保守点検記録票には、浄化槽の機能を確認するための各種数値や指標が記載されています。
pH・DO・亜硝酸性窒素などの項目は、浄化槽の運転状態を評価するうえで重要です。
本記事では、数値を測定する目的や意味、保守点検記録票の見方について解説します。
記事を読めば、浄化槽管理への理解が深まり、適切なメンテナンスを行えます。本記事の内容は以下のとおりです。
- 点検記録票:保守点検結果を記録する書類
- pH:水の酸性度やアルカリ度を示す数値
- DO:水中に溶けた酸素の量
- 亜硝酸性窒素:窒素の変換過程を評価する指標
以下の動画を見ることで、より理解が深まります。
点検記録票の重要性

保守点検が完了すると、管理業者から検査結果を記録した点検記録票が提供されます。これは、浄化槽の現状を把握するための重要な資料です。
点検記録票には、以下の項目が記載されています。
- ブロワー・ポンプ:稼働状況、異音、振動の有無を確認
- 水質指標:pH・DO・亜硝酸性窒素を測定・記録
- 放流水:放流状況、透視度、臭気を確認・記録
- 点検結果:概要をまとめ、注意事項を記録
酸性とアルカリ性の影響を理解しよう

pHという言葉はよく知られていますが、意味を理解している方は多くありません。
pHとは、水中の水素イオンの濃度を示す指標で、数値によって水の酸性・アルカリ性を判断します。
例えば、酸性の代表であるレモンはpH値が低く、アルカリ性の家庭用洗剤はpH値が高いという特徴があります。(物にもよります)
浄化槽が正常に機能するためには、pH値を適正な範囲で維持することが重要です。
酸性とアルカリ性のニオイ対策
重曹はアルカリ性、クエン酸は酸性の性質を持っています。これらを組み合わせることで中和反応が起こり、ニオイの原因物質を分解して消臭効果が得られます。
台所がにおうな~
台所のニオイは主に酸性成分によるものです。以下の表を参考にしてください。
ニオイの種類 | 具体的なニオイや汚れ |
アルカリ性のニオイ | 魚や肉の腐ったニオイ、トイレ、バスルームの臭気、尿、尿石 |
酸性のニオイ | 生ゴミ臭や焼き魚、焼き肉の残飯、野菜が腐ったニオイ |
その他の汚れ | 油汚れ |
pHの適正範囲と管理方法
浄化槽における放流水の適正なpH値は、5.8~8.6とされています。
微生物はpHの変化に敏感であり、酸性やアルカリ性に大きく偏ると処理機能が低下します。
pH値が低い場合は、エアー抜きや間欠運転で改善可能です。
間欠運転は、使用頻度が低く、負荷の少ない現場に適した運転方式です。電気代の節約やCO2排出量の削減にもつながります。
以下の動画では、間欠ユニットの使用法について解説しています。
pH計の校正方法
安価なpH計やDO計は、数値が不安定になりやすく、正確な測定が難しい場合があります。
本記事で紹介する製品は、業務用として使用できる高精度なpH計とDO計で、信頼性の高い測定が可能です。

DO(溶存酸素)の役割

DOは「溶存酸素」を意味し、水中に溶け込んでいる酸素の量を示す指標です。槽内には酸素を必要とする好気性微生物が生息しています。
DOの測定は、微生物に十分な酸素が供給されているかを確認するために行います。
酸素がないと死んじゃうよ~
DOの値は、槽内の微生物の活動や浄化効果に大きく影響します。微生物は酸素がなければ浄化処理を行えません。
一方で、DOが高すぎても過ばっ気や微生物のバランスが崩れ、水質に悪影響を及ぼします。

DOの適正基準
DO(溶存酸素)の適正値は、1.0~3.0mg/L以上が推奨されています。範囲内であれば、微生物は安定して活発に活動できます。
個人的には4.0mg/L以上あると良い!
油や吐瀉物など栄養分を多く含むものが流入すると、酸素が大量に消費され、槽内が酸欠状態になります。
酸欠になると微生物の浄化能力が低下し、水質悪化や臭気の発生につながります。
酸欠状態の改善には、ブロワーの風量を増やすことや、シーディング剤の使用が効果的です。
酸素供給が増えることで微生物の活動が活性化し、浄化槽の処理能力が向上します。

空気中の78%を占める窒素の役割と影響

亜硝酸性窒素は、植物の成長に必要な栄養素であり、多くの肥料に含まれています。微生物にとっても重要な栄養源の一つです。
ただし、窒素が過剰になると微生物が過剰に増殖し、水質の悪化を引き起こす原因になります。
空気中の構成ガス | 容積比率(%) | 分圧(mmHg) |
酸素 | 20.93 | 159.1 |
窒素 | 78.09 | 593.5 |
二酸化炭素(炭酸ガス) | 0.03 | 0.2 |
アルゴンその他の希ガス | 0.95 | 7.2 |
計 | 100.00 | 760.0 |
汚水にはアンモニア性窒素が多く含まれており、処理の過程で亜硝酸性窒素へと変化します。この反応を「硝化」と呼びます。
硝化が進行すると、亜硝酸性窒素はさらに硝酸性窒素に変わります。
好気槽で硝化を行い、一次処理槽へ返送することで、窒素を効果的に除去することが可能です。
硝酸性窒素は最終的に気化し、地球の窒素循環に寄与します。
pH低下の原因と対策
pHの低下は、硝化反応によって引き起こされます。アンモニア性窒素が亜硝酸性窒素や硝酸性窒素へと変化する過程で、pHが下がります。
亜硝酸性窒素の測定は、硝化反応の進行を確認するうえで重要です。窒素を適切に除去することで、水質の改善ができます。
水中の窒素が増えすぎると、微生物が増殖し、水質が悪化する原因になります。
pHが低い場合の対処法は、以下のとおりです。
- エアー抜きを行う
- シーディング剤の投入
- 間欠ばっ気運転を行う
- pH調整剤を使用する
環境保護と性能維持のために

今回のテーマには専門的な意見や多様な見解がありますが、全体の仕組みを大まかに理解することが大切です。
pHやDO、亜硝酸性窒素などの数値を正常範囲で維持することで、微生物が効率よく働き、水質が安定します。
数値を保つためには、定期的な保守点検が欠かせません。メンテナンスを怠ると、水質悪化や環境への悪影響を引き起こします。
浄化槽を安定的に運用するためにも、専門知識を持つ管理業者に点検を依頼しましょう。