家庭の水環境を守る設備として、浄化槽があります。下水道が整備されていない地域では、浄化槽が生活排水の処理を担っています。
日常生活で発生する排水を微生物の力で分解・処理する仕組みです。この記事では、浄化槽の基本的な機能や導入メリットを解説します。仕組みを理解すると、環境への意識も高まります。
以下の動画でも解説しています。
トイレを流すとたどり着く場所

水洗トイレの最終処理場は、以下のとおりです。
- 下水道
- コミュニティ・プラント
- 浄化槽
家庭からでる汚水は、浄化槽で微生物によって分解・消毒され、側溝や河川へ放流されます。下水道が整備されていない地域では、多くの家庭が敷地内に浄化槽を設置しています。
浄化槽の歴史
1960年頃の高度経済成長期には、トイレの汚水のみを処理する単独処理浄化槽が普及しました。やがて、生活排水全体を処理できる合併処理浄化槽が導入され、主流となりました。
2000年以降は、単独処理浄化槽の新設が禁止されています。現在では合併処理浄化槽のみ設置が認められています。
浄化槽の仕組み

槽内での汚水処理は、4つの段階を通じて進みます。最初の「嫌気ろ床槽」では、ろ材が浮遊物を除去します。次に「接触ばっ気槽」で、好気性微生物が有機物を分解します。
続く「沈殿槽」では固形物が沈み、最後の「消毒槽」で塩素により消毒された水が側溝や河川に放流されます。
浄化処理を支えるのが「ブロワー」です。ブロワーは酸素を送り込み、微生物の活動を促進する役割があります。
浄化槽のメリット
浄化槽を使用するメリットは以下のとおりです。
- 下水道料金を削減できる
- 災害時も排水機能を維持できる
- 設置作業を短時間で完了できる
- 問題の特定と対処が容易になる
浄化槽を使えば、市町村への受益者負担金の支払いも不要になり、経済的なメリットがあります。
浄化槽から下水道に切り替えるには?

浄化槽には多くのメリットがありますが、定期的なメンテナンスが欠かせません。以下の動画でも解説しています。
下水道切り替えの課題
下水道へ切り替える際は、居住地域の自治体に確認が必要です。利用可能であれば「公共下水道使用開始届出書」を提出し、工事は専門業者に依頼します。
工事費は本管までの距離によって異なり、近い場合は約30万円、遠い場合は50〜100万円が目安です。
まとめ

浄化槽は水環境を守るうえで重要な設備です。微生物の働きで汚水を浄化し、環境にやさしい水へ処理します。水質の改善に貢献し、環境汚染の防止にもつながります。
浄化槽のメリットには、下水道料金を抑えられることや、地域全体の下水処理の負担を軽減できる点があります。適切に維持管理すれば、長期間にわたり安定して機能します。