浄化槽の水張りに関して、お客様からは「水道代はどの程度か?」「バキュームカーで槽内に戻す方法は安全か?」といった疑問が寄せられます。
本記事ではこれらの疑問に答え、自宅で簡単にできる水張りの方法を紹介します。浄化槽清掃後の水張り作業は重要です。理由は以下のとおりです。
- 浄化槽の破損を防ぐため
- 固形物と液体を分離するため
- ニオイ、詰まりを防ぐ役割
浄化槽の破損を防ぐために:水張りの重要性
「漏水」とは浄化槽に亀裂や穴ができ、水が外に漏れる現象です。浄化槽からの漏水は周囲の環境や建物に影響を及ぼします。地下に浸透した汚水は環境汚染を引き起こし、建物の構造にも損傷を与えるため、緊急対応が必要です。
湧水のリスクと対策
「湧水」とは槽内が破損し、割れた部分から水が湧き出る現象を指します。漏水と同様、湧水も速やかに対処が必要です。浄化槽は地下に設置されるため、周囲の土から土圧が加わります。
浄化槽は空の状態よりも水で満たされている方が破損しにくいです。水を充填すると内部と外部の圧力が均衡され、浄化槽にかかる圧力が軽減されます。清掃後の浄化槽は空に近い状態になるため、清掃後は速やかに水張りを行うことが重要です。
内部と外部の圧力を均衡させることで浄化槽の耐久性が向上し、長期にわたって安定した運用が可能です。
正しい水張りの手順
水張り方法は以下のとおりです。
- 汚水桝から水を入れる
- 汚水処理場から水を汲んでくる
- お客様の水道水を使用する
水張り方法について詳しく解説した動画はコチラ。
汚水桝というのはこのようなモノです。
汚水桝は必ず浄化槽に接続されており、桝に流れ込む水は最終的に浄化槽へ流れます。浄化槽の清掃後、水を張る際は自分のホースを使用してください。
お客様のホースを使用すると予期せぬトラブルが発生しやすく、不快感や迷惑をかける可能性があります。
お客様のホースを使用する必要がある場合は、事前に許可を得るようにしましょう。
汚水処理場の役割と仕組み
汚水処理場は、汚れた水や汚泥を清潔に処理する施設です。施設で浄化処理された水は、「張り水」として使用され、再び浄化槽に供給されます。
初めての方は「なぜ浄化された水が再び浄化槽に戻されるのか?」と疑問に思うかもしれませんが、ご安心ください。張り水として使用される水は高度な処理を経ており、安全に利用できる水質です。
お客様へ水張りを依頼する際の注意点
大前提として「水張り作業は清掃業者が行います」。お客様の浄化槽における水張りはサービス範囲に含まれており、原則としてお客様にお願いすることはありません。
浄化槽について知識を持つ方や深い信頼関係がある方から協力の申し出がある場合、特別な状況下では「お言葉に甘えて水張りをお願い」することもあります。
その際は「手順や注意点を事前に詳しく説明し、適切な作業が行われるよう」十分注意しています。お客様に作業を依頼する場合、仕切り板の破損リスクを避けるために最低限の水張りは必要です。
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子供や高齢の方には依頼しない理由
水張りを依頼する時の注意ポイントは以下のとおりです。
- 子供、高齢の方には水張りを頼まない
- 家の中から水張りできる方法を選ぶ
子供には責任を持たせるのが難しく、高齢者の方はお伝えしたことを忘れてしまうリスクがあります。誤操作によるトラブルを防ぐためにも、清掃会社が責任をもって水張り作業を行いましょう。
子供、高齢の方には頼まない。
屋内からできる水張り方法
屋内からできる水張り方法は以下のとおりです。
- お風呂の残り湯を排水する
- 台所、洗面所から水を流す
- トイレから水を流す
屋外での作業には水の止め忘れや手が汚れるリスクが伴います。家の中であれば安全かつ清潔に作業が可能です。浄化槽の型式や大きさ、水圧によって水張りにかかる時間は異なります。
お風呂の残り湯を利用することで、水道代を節約できます。お風呂や台所、洗面所から水張りを行えるのは「合併処理浄化槽」を導入している家庭に限られます。
単独処理浄化槽を使用している場合、トイレからの水張りのみが可能です。
トイレからの水張り方法紹介
トイレの洗浄レバーを「大」に合わせ、テープでしっかり固定します。この操作で水が連続して流れます。約1時間その状態を保持し、テープを剥がして作業を完了します。
テープがない場合は、少し厚めに取ったトイレットペーパーで代用できます。洗浄レバーを「大」に合わせます。
トイレットペーパーを丸めて、レバーと隙間に固定します。この状態を約1時間保持し、時間が経ったらトイレットペーパーを取り除き、トイレに流します。
水張りにかかるコスト:水道代の目安
蛇口を1時間開放した場合の水道代は概ね200円前後です。地域によって差異がありますが、一般的な目安として心に留めてください。
水を長時間流し続ける習慣のない方々にとって、誤って水を出しっぱなしにした場合やうっかり忘れてしまった際の水道代は心配な点です。
固形物と液体の分離の重要性
水張り2つ目の目的は、固形物と液体の効果的な分離を促進することです。浄化槽には沈殿分離槽があり、固形物や不純物が底に沈み、軽い物質や油分は上に浮かびます。
水張りが不足すると分離作用がうまく機能しません。分離後、嫌気性微生物が汚水を浄化します。水張りは微生物が適切に機能する環境を確保するために必要です。
ニオイや詰まりの防止
3つ目の目的は、浄化槽が正常に動作するために欠かせない要素です。水量が不足すると処理効率が低下し、ニオイが発生します。固形物によって嫌気ろ材が詰まるなどの問題もあります。
水張りを行うことで問題を予防し、浄化槽が効率よく動作します。悪臭や詰まりのリスクを減らし、健康的な生活環境を維持できます。
浄化槽の最適な維持管理のために
解説した内容の結論は以下のとおりです。
- 清掃後は水を張ることが必須
- 水を張る方法は複数ある
- 水道代の負担は大きくない
浄化槽の適切な維持管理には水張りが重要です。水張りを行うことで浄化槽の寿命が延び、正常な機能が維持されます。水張りはニオイや詰まりの問題を防ぎ、清潔で健康的な生活環境を維持するために必要です。
浄化槽の維持は家庭や環境の健康を守るために欠かせない作業です。破損防止や水処理効率の向上にも水張りが役立ちます。槽内の固形物と液体を分離し、ニオイや詰まりのリスクを抑えます。浄化槽を長く使用するために、水張りを徹底しましょう。