水張りを行う理由は、以下のとおりです。
- 浄化槽の破損を防ぐ
- 固形物と液体を分離する
- 臭気や詰まりを防ぐ
浄化槽の水張りについて「水張りは必要?」「水道代の目安は?」といった疑問を持つ方は多くいます。
水張りは、浄化槽の破損を防ぎ、臭いや詰まりの発生を抑えるために重要です。槽内と外部の圧力を均等に保つことで、構造の耐久性も向上します。
本記事では、水張りの方法や具体的な手順、水道代の目安について解説します。記事を読めば、浄化槽の維持管理に必要な知識が身に付きます。
水張りを行う理由は浄化槽の破損を防ぐため

浄化槽は、水で満たされている状態のほうが破損しにくい構造です。水を充填することで内部と外部の圧力が均衡し、本体への負荷を抑えられます。
清掃後は槽内が空に近くなるため、水張りによって耐久性を維持することが重要です。
水張りが必要な3つの理由

水張りが必要な3つの理由は、以下を参考にしてください。
- 固形物と液体を分離するため
- 臭気・詰まりを防止する
- 漏水・湧水のリスク対策
水張り方法については、以下の動画をご覧ください。
固形物と液体を分離するため
水張りの目的は、固形物と液体を分離することです。浄化槽内の沈殿分離槽では、固形物や不純物が底に沈み、油分や軽い物質が上に浮きます。
水張りが不十分だと分離機能が正常に働かず、処理が円滑に進みません。分離後、嫌気性微生物が汚水を浄化します。
水張りは微生物が活動できる環境を整えるために必要です。
臭気・詰まりの防止

水張りは浄化槽が正常に機能するために不可欠です。水量が不足すると処理効率が低下し、臭気の発生を引き起こします。
固形物の詰まりにより嫌気ろ材の性能が損なわれます。水張りを行うことでトラブルを防ぎ、浄化槽の処理機能を維持できます。
漏水・湧水のリスク対策
漏水とは、浄化槽に亀裂や穴が生じ、汚水が外部に漏れ出す現象です。
浄化槽からの漏水は、周囲の環境や建物の基礎部分に悪影響を及ぼすほか、地下に浸透した汚水が土壌や地下水を汚染します。
被害の拡大を防ぐためにも、早急な点検と対応が必要です。
湧水とは、浄化槽が破損し、割れた部分から地下水が槽内に流れ込む現象です。漏水と同様に、湧水も浄化槽の機能に支障をきたすため、早急な対応が必要です。
特に、田んぼや河川の近くなど地下水位が高い地域では発生します。梅雨時期や海の近くでは潮の満ち引きによる水位変動が湧水の原因になることがあります。
水張り方法

水張り方法は以下のとおりです。
- 汚水桝から水を入れる
- 汚水処理場から水を汲んでくる
- お客様の水道水を使用する
汚水桝から水を入れる

汚水桝はすべての浄化槽に設置されており、桝に流れ込んだ水は浄化槽へと流れます。蓋はマイナスドライバーで軽くひねるだけで簡単に開けられます。
汚水処理場から水を汲んでくる
汚水処理場は、汚水や汚泥を処理して清潔な水をつくる施設です。処理された水は「張り水」として再利用され、浄化槽に供給されます。
張り水は高度な処理を経ており、水質が安全に保たれているため安心して使用できます。
お客様の水道水を使用する
水張りにはお客様の水道水を使用します。作業自体は清掃業者が行うため、お客様が対応する必要はありません。水張りは清掃サービスに含まれており、業者が責任を持って実施します。
ただし、浄化槽に詳しい方や信頼関係のあるお客様から協力の申し出があった場合に、水張りをお願いすることがあります。依頼する際は、事前に手順や注意点を丁寧に説明し、適切に作業が行われるよう十分に配慮します。
お客様に作業を依頼する場合でも、仕切り板の破損を防ぐために、最低限の水張り作業は必須です。
お客様に水張りを依頼する際の注意点

お客様に水張りを依頼する際の注意点は、以下のとおりです。
- 子供・高齢者の方には依頼しない
- トイレから水張りを行う手順
- 屋内からできる水張り方法を選ぶ
子供・高齢の方には依頼しない
子どもに水張り作業を任せるのは、安全面や責任の観点から適切ではありません。
高齢者の場合は、伝えた手順を忘れるリスクや操作ミスによるトラブルが発生する可能性があります。
水張り作業は、子どもや高齢者には頼まないように。
トイレから水張りを行う手順
トイレの洗浄レバーを「大」に合わせ、テープで固定すると水が連続して流れる状態になります。
レバーを約1時間維持し、時間が経過したらテープを剥がして作業完了です。

テープがない場合は、少し厚めに取ったトイレットペーパーで代用できます。洗浄レバーを「大」に合わせ、丸めたトイレットペーパーをレバーの隙間に詰めて固定します。

指定された時間が経過したら、トイレットペーパーを取り外し、そのままトイレに流しましょう。
屋内からできる水張り方法を選ぶ

屋内からできる水張り方法は以下のとおりです。
- お風呂の残り湯を排水する
- 台所や洗面所から水を流す
- トイレから水を流す
屋外での作業は、水の止め忘れや手が汚れるリスクがあります。屋内で行うほうが安全かつ清潔に作業できます。
水張りの所要時間は目安として約1時間ですが、浄化槽の型式や人槽、水圧によって前後します。
お風呂や台所、洗面所から水張りができるのは、合併処理浄化槽を使用している家庭に限られます。単独処理浄化槽を使用している場合は、トイレからのみ水張りを行えます。
水張りにかかる水道代の目安

浄化槽の水張りには水道水を使用しますが、水道代が気になる方もいるかもしれません。蛇口を1時間開けた場合、水道代はおおよそ200〜300円程度です。
料金は地域や使用水量によって異なるため、正確な金額はお住まいの水道局や自治体に確認してください。
まとめ

浄化槽清掃後の水張り作業は、槽内の圧力を均等に保ち、破損を防ぐために必要です。水を張ることで、固形物と液体が分離しやすくなり、悪臭や詰まりの予防にも効果があります。
使用する水は、水道水または汚水処理場の処理水が適しています。水道代が大きな負担になることはありません。
水張りは、浄化槽の機能を維持し、長期間にわたる安定運用を支える重要な作業です。槽の破損を防ぐだけでなく、水処理の効率を高め、異常やトラブルの発生を予防できます。