。
動画での解説はコチラ↓
フローシート(水の流れ)

- 原水ポンプ槽
- ↓
- ばっ気沈砂槽
- ↓
- スクリーン槽
- ↓
- 調整ポンプ槽
- ↓
- ばっ気槽
- ↓
- 沈殿槽
- ↓
- 消毒槽
- ↓
- 放流ポンプ槽
- ↓
- 汚泥濃縮槽
- ↓
- 貯留槽
ばっ気沈砂槽

汚水が最初に流れ込む「沈砂槽」は、砂やゴミを概ね除去するための装置です。
さまざまな物質が混入するため、定期的に清掃を行い、網を用いてゴミを取り除く作業が必要となります。
スクリーン槽

写真にある「ベルトコンベア型の機械」は「スクリーン」と称します。
スクリーンは回転することにより、分解不可能な大きなゴミを隣接するカゴへ集積します。このカゴ内のゴミは、点検の際に回収します。
大型浄化槽にはスクリーンが設置されていますが、故障がしばしば生じます。
主な原因は、「劣化した電線によるショートや機械の漏電」となります。
浄化槽内部は高湿度の環境で、これが機械の絶縁劣化を早め、故障を引き起こしやすい状況を生み出します。
原水ポンプ槽


原水ポンプ槽は、ばっ気沈砂槽から流入した汚水の流量を「浮き玉(フロート)」で調整し、次の段階へ移送する役割を担います。
汚水を浄化するためには一定の滞留時間が必要で、この原水ポンプ槽は汚水を一時的に貯留します。
浮き玉が上昇すると汚水は次の槽へと移送されます。
具体的には、最初の浮き玉が上昇した時点で待機状態となり、二番目の浮き玉が上昇するとポンプが起動します。
三番目の浮き玉が上昇すると二台のポンプが同時に稼働します。さらに、四番目の浮き玉が上昇すると、「満水状態で警報」が発動します。
浮き玉とポンプは共に重要な機能を果たしているため、定期的な点検が必要です。
原水ポンプは非常に重く、取り外す際にはウィンチが必要です。
また、その吸引力は次段階の調整ポンプに比べて非常に強力となっています。
原水ポンプはとても重い!
調整ポンプ槽

調整ポンプ槽は、原水ポンプ槽から流れ込む汚水の流量を調整するために設けられています。
この槽は、汚水を一時的に受け止め、浮き玉(フロート)が上昇するとそれを次の槽へ移送します。
調整ポンプの吸引力は比較的弱く、ゴミが詰まりやすい状況が生じます。
その結果、ポンプに過度の負荷がかかることがあり、負荷が大きすぎるとブレーカーがトリップして警報が発生します。
点検の際には、ポンプ周囲にゴミが詰まっていないかを確認し、もし詰まっている場合には網でそのゴミを取り除く必要があります。
過負荷、サーマルについての詳細はこちら
担体流動ばっ気槽

ばっ気槽は、「好気性微生物が活動するための槽」です。
汚れをいっぱい食べて分解(きれいに)するぞ
調整ポンプ槽からの汚水は次に計量マスに移送されます。
計量マスは、汚水の流量を調整するための槽で、適切な量の汚水がばっ気槽へと供給されるように制御しています。


沈殿槽

黒いネットの下には、たくさんの担体が配置されており、これによって処理済みの水が濾過されます。
その後、水は「越流堰」を越えて消毒槽へと移送されます。

消毒槽

沈殿槽で処理された水は、消毒剤を通過し滅菌されます。
その後、放流ポンプ槽へと移送されます。
放流ポンプ槽

滅菌処理を行った後の水が、外部に放流されるための槽が、放流ポンプ槽です。
原水ポンプ槽や調整ポンプ槽と同じく、「浮き玉(フロート)」が上昇するとポンプが作動します。
汚泥濃縮槽、貯留槽
汚泥を貯める場所として、「汚泥濃縮槽と貯留槽」があります。
以下は、汚泥濃縮槽の清掃前と清掃後の写真です。


浄化槽の底部に溜まった汚泥と、上層のスカムの間に存在する水を「中間水」と呼びます。
中間水を放置すると、汚泥の引き抜く量が増えてしまい、それに伴いコストも増大します。
そのため、中間水を調整槽に戻すことにより、引き抜く汚水量を削減できます。
中間水の返送が終了した後に、清掃を実施します。
汚泥濃縮槽で凝縮された汚泥は、自動タイマーの機能により貯留槽へと運ばれ、そこで保管されます。
次に、貯留槽の清掃前と清掃後の写真をお見せします。




管理士試験問題!
浄化槽技術管理者に関する次の記述のうち、間違っているものはどれ?
(1)処理対象人員が501人以上の浄化槽には、技術管理者を置かなければならない。
(2)技術管理者は浄化槽技術管理者が任命する。
(3)技術管理者の設置義務違反に対して、罰則の規定がある。
(4)技術管理者は、大きな規模の浄化槽の保守点検を、自ら行う者の資格である。
正解は4番で、技術管理者は、保守点検、清掃に関する技術上の業務を担当するもので、実施者と言うよりも、同業務を統括する者としての役割があります。
おまけ


配電盤の操作はこちらで行います。
大型浄化槽は、私たちの「環境を守る重要な装置」となります。
その適切な維持・管理と定期的な検査は、絶対に避けてはならない作業です。
大型浄化槽の適切な運用は、私たちが健康で快適な生活を送るための重要な要素です。
専門的な知識と経験を持つ技術者のサポートが必要な一方で、私たち一人ひとりの意識と協力もまた重要です。
丁寧な管理とメンテナンスにより、持続可能な環境の実現への貢献を目指しましょう。
越流堰とは均等に放流するための堰。