「浄化槽の水質が気になるけれど、どう管理すればいいのかわからない…」そんな不安を感じていませんか?

浄化槽は家庭や小さな施設から出る生活排水をきれいにする設備です。手入れをおこたると微生物が弱って処理能力が下がります。

水質を保つには微生物の役割を知って働きを守ることが大切です。この記事では嫌気性・好気性微生物の働きと水質改善のポイントを解説します。

以下の動画でも浄化槽の基礎知識をわかりやすく解説しています。

浄化槽の仕組みと2種類の微生物の役割

浄化槽の仕組みと2種類の微生物の役割

浄化槽は微生物の働きで汚水をきれいにします。

嫌気性微生物と好気性微生物には別々の役割があります。それぞれが有機物や窒素を分解します。2つの違いを見ていきましょう。

  • 嫌気性微生物の働き
  • 好気性微生物の働き

嫌気性微生物は酸素なしで有機物を分解

嫌気性微生物は酸素がなくても有機物を分解できる細菌の仲間です。

酸素のない嫌気槽で働きます。有機物をメタンガスや二酸化炭素に変えて分解します。

一部の菌は硝酸や亜硝酸を窒素ガスに変えます。

この働きを「脱窒(だっちつ)」といいます。水の中の窒素を取り除くのに役立ちます。嫌気性微生物をしっかり働かせるには酸素のない環境を保つことが必要です。

好気性微生物は酸素で有機物・窒素を分解

好気性微生物は酸素を使って有機物や窒素を分解する細菌です。ブロワーで空気を送り込む「ばっ気槽」で活発に働きます。

有機物を二酸化炭素と水に分解して水をきれいにします。

さらに硝化菌(しょうかきん)がアンモニアを硝酸に変えます。この硝酸を嫌気性微生物が窒素ガスに変えて取り除きます。

微生物が元気に働くには十分な酸素が必要です。ブロワーから送る空気が足りないと微生物の活動が落ちて水質が悪くなります。

» ブロワーの役割詳細

浄化槽の水質を保つ2つの基本

浄化槽の水質を保つ2つの基本

浄化槽の水質を保つには微生物が元気に働ける環境づくりが大切です。おさえておきたい基本は次の2つです。

  • 微生物を元気に働かせる
  • 水質が悪くなる原因を取り除く

微生物を元気に働かせる方法

微生物が元気に働くには次の3つの管理が必要です。

エアー量の調整
エアー(空気)の量が足りないと微生物が弱って有機物を分解できません。多すぎてもバランスが崩れます。ブロワーを定期的に点検して適切なエアー量を保ちましょう。
水温管理
冬は水温が下がって微生物の活動がにぶくなります。シーディング剤(微生物を補う薬剤)を入れると処理能力を保つのに役立ちます。
汚泥管理
汚泥(おでい)がたまりすぎると処理能力が下がります。年に1回以上は清掃しましょう。

水質悪化の主な原因と対策

水質が悪くなる主な原因は次の4つです。

洗剤や薬品の影響
塩素系漂白剤や抗菌成分を多く使うと微生物が死んでしまいます。界面活性剤の少ない洗剤を選びましょう。漂白剤を流すときは水で薄めましょう。油を流すのもNGです。
汚泥の蓄積
汚泥をためたままにすると処理能力が下がります。定期的に清掃しましょう。
ばっ気装置(ブロワー)の故障
ブロワーが故障すると酸素が届かなくなり微生物が弱ります。ブロワーや配管をこまめに点検しましょう。
大量の水流入
一度に大量の水が流れ込むと処理が追いつかず水質が悪化します。使う水の量を一気に増やさないように気をつけましょう。

» 泡が発生する原因

単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違い

単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違い

浄化槽には単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の2種類があります。違いは処理できる排水の種類です。

  • 単独処理浄化槽はトイレの排水のみ処理できる
  • 合併処理浄化槽は生活排水全般を処理できる

単独処理浄化槽はトイレの排水のみ処理できる

単独処理浄化槽はトイレの排水だけを処理する設備です。

台所やお風呂の排水はそのまま流れるため環境を汚しやすくなります。現在は新しく設置することが禁止されています。

下水道や合併処理浄化槽への切り替えがすすめられています。

» 単独処理浄化槽の種類について

合併処理浄化槽は生活排水全般を処理できる

合併処理浄化槽はトイレに加えて台所やお風呂の排水も処理できます。処理能力が高く外へ流す水がきれいになります。

単独処理浄化槽の水質を改善する3つの方法

単独処理浄化槽の水質を改善する3つの方法

単独処理浄化槽はトイレ排水のみ処理できる浄化槽です。

そのためアンモニアや窒素の濃度が高くなります。水質を改善するポイントは次の3つです。

  • エアー量を管理して微生物を元気にする
  • pHを保って臭気を抑える
  • 年1回以上は汚泥を引き抜いて清掃する

エアー量を管理して微生物を元気にする

単独処理浄化槽ではばっ気槽へ送るエアー量の管理が重要です。

好気性微生物を元気に保つにはブロワーを正しく運転することが必要です。フィルターの詰まりを定期的に確かめてエアー不足を防ぎましょう。

pHを保って臭気を抑える

pHを保って臭気を抑える

単独処理浄化槽はアンモニアの濃度が高く臭いが出やすいのが課題です。窒素を分解する微生物が働きやすいようにpHを6.5〜8.0に保ちましょう。シーディング剤を入れて微生物を補うのもよい方法です。

» 臭気の原因5選と対策

年1回以上は汚泥を引き抜いて清掃する

単独処理浄化槽は汚泥がたまると処理能力が下がります。年に1回以上は汚泥を引き抜いて清掃しましょう

» 浄化槽清掃の流れ詳細

合併処理浄化槽の水質を改善する3つの方法

合併処理浄化槽の水質を改善する3つの方法

合併処理浄化槽はトイレ排水に加えて生活排水も処理するため浄化槽にかかる負担が大きくなります。

台所やお風呂の排水にふくまれる油や洗剤は水質悪化の原因になります。水質を改善する方法は次の3つです。

  • 台所の油を流さないようにする
  • 浄化槽対応の洗剤を選んで使う
  • 定期的に清掃とメンテナンスを行う

台所の油を流さないようにする

合併処理浄化槽では台所排水の油が微生物の働きをじゃまします。

油はそのまま流さずキッチンペーパーで拭き取ってから洗いましょう。浄化槽の負担が軽くなります。

浄化槽対応の洗剤を選んで使う

浄化槽対応の洗剤を選んで使う

洗剤の界面活性剤や抗菌成分は微生物の活動を弱めます。

生分解性の高い(微生物が分解しやすい)中性洗剤や「浄化槽対応」の洗剤を使い量も控えめにしましょう。洗剤のくわしい選び方はあとの章で紹介します。

定期的に清掃とメンテナンスを行う

合併処理浄化槽は単独処理浄化槽より点検する場所が多くなります。

ブロワーの動作確認に加えて汚泥の引き抜きや清掃も必要です。水質のチェックも忘れずに行いましょう。

浄化槽にやさしい洗剤の選び方

浄化槽にやさしい洗剤の選び方

洗剤は浄化槽の水質に大きく影響します。

微生物の働きをじゃましない洗剤を選べば水質悪化を防げます。避けたい洗剤とおすすめの洗剤を紹介します。

微生物を弱らせる避けたい洗剤

塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)や抗菌成分(トリクロサンなど)を含む洗剤は微生物を弱らせます。

強い酸性や強いアルカリ性の洗剤をたくさん使うとpHのバランスが崩れて微生物の活動が落ちます。

微生物にやさしいおすすめの洗剤

浄化槽には生分解性の高い中性洗剤や「浄化槽対応」と書かれた製品が適しています

クエン酸や重曹を使った掃除も微生物にやさしい方法です。

» 浄化槽対応製品10選

まとめ|微生物を活かして浄化槽の水質を維持しよう

まとめ|微生物を活かして浄化槽の水質を維持しよう

浄化槽の水質を保つには微生物の働きを知って正しく維持管理することが大切です。

この記事で紹介したポイントをふり返ります。

  • 嫌気性微生物と好気性微生物の働きを知る
  • エアー量・水温・汚泥の3つを管理する
  • 洗剤・汚泥・ブロワーの故障・大量の水の4つの原因を取り除く
  • 単独処理浄化槽はエアー量とpHを管理して年1回以上清掃する
  • 合併処理浄化槽は油と洗剤に気をつけて定期的に清掃する
  • 洗剤は「浄化槽対応」や生分解性の高いものを選ぶ

浄化槽の使い方も水質に影響します。正しく使って管理しましょう。きれいで安全な水環境を守ることにつながります。

» 川をきれいにする理由

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いなかの浄化槽
いなかの浄化槽
浄化槽業界に10年以上携わる現役の浄化槽管理士です。 「浄化槽をもっと身近に、浄化槽の仕事が好きになる」をコンセプトに、現場で得た気づきや詰まりの解消法、ブロワーの修理方法などをYouTubeやSNSで発信しています。 浄化槽は下水道が整備されていない地域で活躍するインフラ設備です。微生物の働きで汚水をきれいにする仕組みのため、適切な維持管理が欠かせません。その維持管理は浄化槽管理士・清掃員・検査員、そして所有者の協力があって初めて成り立ちます。 浄化槽の役割や正しい使い方を、一人でも多くの方に知ってもらえるよう活動しています。