浄化槽の点検記録票の見方|pH・DO・亜硝酸性窒素の数値でわかること
保守点検記録票には浄化槽の状態をあらわす数値が書かれています。
なかでもpH・DO・亜硝酸性窒素の3つは運転の調子を見るうえで大切です。
この記事では浄化槽管理士歴10年以上の私が、数値をはかる目的や意味と点検記録票の項目をまとめました。
次の動画でも記事の内容をわかりやすく解説しています。
点検記録票とは|浄化槽の状態がわかる大切な資料

保守点検が終わると管理業者から点検記録票がわたされます。浄化槽の状態を知るための大切な資料です。
点検記録票に書かれているおもな項目は次の4つです。
- ブロワー・ポンプの動き方や異音・振動の有無
- pH・DO・亜硝酸性窒素の数値
- 放流状況・水の澄みぐあい(透視度)・臭気の有無
- 点検結果の概要と注意事項
pHの見方|放流水は5.8〜8.6が適正

pHは水にふくまれる水素イオンの量をあらわす数値です。これを見れば水が酸性かアルカリ性かがわかります。
たとえば酸性のレモンはpHが低く、アルカリ性の家庭用洗剤はpHが高めです。
浄化槽をきちんと動かすにはpHをちょうどよい範囲に保つ必要があります。放流水の適正pHは5.8〜8.6です。
記号のせつめい
貯金(アルカリ度)がへる量は、食べたアンモニアの約7倍。脱窒がすすむと、そのうち約半分が戻ってくるよ。(くわしい数字:アンモニア性窒素1mgあたり、アルカリ度は約7.14mg〈CaCO₃換算〉へる)
<おまけ実験> 現場の「あるある」を、自分のペースで1ステップずつ見られるよ
※ アニメの変化はわかりやすく速くしています。実際の槽では日〜週の単位でゆっくり起こる変化です。
硝化が進むとpHが下がる
pHが下がるのは硝化が進むからです。
アンモニア性窒素が亜硝酸性窒素や硝酸性窒素へ姿を変えるときに水の中に酸ができます。その分だけpHが下がるのです。硝化のくわしい流れは後の「亜硝酸性窒素」の章で説明します。
亜硝酸性窒素の数値は硝化がどこまで進んだかを知る手がかりです。
pHが低いときはばっ気を弱める
pHが低いときは槽に空気を送るばっ気を弱めると改善できます。おもな方法は次の2つです。
- エアー抜き:バルブをひねってブロワーの空気を一部逃がす
- 間欠運転:ばっ気を動かしたり止めたりをくり返す
ただし空気を減らすと水にとけている酸素(DO)も下がります。減らしすぎには注意してください。
ばっ気を弱めると硝化がゆるやかになり、pHがそれ以上下がりにくくなります。
硝酸性窒素を窒素ガスに変える脱窒が進むと、水が酸性にかたむくのを防ぐ力(アルカリ度)が戻ってpHも回復します。
あわせてばっ気槽の水の流れもゆるやかになるため、微生物がすみつくヌルヌルした膜(生物膜)ができやすくなるのも利点です。
pHが下がったときの対処法は次の4つです。
- ばっ気のエアー抜き
- 微生物のもとを補う薬剤(シーディング剤)の投入
- 間欠ばっ気運転
- pH調整剤の使用
間欠ばっ気運転は使う水が少なく負荷の軽い現場に向いています。電気代の節約やCO2をへらすことにも役立ちます。
なおシーディング剤は微生物を補うものです。pHを直接上げる働きはありません。ばっ気の調整と合わせて使いましょう。
pH計は定期的に校正して業務用の機種を使う
pHを正しくはかるには定期的に測定器のズレを直す作業(校正)が必要です。
校正ではpHの値がわかっている専用の液(標準液)にセンサーをひたします。そしてpH計の数値をその値に合わせます。
安いpH計は数値がふらつきやすく正確にはかるのが難しいこともあるので注意が必要です。
ここで紹介するのは業務用の高精度pH計です。数値が安定していて、安心して使えます。
ニオイの消臭は重曹とクエン酸を使い分ける
ニオイを消す基本は反対の性質のものをぶつけることです。重曹はアルカリ性でクエン酸は酸性です。
ニオイの種類によって使い分けます。
- 酸性のニオイ(生ゴミ・台所)→ 重曹をつかう
- アルカリ性のニオイ(尿・尿石・トイレ)→ クエン酸をつかう
重曹とクエン酸を混ぜて使うのはNGです。お互いを打ち消し合って炭酸ガスが出るだけで、消臭の効果はなくなります。
出典:公益社団法人におい・かおり環境協会「におい対策(消臭)」
台所がにおうな~
台所のニオイは主に酸性なので、重曹の出番です。下の表を参考にしてください。
| ニオイの種類 | ニオイ・汚れ |
| アルカリ性のニオイ | 魚や肉の腐ったニオイ、トイレ、バスルームの臭気、尿、尿石 |
| 酸性のニオイ | 生ゴミ臭や焼き魚、焼き肉の残飯、野菜が腐ったニオイ |
| その他の汚れ | 油汚れ |
溶存酸素DOの見方|微生物の働きを左右する酸素の量

DOは「溶存酸素」のことです。水にとけこんでいる酸素の量をあらわします。
記号のせつめい
DO(溶存酸素)は「水にとけこんでいる酸素の量」。ばっ気槽では、まず1.0mg/Lを下回らないことが目安だよ。下回ったら酸欠のサインなんだ。
<おまけ実験> 現場の「あるある」を、自分のペースで1ステップずつ見られるよ
※ アニメの変化はわかりやすく速くしています。実際の槽ではもっとゆっくり起こる変化です。
槽の中には酸素がないと生きられない微生物(好気性微生物)がすんでいます。DOは酸素がじゅうぶん届いているかを知る目安です。
酸素がないと死んじゃうよ~
DOの値は微生物の元気さや浄化の力に大きく関わります。
酸素が足りないと、微生物は汚れを分解できません。
逆にDOが高すぎると空気を送りすぎている状態(過ばっ気)になります。微生物のバランスがくずれて水質が悪くなります。
DOは1.0mg/Lを下回らないことが目安
DOはまず1.0mg/Lを下回らないことが目安です。この値を切ったら酸欠のサインです。
ただし高すぎると過ばっ気になります。過ばっ気は電気代のムダや汚泥が細かくなって流れ出す原因です。
さらに空気を送りすぎると、硝化が進みすぎてpHが下がります。酸性が強くなると硝化菌が弱り、かえって水がきれいになりません。
まずは1.0mg/Lを切っていないかをチェック!
油や吐しゃ物など栄養分の多いものが流れこむと微生物が酸素をたくさん使い、槽の中が酸欠になります。
酸欠になると微生物の力が落ちます。すると水質が悪くなりイヤなニオイも出てくるのです。
酸欠を直すにはブロワーの風量を上げます。あわせて流入する汚れが多すぎないかも確かめてください。
亜硝酸性窒素の見方|硝化がどこまで進んだかがわかる

亜硝酸性窒素は汚水の中の窒素が「きれいな形」に変わる途中でできる物質です。
窒素は空気の約8割を占める元素です。空気中の窒素ガス(N₂)は水を汚すことはありません。
問題なのは汚水にとけこんでいる窒素です。
| 空気中の構成ガス | 容積比率(%) | 分圧(mmHg) |
| 酸素 | 20.93 | 159.1 |
| 窒素 | 78.09 | 593.5 |
| 二酸化炭素(炭酸ガス) | 0.03 | 0.2 |
| アルゴンその他の希ガス | 0.95 | 7.2 |
| 計 | 100.00 | 760.0 |
浄化槽の中で窒素がどう変わるのかを見ていきます。
汚水にはアンモニア性窒素がたくさん含まれています。汚れ(有機物)が微生物に分解されるときにできるのもアンモニアです。
ここから次の順番で姿を変えていきます。
アンモニア性窒素(NH₄-N)→ 亜硝酸性窒素(NO₂-N)→ 硝酸性窒素(NO₃-N)
この反応をまとめて「硝化」と呼びます。1段目を進めるのがアンモニア酸化菌、2段目を進めるのが亜硝酸酸化菌です。
亜硝酸性窒素は1段目が終わった時点でできる「中間の物質」です。つまりこの数値をはかれば硝化が進んでいるかがわかります。
亜硝酸性窒素が少し出ているなら1段目(アンモニア→亜硝酸)はきちんと働いていると言えます。
ただし亜硝酸性窒素は環境によくない物質です。硝酸性窒素に変えてさらに窒素ガスまで変える必要があります。
亜硝酸性窒素が高いまま続くなら2段目が止まっている
数値が高いまま続くときは2段目(亜硝酸→硝酸)が止まっているサインです。おもな原因は次の4つです。
- DO(溶存酸素)が足りない
- 流入量が多すぎる(過負荷)
- 水温が低い(とくに冬場)
- アルカリ度が足りない
原因ごとの対処のしかたを次にまとめました。
- DO不足 → ブロワーの風量を上げる
- 過負荷 → 流入する汚れを減らす。汚泥がたまっていれば清掃する
- 水温が低い → 冬は反応が遅くなるため様子を見る
- アルカリ度不足 → pH調整剤などでアルカリ度を補う
一方で数値が出ないときは正反対の2つの可能性があります。
- 硝化が始まっていない
- 硝化が最後まで進み、硝酸性窒素になっている
状態はまったく違うのにどちらも「検出なし」です。
見分けるにはDOやpH、透視度などほかの数値もあわせて見ます。
窒素は脱窒で窒素ガスになり空気中へ抜ける
硝酸性窒素になっても窒素が消えたわけではありません。取りのぞくにはもう一段階が必要です。
ばっ気槽(好気槽)で硝化させた水を空気のない嫌気槽へもどします。これが返送です。
すると脱窒菌という微生物が働きます。汚れ(有機物)をエサにして硝酸性窒素を窒素ガス(N₂)に変えるのです。
窒素ガスは空気中へ抜けていきます。これが「脱窒」です。
使う人が少なく汚れがうすい現場では脱窒菌のエサが足りません。すると脱窒が進まず、硝酸性窒素が残ってしまいます。
ばっ気槽で硝化 → 嫌気槽へ返送 → 脱窒。この流れではじめて窒素を取りのぞけます。
ここまでの窒素の流れを動く図にまとめました。おまけの実験ボタンでは、空気を送りすぎたときの変化も見られます。
記号のせつめい
どれも中に窒素(N)が入っているよ。窒素がすがたを変えていって、さいごは窒素ガス(N₂)になり、空気へ出ていくんだ。
なぜ窒素をとりのぞくの? 硝酸(窒素)が多いまま川や海へ流れると、プランクトンが増えすぎて赤潮やアオコが発生し、水がよごれて魚がすみにくくなるから(富栄養化)。
<おまけ実験> 現場の「あるある」を、自分のペースで1ステップずつ見られるよ
※ アニメの変化はわかりやすく速くしています。実際の槽ではもっとゆっくり起こる変化です。
窒素を取りのぞくのは富栄養化と健康への害を防ぐため
窒素を含んだままの水が川や海に流れるとプランクトンが増えすぎます。
すると赤潮やアオコが発生します。水がにごって酸素が減るため魚がすみにくくなるのです。この現象を富栄養化と呼んでいます。
もうひとつ、亜硝酸性窒素は硝酸性窒素より人体への影響が強い物質です。水道水の基準を見ると、その差がよくわかります。
- 硝酸性窒素と亜硝酸性窒素の合計:10mg/L以下
- 亜硝酸性窒素だけ:0.04mg/L以下
亜硝酸性窒素には2014年4月に単独の基準が追加されました。合計値の250分の1というとても厳しい数字です。
出典:環境省「水質基準項目と基準値」/厚生労働省「水質基準省令の改正等について(平成26年4月1日施行)」
測定するときは単位に注意してください。「亜硝酸性窒素(NO₂-N)」は、亜硝酸イオン(NO₂⁻)を窒素の重さに置きかえた値です。
同じ水をはかっても、表示のしかたで数値が約3.3倍変わります。亜硝酸イオンの重さ(分子量46.01)を窒素の重さ(原子量14.01)で割った数字です。
試験紙を使うときはどちらの表示なのかを必ず確かめましょう。
まとめ|3つの数値を保てば浄化槽は安定して動く

今回のテーマは専門的で、見解の分かれる部分もあります。まずは全体の仕組みを大まかにつかむことが大切です。
3つの数値の見方をふり返りましょう。
- pH:放流水は5.8〜8.6が適正。下がってきたら硝化が進んでいるサイン
- DO:1.0mg/Lを切ったら酸欠。高すぎても過ばっ気でムダが出る
- 亜硝酸性窒素:少し出ているなら1段目は順調。高い数値が続くなら2段目が止まっているサイン
- 亜硝酸性窒素:反応が出ないときは「まだ始まっていない」か「最後まで進んだ」かの2通り
pH・DO・亜硝酸性窒素を正常な範囲に保てば微生物は効率よく働き、水質が安定します。
保守点検で数値を保ち、清掃で汚泥や詰まりを取りのぞく。この2つを続けることで浄化槽は安定して動きます。
記録票の数値で気になることがあれば、契約している管理会社に相談しましょう。









