保守点検記録票には、浄化槽の状態をあらわす数値が書かれています。なかでもpH・DO・亜硝酸性窒素の3つは、運転の調子を見るうえで大切です。

この記事では、数値をはかる目的や意味、点検記録票の項目をまとめました

以下の動画でも、記事の内容をわかりやすく解説しています。

点検記録票でわかる浄化槽の状態と主な記載項目

保守点検が終わると、管理業者から点検記録票がわたされます。浄化槽の状態を知るための、大切な資料です。

点検記録票には、次のような項目が書かれています。

  • ブロワー(空気を送る機械)・ポンプの稼働状況や異音・振動の有無
  • pH・DO・亜硝酸性窒素の数値
  • 放流状況・透視度(水の澄みぐあい)・臭気の有無
  • 点検結果の概要と注意事項

pHでわかる酸性・アルカリ性と浄化槽への影響

pH(ピーエイチ)は、水にふくまれる水素イオンの量をあらわす数値です。これを見れば、水が酸性かアルカリ性かがわかります。

たとえば、酸性のレモンはpHが低く、アルカリ性の家庭用洗剤はpHが高くなります。

浄化槽をきちんと動かすには、pHをちょうどよい範囲に保つ必要があります。放流水の適正pHは5.8〜8.6です。

ブロワ(空気おくり) ばっ気槽 「空気を入れてよごれを食べる部屋」 散気管(空気の出口) 酸性に! アルカリ度 (貯金の残高) pH 基準5.8
記号のせつめい
NH₄ = アンモニア(よごれのもと) NO₃ = 硝酸 H⁺ = すっぱいつぶ(酸のもと) HCO₃ = アルカリ度(酸を消す貯金) 青い菌 = 硝化菌 むらさきの菌 = 脱窒菌
貯金(アルカリ度)がへる量は、食べたアンモニアの約7倍。脱窒がすすむと、そのうち約半分が戻ってくるよ。(くわしい数字:アンモニア性窒素1mgあたり、アルカリ度は約7.14mg〈CaCO₃換算〉へる)
<おまけ実験> ボタンをおすと現場の「あるある」を、自分のペースで見られるよ
※ アニメの変化はわかりやすく速くしています。実際の槽では日〜週の単位でゆっくり起こる変化です。

» 浄化槽の基礎知識はこちら

pHが低いときの調整方法

pHが低いときは、ばっ気(空気を送ること)を弱めると改善できます。おもな方法は次の2つです。

  • エアー抜き:バルブをひねって、ブロワーの空気を一部逃がす
  • 間欠運転:ばっ気を動かしたり止めたりをくり返す

ただし、空気を減らすと溶存酸素(DO)も下がります。減らしすぎには注意してください。

ばっ気を弱めると硝化がゆるやかになり、pHがそれ以上下がりにくくなります。

脱窒が進むと、アルカリ度(水が酸性にかたむくのを防ぐ力)が戻りpHも回復します。

あわせて、ばっ気槽の水の流れもゆるやかになります。すると生物膜(微生物がすみつくヌルヌルした膜)ができやすくなります。

» 微生物についての詳細はこちら

硝化反応でpHが下がる仕組み

pHが下がるのは、硝化(しょうか)が進むからです。

アンモニア性窒素が亜硝酸性窒素、硝酸性窒素へと姿を変えるとき、水の中に酸ができます。その分だけpHが下がります。

亜硝酸性窒素をはかれば、硝化がどこまで進んだかの手がかりになります。

窒素をきちんと取りのぞければ、水質はよくなります。

ここまでに出てきた対処法を、まとめておきます。

  • ばっ気のエアー抜き
  • シーディング剤(微生物のもとを補う薬剤)の投入
  • 間欠ばっ気運転の実施
  • pH調整剤の使用

間欠ばっ気運転は、使う水が少なく負荷の軽い現場に向いています。電気代の節約や、CO2をへらすことにも役立ちます。

なお、シーディング剤は微生物を補うものです。pHを直接上げる働きはないため、ばっ気の調整と合わせて使いましょう。

pH計の校正方法と業務用おすすめ機種

pHを正しくはかるには、定期的な校正(こうせい/測定器のズレを直す作業)が必要です。

安いpH計は数値がふらつきやすく、正確にはかるのが難しいことがあります。

ここで紹介するのは業務用の高精度pH計です。数値が安定していて、安心して使えます。

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pHを活用したニオイ別の消臭対策

ニオイを消す基本は、反対の性質のものをぶつけることです。重曹はアルカリ性、クエン酸は酸性なので、ニオイの種類によって使い分けます。

  • 酸性のニオイ(生ゴミ、台所)→ 重曹をつかう
  • アルカリ性のニオイ(尿、尿石、トイレ)→ クエン酸をつかう

重曹とクエン酸を混ぜて使うのはNGです。お互いを打ち消し合って炭酸ガスが出るだけで、消臭の効果はなくなります。

出典:公益社団法人におい・かおり環境協会「におい対策(消臭)」

お客様

台所がにおうな~

台所のニオイは主に酸性なので、重曹の出番です。下の表を参考にしてください。

ニオイの種類ニオイ・汚れ
アルカリ性のニオイ魚や肉の腐ったニオイ、トイレ、バスルームの臭気、尿、尿石
酸性のニオイ生ゴミ臭や焼き魚、焼き肉の残飯、野菜が腐ったニオイ
その他の汚れ油汚れ

DO(溶存酸素)が微生物の働きに与える影響

DOは「溶存酸素(ようぞんさんそ)」のことです。水にとけこんでいる酸素の量をあらわします。

ブロワ(空気おくり) ばっ気槽 「空気を入れてよごれを食べる部屋」 散気管(空気の出口) 酸欠! よごれ (えさの量) DO (mg/L) 目安1.0
記号のせつめい
O₂ = 酸素(呼吸のもと) よごれ = 菌たちのえさ 緑の菌 = 好気性の菌(酸素で呼吸する菌)
DO(溶存酸素)は「水にとけこんでいる酸素の量」。ばっ気槽では、まず1.0mg/Lを下回らないことが目安だよ。下回ったら酸欠のサインなんだ。
<おまけ実験> ボタンをおすと現場の「あるある」を、自分のペースで見られるよ
※ アニメの変化はわかりやすく速くしています。実際の槽ではもっとゆっくり起こる変化です。

槽の中には、酸素がないと生きられない微生物(好気性微生物)がすんでいます。DOをはかれば、酸素がじゅうぶん届いているかがわかります。

微生物

酸素がないと死んじゃうよ~

DOの値は、微生物の元気さや浄化の力に大きく関わります。

酸素が足りないと、微生物は汚れを分解できません。逆にDOが高すぎると、過ばっ気になります。微生物のバランスがくずれ、水質が悪くなります。

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DOの適正値と酸欠時の対処法

DO(溶存酸素)は、まず1.0mg/Lを下回らないことが目安です。この値を切ったら酸欠のサインです。

ただし、高すぎると過ばっ気(かばっき)になります。電気代のムダや、汚泥が細かくなって流れ出す原因になります。

さらに空気を送りすぎると、硝化が進みすぎてpHが下がります。酸性が強くなると硝化菌が弱り、かえって水がきれいになりません。

じょー太郎くん

まずは1.0mg/Lを切っていないかをチェック!

油や吐しゃ物など、栄養分の多いものが流れこむと、微生物が酸素をたくさん使います。すると槽の中が酸欠になります。

酸欠になると微生物の力が落ちます。すると水質が悪くなり、イヤなニオイも出てきます。

» 油・吐瀉物が浄化槽に与える影響

酸欠を直すには、ブロワーの風量を上げます。あわせて、流入している汚れが多すぎないかも確認してください。

亜硝酸性窒素でわかる硝化反応と窒素循環

亜硝酸性窒素は、汚水の中の窒素が「きれいな形」に変わる途中でできる物質です。

窒素は、空気の約8割を占めるありふれた元素です。空気中の窒素ガス(N₂)は水を汚すことはありません。

問題なのは、汚水にとけこんでいる窒素です

空気中の構成ガス容積比率(%)分圧(mmHg)
酸素20.93159.1
窒素78.09593.5
二酸化炭素(炭酸ガス)0.030.2
アルゴンその他の希ガス0.957.2
100.00760.0
浄化槽管理士講習テキスト(抜粋)

浄化槽の中で窒素がどう変わるのかを見ていきます。

汚水には、アンモニア性窒素がたくさん含まれています。汚れ(有機物)が微生物に分解されるときにも、アンモニアができます。ここから次の順番で、姿を変えていきます。

アンモニア性窒素(NH₄-N)→ 亜硝酸性窒素(NO₂-N)→ 硝酸性窒素(NO₃-N)

この反応をまとめて「硝化(しょうか)」と呼びます。1段目を進めるのがアンモニア酸化菌、2段目を進めるのが亜硝酸酸化菌です。

亜硝酸性窒素は、1段目が終わった時点でできる「中間の物質」です。つまりこの数値をはかれば、硝化が進んでいるかがわかります。

亜硝酸反応が少しでているということは、1段目(アンモニア→亜硝酸)はきちんと働いていると言えます。

ただ亜硝酸性窒素は環境によくないので、硝酸性窒素→窒素ガスに変化させることが重要です。

亜硝酸性窒素の数値の読み方

数値が高いまま続くときは、2段目(亜硝酸→硝酸)が止まっているサインです。おもな原因は次のとおりです。

  • DO(溶存酸素)が足りない
  • 流入量が多すぎる(過負荷)
  • 水温が低い(とくに冬場)
  • アルカリ度が足りない

対処のしかたは、原因によって変わります。

  • DO不足 → ブロワーの風量を上げる
  • 過負荷 → 流入する汚れを減らす。汚泥がたまっていれば清掃する
  • 水温が低い → 冬は反応が遅くなるため様子を見る
  • アルカリ度不足 → pH調整剤などでアルカリ度を補う

一方、数値が出ないときは、正反対の2つの可能性があります。

  • 硝化が始まっていない
  • 硝化が最後まで進み、硝酸性窒素になっている

状態はまったく違うのに、どちらも「検出なし」になります。

窒素はどこへ行くのか(脱窒)

硝酸性窒素になっても、窒素が消えたわけではありません。取りのぞくには、もう一段階が必要です。

ばっ気槽(好気槽)で硝化させた水を、嫌気槽(空気なし)へ返送します。

すると、脱窒菌(だっちつきん)という微生物が働きます。汚れ(有機物)をエサにして、硝酸性窒素を窒素ガス(N₂)に変えるのです。

窒素ガスは空気中へ抜けていきます。これが「脱窒」です。

脱窒菌のエサになるのは汚れ(有機物)です。使う人が少なく汚れがうすい現場では、エサ不足で脱窒が進みません。硝酸性窒素が残ってしまいます。

ばっ気槽で硝化 → 嫌気槽へ返送 → 脱窒。この流れではじめて、窒素を取りのぞくことができます。

ここまでの窒素の流れを、動く図にまとめました。おまけの実験ボタンでは、空気を送りすぎたときの変化も見られます。

流入口→ 嫌気槽 「空気なし」 ばっ気槽 「空気あり」 散気管 循環(返送)配管 循環ポンプ 放流口→ pH 酸性に!
記号のせつめい
よごれ(有機物) NH₄ = アンモニア NO₂ = 亜硝酸 NO₃ = 硝酸 N₂ = 窒素ガス
どれも中に窒素(N)が入っているよ。窒素がすがたを変えていって、さいごは窒素ガス(N₂)になり、空気へ出ていくんだ。
なぜ窒素をとりのぞくの? 硝酸(窒素)が多いまま川や海へ流れると、プランクトンが増えすぎて赤潮やアオコが発生し、水がよごれて魚がすみにくくなるから(富栄養化)。
<おまけ実験> ボタンをおすと現場の「あるある」を、自分のペースで1つずつ見られるよ

なぜ窒素を取りのぞくの?

窒素を含んだままの水が川や海に流れると、プランクトンが増えすぎます。

すると赤潮やアオコが発生し、水がにごって酸素が減り、魚がすみにくくなります。これを富栄養化(ふえいようか)といいます。

もうひとつ、亜硝酸性窒素は硝酸性窒素より人体への影響が強い物質です。水道水の基準を見ると、その差がよくわかります。

  • 硝酸性窒素と亜硝酸性窒素の合計:10mg/L以下
  • 亜硝酸性窒素だけ:0.04mg/L以下

亜硝酸性窒素には、2014年4月に単独の基準が追加されました。合計値の250分の1という、とても厳しい数字です。

出典:環境省「水質基準項目と基準値」厚生労働省「水質基準省令の改正等について(平成26年4月1日施行)」

測定するときは、単位に注意してください。「亜硝酸性窒素(NO₂-N)」は、亜硝酸イオン(NO₂⁻)を窒素の重さに置きかえた値です。

同じ水を測っても、表示のしかたで数値が約3.3倍変わります。亜硝酸イオンの重さ(分子量46.01)を、窒素の重さ(原子量14.01)で割った数字です。

試験紙を使うときは、どちらの表示なのかを必ず確認しましょう。

出典:神奈川県「水道水質の解説(1)」

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まとめ|数値管理が浄化槽の安定稼働に重要

今回のテーマは専門的で、見解の分かれる部分もあります。まずは全体の仕組みを大まかにつかむことが大切です。

3つの数値の見かたを、もう一度まとめます。

  • pH:放流水は5.8〜8.6が適正。下がってきたら硝化が進んでいるサイン
  • DO:1.0mg/Lを切ったら酸欠。高すぎても過ばっ気でムダが出る
  • 亜硝酸性窒素:少し出ているなら1段目は順調。高い数値が続くなら2段目が止まっているサイン
  • 亜硝酸性窒素:反応が出ないときは「まだ始まっていない」か「最後まで進んだ」かの2通り

pH・DO・亜硝酸性窒素を正常な範囲に保てば、微生物は効率よく働きます。その結果、水質が安定します。

浄化槽を安定して動かすには、保守点検と清掃が大切です。数値を保ち、詰まりを取りのぞくためです。

信頼できる管理会社に依頼して、浄化槽の維持管理を続けましょう。

» 水質汚染の原因について

ABOUT ME
いなかの浄化槽
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わたしは浄化槽業界に10年以上携わる現役の浄化槽管理士です。「浄化槽をもっと身近に、浄化槽の仕事が好きになる」をコンセプトに、YouTubeやSNSを通じて現場で得た気づきや詰まり解消法、ブロワーの修理法について発信しています。 浄化槽は下水道が整備されていない地域で主に活躍するインフラ設備です。微生物の働きによって汚水を浄化する仕組みで、適切な維持管理が不可欠です。維持管理には浄化槽管理士、清掃員、検査員、そして浄化槽所有者の協力が必要です。浄化槽の役割や正しい使い方を伝える活動を行っています。