浄化槽の漏水は、地盤沈下、環境汚染、健康被害の原因となる重要な問題です。漏水は、亀裂や穴から水が漏れる現象で、湧水は亀裂部分から水が湧き出す状態のことです。
この記事では、漏水の原因や修理方法、必要な道具、修理費用について解説します。
漏水や湧水を放置すると、環境汚染や建物への悪影響が深刻化するため、早急な対応が必要です。
解決できる内容は以下のとおりです。
- 漏水とは?
- 補修方法
- 修理に必要な道具
- 費用の相場
- 安全対策について
修理の手順については動画でも解説しているので、参考にしていただけると幸いです。
浄化槽修理に必要な道具
浄化槽修理に必要な道具は、以下のとおりです。
- FRP樹脂
- ガラスマット
- 硬化剤
- サンドペーパー
- ローラー
- 刷毛
- アセトン
道具が一式揃ったキットは、以下の商品をご参照ください。
軽量で耐久性抜群|FRP樹脂の特徴
FRPは「繊維強化プラスチック」の略で、軽量かつ耐久性に優れたプラスチック材料です。小型船の製造によく使われており、繊維状の模様が特徴です。
FRPは樹脂とガラス繊維マットを組み合わせて使用し、軽さと強度のバランスが評価されています。小型船だけでなく、浄化槽の素材としても広く採用されています。
上記の写真はガラス繊維マットの実物の写真です。マットはハサミ等を使用し、作業しやすいサイズに切り分けて使用します。
浄化槽修理の作業風景
通常、浄化された水は中央の越流堰を通過し、消毒剤を経由して放流管へ流れます。
亀裂や破損部分があると、水が侵入し、大腸菌などの未滅菌細菌が放流してしまいます。問題を防ぐには、修理が必要です。
越流堰とは上澄みの水を均等に放流させるための堰です。
FRP樹脂の貼り付け手順
修理手順は以下のとおりです。
- 割れた部分をブラシで掃除し、サンドペーパーで磨き、汚れを除去する
- 浄化槽表面の古い接着剤や汚れをグラインダーで除去し、新しい接着面を作成する
- 水漏れがある場合は粘土や水中ボンドで塞ぐ
- 完全に乾かし、残った水分はトーチやウエスで除去する
- FRP樹脂と硬化剤を混ぜ、ローラーや刷毛でガラスマットを割れ部分に貼り付ける
FRP樹脂は硬化するまでに時間がかかる
貼り付けた後は硬化するまで待ちます。硬化時間は硬化剤の量や気温によって異なるため、作業前に説明書を確認してください。
暖かいと固まりやすく、寒いと固まるのに時間がかかります。
硬化を早めるには、ドライヤーや電気ヒーターが効果的です。ただし、FRP樹脂は過熱で割れるリスクがあるため、温度管理に十分注意しましょう。
初心者は自然硬化を待つのが無難です。多少時間はかかりますが、安全で確実です。
硬化を確認する際は、手袋を着用し、貼り付けた部分が固まっているか確認してください。
手袋を着けて触れた際にFRP樹脂が手袋に付着する場合、完全に硬化していない証拠です。
作業後は、ローラーや刷毛をアセトンで洗浄してください。洗浄しないと硬化して再利用できなくなります。
修復後は浄化槽に水を張り、水漏れがないか確認します。水漏れがなければ作業完了です。
浄化槽漏水修理の費用相場
費用は地域や業者、現場の状況により異なりますが、家庭の浄化槽修理の相場は10〜30万円です。専門技術が必要なため、費用が高くなります。
結構かかるんだね^^;
修理費用は高く感じるかもしれませんが、専門的な技術と狭い場所での長時間作業が必要なため、妥当な金額です。
費用に不安がある場合は、複数の業者から見積もりを取り、相場を確認すると良いでしょう。
漏水修理する際の重要なポイント
作業を行う際の注意点は以下のとおりです。
気をつけること | 詳細 |
換気を確保 | 作業中は十分な換気を行い、ガス中毒や酸欠を防ぐ |
作業は複数人で | 安全のために複数人で作業を行い、緊急時の対応ができる体制を整える |
定期的に休憩 | 長時間の作業は避け、定期的に休憩を取って安全性を維持する |
FRP補修キットの使用時の注意 | FRP補修キット使用時には、樹脂の取り扱いに注意し、手順に従う |
異なる材料の確認 | 修理箇所の材料を確認し、適切な補修方法を選択する |
修理前に管理会社に相談 | 修理開始前に管理会社や専門業者に相談し、トラブルを回避する |
修理中の排水管理 | 修理中は、浄化槽への排水が流れないように注意する |
換気の重要性と換気方法
槽内作業時は必ずダクトを使い、十分に換気しましょう。作業中の温度上昇により、熱中症や脱水症状のリスクがあるためです。
FRP樹脂と硬化剤を混ぜると強い匂いが出るため、匂いやホコリから身を守るために必ずマスクを着用してください。
単独作業の危険性
単独作業は避けてください。槽内作業は必ず二人以上で行い、万が一に備えて常に他の人が近くで監視しましょう。
マンホール上での作業は一人でも可能ですが、槽内に入る際は必ず複数人で作業し、単独作業は避けましょう。
定期的な休憩が必要
初心者は作業ペースの調整が難しく、無理に急ぐと体力を消耗し、熱中症のリスクが高まります。
作業は定期的に休憩を取りながら進めましょう。
大型浄化槽内修理での安全対策のポイント
大型浄化槽内での作業では、有毒ガスである硫化水素に注意が必要です。硫化水素は腐った卵のような独特の匂いが特徴で、温泉の香りとしても知られています。
作業の安全性を確保するため、以下の点に注意してください。
- 硫化水素と酸素濃度の安全な測定方法
- 硫化水素濃度を正確に測定する方法
硫化水素と酸素濃度の安全な測定方法
確認事項 | 詳細 |
酸素濃度の基準 | 安全な作業環境には酸素濃度が最低18%以上必要 |
硫化水素濃度の基準 | 硫化水素濃度は10ppm以下であることが求められる |
通常の酸素濃度 | 通常の空気中の酸素濃度は約21% |
酸素欠乏症のリスク | 酸素濃度が18%未満になると、酸素欠乏症のリスクが生じる |
硫化水素のリスク(10ppm超え) | 目の刺激や気管支炎などの症状が発生する可能性がある |
硫化水素のリスク(350ppm超え) | 生命の危険が生じる |
硫化水素のリスク(700ppm超え) | 死亡のリスクが高まる |
特別教育の必要性 | 酸素欠乏や硫化水素の危険に対処するため、約5.5時間の学科講習が必要 |
教育の種類(1種) | 基本的な酸素欠乏対策の教育 |
教育の種類(2種) | 硫化水素中毒のリスクがある場合の高度な教育 |
硫化水素濃度の測定方法 | 硫化水素濃度を正確に測定するためには、専用の測定機器を使用する |
硫化水素濃度を正確に測定する方法
硫化水素検定器は硫化水素濃度を正確に測定するために使用します。作業開始前に複数箇所で濃度を測定し、安全を確認しましょう。
専門業者に浄化槽修理を依頼するメリット
浄化槽の修理は、安全で確実に行うために専門業者への依頼が最適です。専門知識と経験が必要なため、専門家に任せることをおすすめします。
ただ、修理内容や範囲によっては初心者でも対応可能な場合があります。
浄化槽補修の事例紹介
こちらは湧水の現場。
FRP樹脂とガラスマットで補強。
配管を取り付けて作業完了。
単独処理浄化槽の漏水現場
槽内にクラック(割れ目)が見られます。
FRP樹脂で補修後↓
消毒槽越流堰割れによる漏水
消毒槽の漏水修理では、越流堰に生じたヒビ割れが原因でした。ヒビ割れは何らかの負荷によって発生したものです。
修理にはFRPとコーキング材を使用し、割れた箇所を補修しました。