水張りを行う理由は、以下のとおりです。
- 浄化槽の破損を防ぐため
- 固形物と液体を分離するため
- ニオイや詰まりを防ぐ役割
浄化槽の水張りについて、「水道代はどのくらいか」「バキュームカーで槽内に戻す方法は安全か」といった質問が寄せられます。
水張りは、浄化槽の破損防止や悪臭・詰まりの予防に欠かせません。槽内外の圧力を均衡させ、浄化槽の耐久性を向上させる役割があります。
この記事では、水張りの方法や重要性、自宅での実施手順、水道代の目安について解説します。
浄化槽の破損を防ぐため|水張りの重要性
浄化槽は水で満たされている方が破損しにくい構造です。水を充填することで内部と外部の圧力が均衡し、浄化槽本体への負荷が軽減されます。
清掃後は槽内が空に近い状態になるため、水張りを行い耐久性を維持しましょう。
水張りの方法を解説した動画は、以下をご覧ください。
水張り方法
水張り方法は以下のとおりです。
- 汚水桝から水を入れる
- 汚水処理場から水を汲んでくる
- お客様の水道水を使用する
汚水桝から水を入れる
汚水桝は浄化槽に必ず接続されており、桝に流れ込んだ水は浄化槽へと流れます。
汚水桝の蓋は、マイナスドライバーで少しひねるだけで簡単に開けられます。
汚水処理場から水を汲んでくる
汚水処理場は、汚水や汚泥を処理し、清潔な水を生成する施設です。処理された水は「張り水」として再利用され、浄化槽に供給されます。
張り水は高度な処理を経ており、安全な水質が確保されているので安心です。
お客様の水道水を使用する
お客様の水道水をお借りして水張りを行います。
水張り作業は清掃業者が行うため、お客様が行う必要は基本的にありません。水張りは清掃サービスの一環であり、通常は業者が責任を持って行います。
ただし、浄化槽に関する知識がある方や信頼関係の深い方から協力の申し出があった場合に限り、水張りをお願いすることがあります。
その際は、事前に手順や注意点を説明し、適切に作業が行われるよう配慮します。
お客様に作業を依頼する場合でも、仕切り板の破損リスクを避けるため、最低限の水張り作業は必要です。
隔壁の修理手順を解説した動画は、以下をご覧ください。
お客様に水張りを頼むときの注意点
お客様に水張りを頼むときの注意点は、以下を参考にしてください。
- 子供・高齢者の方には依頼しない
- トイレからできる水張り方法
- 屋内からできる水張り方法にする
子供・高齢の方には依頼しない
子どもに水張り作業を任せるのは難しく、大きな子どもでも依頼は避けるべきです。高齢者の場合、伝えた内容を忘れるリスクや誤操作によるトラブルの可能性があります。
水張り作業は、子どもや高齢者には頼まないように。
トイレからできる水張り方法
トイレの洗浄レバーを「大」に合わせてテープで固定します。この操作で水が連続して流れます。
約1時間その状態を維持し、最後にテープを剥がして作業完了です。
テープがない場合は、少し厚めに取ったトイレットペーパーで代用できます。洗浄レバーを「大」に合わせ、トイレットペーパーを丸めてレバーの隙間に固定します。
約1時間保持した後、トイレットペーパーを取り外してトイレに流します。
屋内からできる水張り方法
屋内からできる、水張り方法は以下のとおりです。
- お風呂の残り湯を排水する
- 台所や洗面所から水を流す
- トイレから水を流す
屋外作業では、水の止め忘れや手が汚れるリスクがあります。家の中で作業すれば、安全で清潔に進めることができます。
水張りの所要時間は、目安として1時間30分です。ただし、浄化槽の型式や水圧により所要時間は異なります。
お風呂や台所、洗面所から水張りができるのは、「合併処理浄化槽」を使用している家庭に限られます。
単独処理浄化槽を使用している場合、水張りはトイレからのみ行えます。
水張りにかかるコスト|水道代の目安
浄化槽の水張りには水道水を使用しますが、水道代が気になる方も多いでしょう。蛇口を1時間開けっぱなしにすると、水道代は約200〜300円です。
ただし、地域や使用水量によって料金は異なります。正確な金額は、お住まいの地域の水道局や自治体に確認してください。
水張りが必要な3つの理由
水張りが必要な3つの理由は、以下を参考にしてください。
- 固形物と液体を分離するため
- 臭気や詰まりを防止する
- 漏水と湧水対策
固形物と液体を分離するため
水張りの目的は、固形物と液体を分離することです。浄化槽内の沈殿分離槽では、固形物や不純物が底に沈み、油分や軽い物質が上に浮きます。
水張りが不十分だと、分離機能が正常に働かず、処理が円滑に進みません。分離後、嫌気性微生物が汚水を浄化します。
水張りは、微生物が適切に活動できる環境を整えるために必要です。
臭気や詰まりの防止
水張りは浄化槽が正常に機能するために不可欠です。水量が不足すると、処理効率が低下し、悪臭が発生します。
固形物の詰まりにより嫌気ろ材の性能が損なわれます。水張りを行うことで、トラブルを防ぎ、浄化槽の処理機能を保てます。
漏水と湧水のリスク対策
漏水とは、浄化槽に亀裂や穴が生じ、水が外部に漏れる現象です。浄化槽からの漏水は、周囲の環境や建物に悪影響を及ぼします。
地下に浸透した汚水は環境汚染を引き起こすため、早急な対応が求められます。
「湧水」とは、浄化槽が破損し、割れた部分から水が湧き出る現象です。
漏水と同様に、湧水も早急な対応が必要です。田んぼや河川付近など水源が豊富な地域では、湧水が特に発生しやすくなります。
梅雨時期や海の近い地域では、潮の満ち引きによる水位変動が湧水の原因になることがあります。
浄化槽の最適な維持管理のため
浄化槽清掃後の水張り作業は、槽内の圧力を均等に保ち、破損リスクを軽減するために重要です。
水を張ることで固形物と液体の分離が進み、悪臭や詰まりの防止に効果があります。
水張りには、水道水、または汚水処理場の水を使用することが推奨されます。水道代もさほど大きな負担になりません。
水張りは、浄化槽の機能を維持し、長期的な安定運用を支える重要な作業です。破損防止や水処理効率向上の効果もあり、浄化槽のトラブルを防ぐ役割を果たします。