浄化槽は、微生物の力で生活排水を分解・処理する装置です。使用方法が不適切だと微生物の働きが低下し、排水処理が不十分になります。
誤った使い方は浄化槽の劣化や故障を招き、環境にも悪影響を与えるため注意が必要です。
この記事では、浄化槽を正しく使うための7つのポイントを紹介します。浄化槽の寿命を延ばし、トラブルを防ぐ知識を身につけましょう。
浄化槽を正しく使用するため、以下の点を守りましょう。
- マンホール上に物を置かない
- トイレットペーパー以外はトイレに流さない
- 浄化槽周辺に木や植物を植えない
- 大量の塩素系漂白剤を使わない
- ブロワーの電源は切らない
- 不要な場合、放流ポンプを設置しない
- 油や食べカスは流さない
マンホール上に物を置かない
マンホール上に物を置いてはいけない理由は、以下のとおりです。
- 点検や清掃をスムーズに行うため
- マンホールの耐荷重と安全性を確保するため
- マンホールの破損リスクを減らすため
- マンホールロックは必須
点検や清掃をスムーズに行うため
浄化槽の点検や清掃を円滑に行うため、マンホールの上には物を置かないようにしましょう。常に何も置かない状態を保つことが大切です。
マンホールは経年劣化や気温変化で膨張し、閉まりが悪くなります。臭いが漏れるだけでなく、転倒リスクも高まります。
マンホールの耐荷重と安全性
マンホール上を駐車スペースにする場合は、安全荷重を確認しましょう。
「500K」の表示があれば、タイヤ1つあたり最大荷重は500キロで、2トン車まで対応可能です。
6トン車対応のマンホールは耐久性が高く、重い車両が通行しても安全です。
以下の動画で耐荷重について解説しています。
マンホール破損リスク
外見に問題がなくても、マンホール枠が損傷している場合があります。維持管理を怠ると事故や槽内の損傷につながるため、定期点検を行いましょう。
下の写真は、マンホール枠を交換後の状態です。
ヒビや割れが見られる場合、配管や関連装置に破損が広がるため、早急に交換しましょう。
枠の交換や鉄板の設置は有効な対策です。
作業には専門知識が必要なため、自己判断せず、必ず管理業者に相談して対応を依頼しましょう。
マンホールロックは必須
マンホールにはロック付きとロックなしの2種類があります。ロックなしは価格が安く、多くの方選びがちですが、安全面に注意が必要です。
ロックなしの場合、豪雨や洪水時に外れる可能性があり、子どもが簡単に開けられるため危険です。
安全性確保のため、ロック付きマンホールの使用をおすすめします。ロック付きは事故防止に効果的で、安心して利用できます。
トイレットペーパー以外はトイレに流さない
トイレットペーパー以外をトイレに流してはいけない理由は、以下のとおりです。
- 流せると表示されたものでも分解が難しい
- 日本製と海外製トイレットペーパーの違い
流せると表示されたものでも分解が難しい
市販の「流せる」と記載された製品でも、分解が難しく槽内で固まって詰まりの原因になるため注意が必要です。
通常のトイレットペーパーより厚手で強度が高いため、槽内で分解できません。
浄化槽清掃では、ウェットティッシュや尿漏れパッド、生理用品は取り除きにくく、槽内に残りやすいです。
詰まりや設備の損傷につながります。詳しくは以下の動画で解説しています。
日本製と海外製トイレットペーパーの違い
海外製のトイレットペーパーは、日本製と異なりパルプの品質が異なるため分解しにくく、トイレ詰まりの原因になります。
日本ではトイレットペーパーを流す習慣がありますが、海外では多くの場合、可燃ごみとして処理されます。海外製のトイレットペーパーを使用すると、分解が不十分でトイレ詰まりの原因になります。
詰まりを避けるためには、分解しやすい日本製のトイレットペーパーを選びましょう。
詰まりを防ぐため、分解しやすい日本製トイレットペーパーを選びましょう。「100%パルプ製のシングルタイプ」は分解が早く、浄化槽への負担を軽減します。
浄化槽周辺に木や植物を植えない
浄化槽周辺に木や植物を植えてはいけない理由は、以下のとおりです。
- 木の根による浄化槽や配管へのダメージ
- 植物を植えたい場合の対策
木の根による浄化槽や配管へのダメージ
浄化槽の周囲に木や植物を植える際は注意が必要です。
木の根は成長に伴い浄化槽や配管を損傷する恐れがあります。根が浄化槽内に侵入すると、流れを妨げ、詰まりや漏水の原因になります。
植物を植えたい場合の対策
浄化槽や配管からは少なくとも3メートル以上離れた場所に植栽しましょう。
根が深く張らない草花や低木、成長の遅い植物を選ぶと、浄化槽への影響を抑えられ、トラブルを防げます。
庭に緑を増やしたい場合は、プランター栽培もおすすめです。プランターなら土を掘る必要がなく、浄化槽への影響を最小限に抑えつつ植物を楽しめます。
大量の塩素系漂白剤を使用しない
大量の塩素系漂白剤を使用してはいけない理由は、以下のとおりです。
- 塩素系漂白剤の影響
- 代替品としての酸素系漂白剤
塩素系漂白剤の影響
漂白剤には「塩素系」と「酸素系」の2種類があります。塩素系は除菌や漂白力が強いですが、使用時の注意が必要です。
塩素系は使ったらダメなの?
塩素系漂白剤は槽内の微生物に影響を与えますが、適量であれば問題ありません。
過剰使用は微生物を死滅させ、浄化槽機能を低下させ水質悪化の原因になります。
汚れがひどい場合は、漂白剤を希釈して使うか、多量の水で洗い流しましょう。週1回程度に抑えると、浄化槽への負荷が軽減されます。
代替品としての酸素系漂白剤
日常的な清掃には、微生物に優しい酸素系漂白剤の使用がおすすめです。
異なる漂白剤の併用は避けましょう。組み合わせると化学反応で有害な塩素ガスが発生する恐れがあります。
安全に配慮して掃除を行いましょう。
ブロワーの電源は切らない
ブロワーの電源を切ってはいけない理由は、以下のとおりです。
- 微生物の活動に必要な酸素供給
- ブロワー設置の注意点
微生物の活動に必要な酸素供給
槽内には酸素が必要な微生物が生息しており、酸素供給が欠かせません。微生物の維持と浄化機能にはブロワーが必須です。
ブロワーの電源を切ると槽内の循環が停止し、微生物が死滅します。ブロワーは移送・循環・返送の各配管へエアーを供給する役割も担っています。
ブロワーの電源は常に入れておきましょう。家庭で使用する場合、ブロワーの電気代は1日あたり約20〜30円です。
ブロワー設置の注意点
ブロワーを設置する際は直射日光を避けましょう。高温になると故障のリスクが高まるため、風通しの良い日陰が適しています。
騒音対策には防音ボックスや防振マットが効果的です。点検しやすい場所に設置し、積雪や水たまりができない環境を選ぶと安定した運転が可能です。
放流ポンプはできるだけ設置しない
放流ポンプの役割とランニングコストは以下のとおりです。
- 放流ポンプの役割
- 放流ポンプの交換とランニングコスト
放流ポンプの役割
放流ポンプは、勾配不足や放流先までの距離が長い、高低差がある場合に水を排水する装置です。
設置後はランニングコストがかかります。
放流ポンプの交換とランニングコスト
放流ポンプには寿命があるため、定期的に交換が必要です。交換を怠ると浄化槽全体の機能が低下し、修理費用が増加します。
定期的にメンテナンスを行い、ポンプが正常に動作しているか確認しましょう。
以下の動画で、放流ポンプの交換方法を紹介しています。
油や食べカス・熱湯を流さない
油や食べカス、熱湯を浄化槽に流してはいけない理由は以下のとおりです。
- 油や食べカスが与える悪影響
- ラーメンの残り汁の処理方法
- 熱湯の流し方には注意が必要
油や食べカスが与える悪影響
浄化槽には油を流さないようにしましょう。油は分解されにくく水面に浮き、微生物の活動を妨げます。浄化槽の処理能力が低下し、詰まりや悪臭の原因になります。
ラーメンの残り汁の処理方法
ラーメンや揚げ物の残り汁を流すと、油が配管内で固まり詰まる原因になります。
油を処分する際は、キッチンペーパーや新聞紙で拭き取り、固形物としてゴミに出しましょう。残り汁には凝固剤を使って固める方法もあります。
熱湯の流し方には注意が必要
浄化槽に繋がる塩ビ配管の耐熱温度は約60℃と低めです。沸騰したお湯を直接流すと、配管が変形します。
沸騰した湯を流す際は、水を一緒に流して温度を下げることで、配管へのダメージを防げます。
浄化槽の維持管理で生活と環境を良くしよう
浄化槽は、生活に欠かせない重要な設備です。正しい使用と定期的なメンテナンスで寿命を延ばし、環境への負担を軽減できます。
日々の小さな配慮が、将来のトラブル防止や快適な生活環境の維持に役立ちます。
浄化槽を正しく管理すれば生活の質が向上し、環境にも良い影響を与えます。メンテナンスや節水を徹底し、浄化槽に過度な負担をかけないよう心がけましょう。
小さな工夫が環境と家計を守るため、今日からできることを始めることが大切です。
浄化槽は大切な財産です。生活習慣を見直し、浄化槽の耐久性を高め、環境への負担を減らしましょう。