「保守点検と法定検査はどう違うの?」「法定検査は本当に必要?」と疑問に思う方は多くいます。
法定検査は、浄化槽を適切に維持・管理するために欠かせないものです。
本記事では、法定検査の内容や保守点検との違い、受検するメリットについて解説します。
記事を読めば、浄化槽の維持管理に関する基本的な知識が身につきます。
本記事の内容は以下のとおりです。
- 法定検査とは?法律で義務付けられた点検や検査のこと
- 受検しない場合は?罰金や刑事責任が発生する
- 受検するメリットは?安全性を確保し、法的トラブルを回避できる
浄化槽利用者が知っておくべきこと

浄化槽利用者が知っておくべきことは、以下のとおりです。
- 浄化槽所有者の義務と責任
- 検査項目について
- 保守点検と法定検査の違い
浄化槽所有者の義務と責任
浄化槽の所有者には、以下の義務と責任があります。点検や検査の回数は地域によって異なるため、必ずお住まいの自治体の規定をご確認ください。
- 法定検査の受検
- 年に1回、法定検査(11条検査)の受検が必要です。新設時は、使用開始後3〜8か月以内に水質検査(7条検査)を受ける必要があります。
- 保守点検
- 定期的な保守点検が必要です。3〜4か月に1回の頻度で実施されます。
- 清掃
- 年1回以上の清掃が必要です。バキュームカーで汚泥の引き抜きや装置の洗浄を行います。
法定検査の受検は、浄化槽法に基づく所有者の義務です。
受検しない場合は法律違反となり、最高で30万円以下の過料が科されます。
過料は秩序維持のために金銭を徴収する制度です。刑事事件における罰金とは異なり、前科にはなりません。
検査項目について
検査項目は以下の表を参考にしてください。
検査の種類 | 7条検査 | 定期検査(11条検査) |
検査の時期 | 使用開始後3ヶ月を経過してから5ヶ月以内 | 年1回 |
外観検査 | 設置状況 設備稼働状況 水の流れ状況 使用状況 悪臭発生状況 消毒実施状況 蚊やハエの発生状況 | 設置状況 設備稼働状況 水の流れ状況 使用状況 悪臭発生状況 消毒実施状況 蚊やハエの発生状況 |
水質検査 | 水素イオン濃度(pH) 活性汚泥沈殿率 溶存酸素量 透視度 塩化物イオン濃度 残留塩素濃度 生物化学的酸素要求量(BOD) | 水素イオン濃度(pH) 溶存酸素量 透視度 残留塩素濃度 生物化学的酸素要求量(BOD) |
書類検査 | 使用開始直前の保守点検記録をもとに、浄化槽が適正に設置されているか検査する | 保守点検や清掃の記録、前回の検査記録を参考にし、保守点検と清掃が適正に行われているか検査する |
保守点検と法定検査の違い

お客様からは「浄化槽の保守点検や清掃に加えて、法定検査は必要なのか?」というご質問を多くいただきます。
保守点検・浄化槽清掃・法定検査の違いは、以下のとおりです。
- 保守点検
- 保守点検は、浄化槽の機能を維持するために行います。点検や修理、薬剤の補充などが実施します。
- 浄化槽清掃
- 清掃では、バキュームカーを使用して槽内の汚泥を吸引し、配管やポンプを洗浄します。浄化槽の機能低下や汚物の流出、臭気の発生を防ぎます。
- 法定検査
- 国家資格を持つ指定検査員が検査を実施し、浄化槽の機能や水質を確認。あわせて、保守点検や清掃が適切に行われているかもチェックされます。問題があると判断された場合は、所有者および管理業者に対して改善を指摘し、対応を求めます。
7条検査と11条検査の違いを理解しよう

7条検査、11条検査の違いは以下のとおりです。
- 7条検査(設置後1回のみ)
- 11条検査(毎年1回)
- 法定検査、保守点検あるある
7条検査とは?浄化槽設置後の初回検査
7条検査は、浄化槽の設置後、使用開始から3か月後から5か月以内に実施される検査です。
新築やリフォームで浄化槽を新設した際に行われます。
浄化槽が正常に機能しているか、配管の接続が適切か、水の流れに問題がないかなどを詳細に確認します。
11条検査は毎年1回の検査
11条検査は、年に1度必ず受けなければならない法定検査です。
保守点検や清掃が適切に行われているか、浄化槽が正常に機能しているか、水質が基準を満たしているかなどを確認します。
検査費用は地域によって異なるため、お住まいの自治体の規定を確認してください。
法定検査・保守点検あるある
お客様のご自宅に保守点検に伺うと、
昨日も検査に来てましたよ~
それは法定検査で、本日は保守点検ですよ~
法定検査では、検査員が浄化槽の状態を確認し、問題が見つかった場合は所有者や保守点検業者に報告します。
定期的にメンテナンスを行っていても、法定検査によって新たな問題が発見されることがあります。
点検の頻度や、法定検査と保守点検の違いについては、以下の表をご覧ください。
維持管理内容 | 業務内容 | 頻度 |
保守点検 | 装置の動作、塩素剤補充 | 年3回以上 |
浄化槽清掃 | 汚泥の引き抜き | 年1回以上 |
水質検査 | 使用開始後3〜5か月以内に実施 | 初回のみ。その後は定期検査に切り替わる |
定期検査(11条検査) | 水質検査、浄化槽の機能確認 | 毎年1回 |
以下の動画では、法定検査で「問題なし」と判定された2日後の槽内の状態です。槽内の状況が日々変化していることが確認できます。
法定検査で指摘される問題

法定検査で指摘される問題は以下のとおりです。
- 法定検査の検査項目
- 法定検査の判定結果について
法定検査の検査項目
法定検査員は、さまざまな項目を詳細に検査します。検査項目は以下のとおりです。
- 漏水・湧水
- 消毒剤の不足
- 水質の悪化
- 機械の不具合
- 配管の問題
- 槽内の破損、故障
問題点が見つかった場合は、管理者(持ち主)や管理業者(保守点検業者)に報告します。
報告を受けた管理業者は、指摘された問題を修正します。
消毒剤が切れていますよ~
わかりました!補充しにお伺いします。
法定検査を受けないと、槽内の問題が見逃されるリスクが高まります。
悪い管理業者が点検や消毒剤の補充を怠たると、環境に深刻な影響を及ぼします。
環境なんてどうでもいい!
徹底した検査と管理により、浄化槽の問題を早期に特定し、迅速に対処できます。
法定検査の判定結果について
検査結果は以下の内容に基づいて判定されます。
- 適正
- おおむね適正
- 不適正
「適正」または「おおむね適正」と評価された場合は、問題はありません。
「不適正」と評価された場合は、浄化槽の機能や水質、管理体制に問題があるため、対応が求められます。
検査結果の書類は、3年間保管しておきましょう。
法定検査を受検するメリット

法定検査を受検するメリットは以下のとおりです。
- 安全と安心の投資としての法定検査
- 法定検査を受けていない場合のリスクと事例
- 法定検査と保守点検料が一括設定されている?
安全と安心の投資としての法定検査
法定検査には費用がかかりますが、浄化槽の維持管理と環境保護のために必要な投資です。
検査を受けることで安心感が得られ、指摘された問題を修正することで環境保全にもつながります。
管理業者による保守点検や清掃は車の「定期点検」、法定検査は「車検」に相当します。
健康診断や車検が必要なように、浄化槽も点検や清掃、法定検査が必要です。
以下の動画でも維持管理について解説しています。
法定検査を受けていない場合のリスクと事例

過去には、井戸水を使用している地域で、地震や地盤沈下により浄化槽から漏水が発生した事例があります。
地下水に汚水が混入し、大腸菌O157による食中毒で命を落とすという痛ましい事件が発生しました。
管理や検査を怠ると、思わぬトラブルが発生するおそれがあります。
自分では問題がないと感じていても、知らないうちに近隣住民に迷惑をかけている可能性もあります。
問題を未然に防ぐためには、保守点検と定期的な検査が欠かせません。
法定検査と保守点検料が一括設定されている?
以下の動画で保守点検について解説しています。
一部の地域では、法定検査料金と民間業者による検査料金が一体となって請求されますが、全国的に統一された仕組みではありません。
多くの場合、管理業者への料金と法定検査の料金は別々に支払う必要があり、この点が利用者の混乱を招く要因となっています。
法定検査と保守点検って正直わかりにくいですよね、、、
料金体系の統一や、法定検査と保守点検の違いがわかりやすくなる仕組みの導入に期待しています。
法定検査は集団生活と環境を守るためのルール

保守点検や清掃に加え、外部機関が実施する法定検査も重要です。
法定検査は、維持管理を確保するために、集団生活におけるルールの一環として実施されます。
浄化槽は地下に設置されているため、トラブルが発生しても気付きにくいという特性があります。
「二重取り」と表現されることもありますが、正しくは「二重検査」や「二重チェック」といった表現が適切です。法定検査は、環境保護の観点からも重要な制度です。
法定検査では、水質に問題がないか、保守点検・清掃が適切に行われているかを確認します。業務に不備が認められた場合は、管理会社への指摘も行われます。
法定検査を実施することで、水質を管理する体制を整えることが可能です。
次世代に健全な環境を引き継ぐためにも、法定検査を受検し、持続可能な社会の実現を目指しましょう。