
普段何気なく利用している浄化槽ですが、使い方を誤ると「快適な浄化槽生活」を送ることができなくなります。
「適切な使い方」というと難しそうに思えるかもしれませんが、それほど難しいものではありません。
わかりやすく解説した動画も用意していますので、ぜひ一度ご覧ください。
この記事を参考にして、日々の生活に取り入れていただければと思います。
浄化槽の働きを支える微生物

浄化槽は下水道のない地域では必要不可欠な「汚水浄化処理施設」です。
槽内は複雑な構造をしており、微生物の働きによって汚水を効果的に処理しています。
微生物が死滅してしまうと、「水質が悪化しニオイの原因」となります。
微生物が元気に働ける環境を整えるためには、法律で定められた清掃や保守点検を遵守するだけでなく、日常的に正しい使い方に気を配ることが重要です。
生活排水を綺麗に!浄化槽の仕組み
浄化槽は住宅の敷地内に設置されています。
内部の仕組みは想像しづらいかもしれませんが、簡単に説明します。
一般家庭用の合併処理浄化槽は、主に3つの部屋に分かれています。
- 生活排水が最初に入る槽では、個体と液体に分離し、水より重い個体は底部に、軽いものは上部に浮きます。分離した中間にある水(中間水)が次の部屋に移送されます。
- 2つ目の槽では「ろ材」という小さなろ過装置の集まりの中を空気を必要としない嫌気性微生物が処理し、3つ目の部屋に流れていきます。
- 3つ目の槽では空気を送る「ブロワー」という装置がエアーを微生物に送り込みます。微生物が有機物を分解し、処理された水は、消毒され、側溝や河川へ放流されます。

家庭から排出された汚水は、槽内で「約12時間」かけて処理されます。
不適切なものを流すと、処理時間が延びるだけでなく、故障や詰まりの原因となるケースがあります。
失敗しないトイレの流し方!

節水方法として、トイレのタンクにペットボトルを入れる方法を聞いたことがあると思いますが、浄化槽を使用している場合は詰まりの原因になってしまうことがあるので避けましょう。
最近は「節水型のトイレが主流」であり、新築のトイレでも詰まったという報告が増えています。
また、トイレットペーパー以外にも、「流せる」と表示されている生理用品やお掃除シートが多くありますが、これらの商品は浄化槽では分解できないため詰まりの原因になります。
トイレには「排泄物とトイレットペーパー以外のものを流さない」ようにしましょう。
ブロワーの電源は絶対に切らない!

浄化槽では、「ブロワーによって空気(酸素)を供給」し、微生物が汚水を分解して浄化する仕組みです。
留守や夜間でも、ブロワーの電源は切らないようにしましょう。
なぜなら、電源を切ると酸素が行き渡らず、微生物が死滅してしまいニオイの原因となってしまうからです。
長期間留守にする場合や今後再開の予定がない場合は、浄化槽清掃後にキレイな水を張った状態であれば、ブロワーの電源を切っても問題ありません。
浄化槽の上には何も置かない!
清掃や点検の際には、マンホールを開けて作業を行うので、マンホールはできるだけ塞がないようにしましょう。
もし何か置く場合は、移動が容易なものにしておくことが重要です。
また、浄化槽の上に車を駐車する場合は注意が必要です。
車の重さによってマンホールが劣化する可能性がありますので、マンホールの「耐荷重を確認」し、車が乗っても安全な状態か必ずチェックしてください。

マンホールが開きやすい状態のままにしておくと、転落事故や悪臭トラブルの原因になるので、必ず閉めてロックをかけておきましょう。
浄化槽に流すとNG!避けるべきものとは?

浄化槽を正しく使うために、流してはいけないものがあります。
長い期間安心して使用するために「必ず守っていただきたいこと」を紹介します。
浄化槽に流してはいけないモノ10選!
- 油脂や食用油
- 残飯や食べ物のくず
- 溶剤やペイント
- 殺虫剤や除草剤、農薬
- 化学薬品や薬剤
- 大量の漂白剤や除菌剤
- 砂や石、石鹸の固まりなどの固形物
- 衛生用品やおむつ、生理用品
- 紙くずやテッシュペーパー
- タバコ、新聞紙
浄化槽には、流してはいけないものが多く存在します。特に「固形物」は、流してはいけません。
また、浄化槽には生ごみを処理する機能はありませんので、野菜くずや魚の骨、使用済みの食用油を流すと詰まりの原因となります。
生ごみはしっかり水分を切り、可燃ゴミとして処理しましょう。
食用油は凝固させるか、キッチンペーパーなどで吸収してから捨てるようにしましょう。
ティッシュペーパーも水に溶けにくい素材のため、詰まりの原因となります。
おすすめのトイレットペーパーは、「シングルのパルプ100%」と表記されているものです。

微生物に優しい洗剤選び方!

浄化槽を使用している家庭では、「中性もしくは酸素系の洗剤」を使用するように心掛けましょう。
洗濯洗剤に関しては、たくさんの量を使ったからといって必ずしも汚れが落ちるわけではありません。
洗濯時にはすすぎの時間が長くなり、水の使用量も増えてしまいます。これにより浄化槽に負担がかかることになります。
適正な量の洗剤を使用し、節水にも努めましょう。

また、注意が必要な洗剤の一つは「アルカリ性洗剤」です。
アルカリ性洗剤は油汚れに対して非常に強力な洗浄力を持ちますが、同時に微生物をも死滅させてしまう可能性があります。
さらに、お風呂用のカビ取り剤や排水管の詰まりを解消するためのパイプ用洗剤も強力な成分を含んでいますので、これらの使用によって微生物が死滅する可能性があります。
ただし、一度に大量に使用することがなければ問題ありません。
これらの洗剤を使用する場合は、短期間で大量に使用しないように心がけましょう。
詰まりの前兆と対策!故障時の費用について

適切に浄化槽を使用することで、修理費用を最小限に抑えることができます。
家庭の排水管と浄化槽をつなぐ部分に油や固形物が溜まり続けると、排水溝が詰まってしまうことがあります。
排水管が詰まる予兆として、「ゴポゴポ」といった音がし、水の流れが悪くなります。
排水管が何かの原因で詰まると、その場所に「空気」が溜まります。
空気が押し出される際に、ゴポゴポといった異音が発生します。
また、排水溝から不快なニオイが漂ってくる場合も要注意です。
排水溝から見える詰まりは、自分で解決できる場合もありますが、無理をせずに清掃業者や詰まり抜き専門業者に相談することをおすすめします。
素人が無理して解消しようとすると、排水管を傷つけたり破損させたりする可能性もあるため、注意が必要です。
浄化槽の修理費用について
浄化槽が故障した場合、修理にかかる費用は壊れた箇所や浄化槽の型式、業者によって異なります。
出張費用や作業の時間によって料金が追加される場合もあるため、依頼する場合は業者に確認してみましょう。
一般的に浄化槽本体の修理費用は「10万円〜50万円ほど」かかります。
大規模な工事になると、修理費用や修理にかかる日数も増えます。
支援制度とは?浄化槽故障で補助金活用!
浄化槽を交換する場合や修理が必要な際は、自治体が補助金を出している場合があるので、お住まいの役所で相談してみることをおすすめします。
また、「火災保険」で修理できるケースもあるので、心配な方は保険会社に相談して下さい。
- 火災による被害: 浄化槽内部での火災が原因で建物に被害が発生した場合、火災保険の適用が考えられる。
- 自然災害による被害: 地震や台風などの外部要因で浄化槽が破損した場合、火災保険の適用が考えられる。
- 設備故障や老朽化による被害: 浄化槽の内部設備が故障や老朽化で修理が必要な場合、火災保険の適用が考えられる。但し、経年劣化が原因の場合、保険の適用が制限されることがある。
まとめ

浄化槽と長期的に快適な生活を送るためには、日常的に正しい使い方を心がけることが不可欠です。
浄化槽は私たちと共に生活し、重要な役割を果たしています。浄化槽は良き「相棒」として丁重に取り扱いましょう。
適切に維持管理をすることで、微生物たちも効果的に働き、水質が改善され浄化槽の寿命も延びます。
日々の生活の中で、正しい浄化槽の使用方法を習慣化することをおすすめします。
これにより、快適な環境を保ちながら浄化槽と共に健やかに過ごすことができます。