この記事では浄化槽内で水を浄化する上で不可欠な二つの材料、「担体」と「ろ材」に焦点を当てています。
ろ材は微生物の活動に適した環境を提供し、汚水の浄化に重要な役割を果たします。
担体とろ材がどのように機能し、役割を持っているのかを本記事で詳しく解説していきます。
嫌気ろ床槽(ろ材) の特徴
「嫌気ろ床槽」とは浄化槽の中で特に重要な部分であり、汚れを効率的に分解する役割を果たします。
嫌気ろ床槽内では酸素をほとんどまたは全く必要としない微生物が活動し、生活排水の汚れを分解・浄化を行います。
「嫌気」という言葉は文字通り空気が嫌いで、酸素を必要としない環境を好む微生物を指します。
メーカーの型式によって担体、ろ材の種類は異なる
浄化槽の型式、メーカーによって使用されるろ材は異なり、それぞれに応じたろ材が使用されています。
- ヘチマ型
- ボール型
- 網様、円筒状型
立体網状骨格体(ヘチマ型状ろ材)
こちらのろ材は微生物が付着しやすいように設計されており、詰まりにくい性質を持っています。
軽量でありながら丈夫な特性により長期間使用しても形状が変わりにくいというメリットがあります。
ボール状接触材
球状のろ材は互いに絡み合うことがないという特徴があります。広範な表面積を活かして、大量の汚泥を効率よく捕捉し維持することが可能です。
軽量でありながら丈夫で耐久性に優れているため、形の変形や破損の可能性が低く安定した性能を長期間にわたって保持します。
円筒状型
こちらのろ材は網目構造を採用し大量の汚泥を保持する能力を持つとともに、微生物の付着を促進します。
汚水が乱流となることによって微生物との接触が増え汚れを効率的に分解します。
高密度ポリエチレン(HDPE)製で、軽量さと耐久性が特徴。腐食、衝撃、化学薬品への強度も備えています。逆洗がしやすい点もメリットです。
嫌気ろ床槽の弱点
嫌気ろ材は水質改善に非常に効果的ですがいくつかの注意点があります。
一つは経年劣化による問題で、支えているネットが破れることにより、ろ材自体が流出することがあります。
問題を防ぐためには定期的なメンテナンスと維持管理が必要です。
清掃を怠ることや使用頻度が高い環境下では、「蓄積された汚泥の重みや発生するガスの影響」により、ろ材が落下するか浮上する可能性があります。
網状ろ材流出の写真↓
ろ材補修工事事例
修理前↓
修理後↓
修理前↓
修理後↓
フジクリーンろ材修理例↓
ろ材引き上げ↓
補強するための足↓
補修完了↓
水張り後↓
好気処理で使用される流動床担体
浄化処理では「担体」が微生物の住処として活躍しています。担体はばっ気槽内で微生物が定着しやすくなるように作用し、水質改善に効果的です。
- 容量が狭い槽内でも効果的な浄化が可能
- 微生物を豊富に含むことで有機物や窒素、リンを効率的に分解
- 家庭用から産業用まで幅広く使用されている
好気性処理で使用される担体はプラスチックやスポンジ製の材料で作られ、多くが直径5cm未満の小さなサイズで製造されています。
微生物が付着している様子の担体↓
浄化処理における「担体」は、微生物の生息地として重要な役割を果たしており、担体流動槽や生物ろ過槽などの処理段階で効果を発揮します。
担体がある浄化槽で起きる問題
担体のデメリットは以下になります。
- 担体が劣化する
- 劣化した担体が流出する
- 消耗品でランニングコストが発生する
担体流動槽ではエアレーションによって担体が槽内を常に循環しています。そのため担体同士が衝突して劣化します。(消耗品であると覚えておきましょう)
浄化槽に設置されたメッシュは担体が次の槽に移動しないようにしますが、劣化した小さな担体が流出することがあります。
担体は多様な生物群を宿し、微生物が油脂を分解して浄化作用を向上させます。活性汚泥法に比べ余剰汚泥の発生が少なく、家庭槽のようなコンパクトな浄化槽では効率的な処理が可能です。
波板状接触ろ材の特徴
接触ろ材の特徴は以下のとおりです。
- 広い表面積による処理能力の向上
- 長期使用に耐える耐久性の高い材質
- 水流の適度な抵抗による十分な接触時間の保持
- 微生物の増殖に適した材質使用
- 微生物が付着しやすい形状
- 多くの微生物が付着し、高い汚泥保持率が可能
- 腐食やサビの心配なし、長期的な使用と維持が容易
- 安定した性能で水処理において非常に有効
以下の動画で、ろ材の効果的な清掃方法を視聴できます。
硬質PVC製の接触ろ材は微生物が付着しやすく、ろ材の表面に定着して有機物や汚れを分解します。
比表面積が広く多くの微生物が付着し高い汚泥保持率を実現します。耐久性があり、ろ材の長期使用と維持が容易です。
空隙率が高いため、汚水が均等に循環し効率的に接触します。接触ろ材は長期にわたり安定した性能を発揮します。
接触ろ材に微生物が生物膜を生成している写真↓
まとめ
浄化槽の中で「担体」と「ろ材」は、汚水をきれいにする大切な役割を果たしています。
- 担体は細かい有機物を分解
- ろ材は濾過し大きなゴミや浮遊物を捕捉、除去し分解
2種類のろ材よって微生物が元気に働き汚水の分解、水質向上に貢献し、河川や海の汚染が抑制され生態系への影響が軽減されます。
定期的なメンテナンス(維持管理)を行うことで、浄化槽は長期にわたり効果的に機能し続け、持続可能な環境保護に貢献することができます。