浄化槽付きの中古住宅は事前に知識がないまま購入すると、維持管理の手間や予想外の出費が発生し、後悔します。
購入前にデメリットとその対策を把握することが大切です。浄化槽の仕組みを理解し、適切に管理すれば、安心して暮らせます。
この記事では浄化槽付き中古住宅のメリットとデメリット、購入前にチェックすべきポイントを紹介します。中古住宅の購入を検討する際の参考にしてください。
浄化槽付き中古住宅のデメリット5選と対策|購入前の注意点まとめ

浄化槽付き中古住宅のデメリット5選と対策は以下のとおりです。
- 古い浄化槽は修理・交換のリスク大|設置年数の確認は必須
- 悪臭・逆流・害虫発生などのトラブル
- 点検・清掃の法的義務がある
- 浄化槽の設置場所は駐車場や庭のリフォームに影響する
- 維持管理費が高いと感じる人もいる|下水道との違いに注意
古い浄化槽は修理・交換のリスク大|設置年数の確認は必須
設置から20年以上経過した浄化槽は槽内が劣化しているため、修理や本体の交換に数十万~150万円程度の費用がかかります。購入後すぐに高額な出費が発生する可能性もあるため、注意が必要です。
中古住宅の浄化槽は、設置から年数が経過しているケースが多く見られます。浄化槽本体は30年ほど、ブロワーやポンプなどの付属機器は10年ほどで交換が必要です。
とくに注意したいのが、トイレの排水だけを処理する「単独処理浄化槽」です。平成13年以降は新設が禁止されており、すべて設置から20年以上が経過しています。
単独処理浄化槽は台所や風呂などの雑排水を処理できません。悪臭や環境・衛生面のトラブルにつながるおそれがあります。
対策ポイント
中古住宅を購入する前に、浄化槽の設置年数や種類は必ず確認してください。設置から20年以上経過している場合は、専門業者に見積もりを依頼し、交換費用を事前に把握しておくと安心です。
単独処理浄化槽が設置されている住宅では、入居前に合併処理浄化槽への入れ替えを検討しましょう。住み始めてから交換する場合、宅内の配管工事や排水制限、仮設トイレの設置など、負担が大きくなります。
購入時やリフォーム時に工事を行うと、スムーズに対応できます。自治体によっては、合併処理浄化槽への交換や修理に補助金がでます。
補助の条件や金額は地域によって異なるため、購入予定地の市区町村に確認してください。
悪臭・逆流・害虫発生などのトラブル
浄化槽は微生物の力で排水を処理するため、管理を怠ると生活トラブルの原因になります。主なトラブルは以下のとおりです。
- 悪臭:微生物バランスの崩れから嫌な臭いが発生し周囲に影響する
- 排水の詰まり・逆流: 汚泥やスカムが溜まりすぎると排水不良や逆流を引き起こす
- 害虫の発生:浄化槽内の環境悪化はハエなどの害虫を呼び寄せる原因となる
上記のトラブルは、前任者の管理状況に大きく左右されます。
対策ポイント
中古住宅を購入する前に、前の所有者が浄化槽を適切に管理していたかを確認しましょう。管理記録が残っていれば、点検や清掃の実施状況を把握できます。
内見時には浄化槽周辺で臭気や害虫が発生していないか、目視でのチェックも重要です。とくに長期間空き家だった住宅では、浄化槽の機能が低下している可能性があります。
正常に稼働するまでに時間がかかることもあるため、購入前に稼働状況を確認しておくと安心です。
点検・清掃の法的義務がある
浄化槽は法律により、定期的な維持管理が義務付けられています。維持管理の責任は、住宅の所有者である浄化槽管理者が負います。
浄化槽法で定められている主な義務は、以下のとおりです。
- 保守点検:専門業者による年3回以上の保守点検
- 清掃:専門業者による年1回以上の汚泥引き抜き清掃
- 法定検査(水質検査):都道府県知事指定の検査機関による年1回の水質検査
維持管理を怠ると、浄化槽が正常に機能しなくなるだけでなく、行政指導や罰則の対象となります。初めて浄化槽を使用する場合は、浄化槽管理者としての義務を正しく理解しておくことが重要です。
対策ポイント
不動産会社を通じて、過去の保守点検・清掃・法定検査の記録を確認し、適切に維持管理されていたかを把握しましょう。
浄化槽の設置場所は駐車場や庭のリフォームに影響する
浄化槽は地中に設置されているため、設置場所によっては将来のリフォーム計画に影響を与えることがあります。
庭の改修やカーポート、ウッドデッキ、フェンスの設置を検討する際、浄化槽が支障になる場合があります。
点検や清掃を行うためにメンテナンス用の動線を確保しておく必要があります。構造物や舗装でふさいでしまうと、作業に支障がでます。
対策ポイント
購入前に、浄化槽の位置やフタ、配管の場所を確認しておきましょう。周囲で使用できない範囲(車を載せられない・通れない・掘れない場所)を把握することが重要です。
あわせて、不動産会社や施工業者に、増築・外構・植栽・舗装など、どのような工事に影響があるかを確認しておくと安心です。
すぐにリフォームの予定がなくても、あらかじめ制約を把握しておくことで、将来の計画が立てやすくなります。
維持管理費が高いと感じる人もいる|下水道との違いに注意
浄化槽には、下水道料金とは異なる維持管理費用がかかります。この費用が「高い」と感じるかは、下水道との違いで感じ方が異なります。
浄化槽の年間維持費は、保守点検・清掃・法定検査を含めて、5人槽で約5~10万円が目安です。下水道ではこれらの費用が使用料に含まれていますが、浄化槽では個別に支払う必要があり、出費として目立ちやすくなります。
ただし、下水道使用料がかからない分、地域や家族構成によっては、年間の総コストが下水道と大きく変わらない場合もあります。一方で、浄化槽は故障が発生すると修理費用が必要になり、これが下水道との大きな違いです。
対策ポイント
不動産会社や管理業者に依頼し、購入予定の住宅にかかる年間の維持費(点検・清掃・法定検査・電気代など)を試算してもらいましょう。
あわせて、将来的に必要となるブロワーの交換費用や本体の入れ替え費用も確認し、長期的なコストを把握しておくことが大切です。
浄化槽付き中古住宅のメリット3選

浄化槽付き中古住宅のメリット3選は以下のとおりです。
- 下水道未整備でも安心して暮らせる
- 水を多く使う家庭ほど、浄化槽のほうが経済的になる
- 災害時でもトイレが使える
下水道未整備でも安心して暮らせる
浄化槽付き住宅であれば下水道が整備されていない地域でも、衛生的で快適に暮らせます。自然が多い場所に住みたい方や、都市部より静かな環境を求める方にとって、大きな魅力です。
下水道の整備を待つ必要がないため、希望エリアでの中古住宅の選択肢が広がります。価格と環境のバランスをとりながら、理想の住まいを見つけやすくなります。
水を多く使う家庭は浄化槽のほうが経済的になる
下水道使用料は、水道の使用量に応じて増える従量制が一般的です。浄化槽の維持費は水の使用量とは直接関係しません。水の使用量が多い家庭では、トータルコストで浄化槽のほうが安くなります。
たとえば、庭の水まきや洗車など、実際には下水に流れない水でも下水道使用料は上がりますが、浄化槽は影響しません。
ただし、世帯人数が多いと浄化槽の容量や清掃回数が増えることがあるため、事前に維持費を比較・検討しておくことが重要です。
災害時でもトイレが使える
地震や大雨で下水道管が損傷すると、広い範囲で排水が停止し、トイレが使えなくなります。
浄化槽は個人の敷地内で浄化処理が完結する独立型の設備です。配管の被害が限定的で、災害時も比較的影響を受けにくい特長があります。
ただし、停電でブロワーが停止したり、浄化槽が破損したりすると、使用に制限が出ることがあります。地域全体が停止する下水道と比べて、個別に復旧しやすいため、非常時の安心材料の一つと言えるでしょう。
浄化槽付き中古住宅購入前に必ず確認!浄化槽チェックリスト5項目
浄化槽チェックリスト5項目は以下のとおりです。
- 浄化槽の設置年数・種類の確認
- 浄化槽の点検・清掃・法定検査・メンテナンス履歴の確認
- 年間維持費の目安
- 下水道整備予定と切替費用
- 現地での目視チェック
浄化槽の設置年数・種類の確認
- 設置年月日
- 図面で型式を確認
- 種類(単独処理/合併処理)
- 人槽(敷地面積で決まる)
浄化槽の点検・清掃・法定検査・メンテナンス履歴の確認
- 保守点検報告書
- 清掃記録
- 法定検査結果通知書
年間維持費の目安
- 点検・清掃・検査費・ブロワー電気代の総額を確認
- 修理・交換費の概算を確認
下水道整備予定と切替費用
自治体に問い合わせ、下水道整備計画を確認
現地での目視チェック
専門的な内容も含まれますが、可能な範囲ご自身の目で確認してみましょう。少しでも不安な点があれば、保守点検業者などの専門家に相談するのが安心です。
- マンホールの割れ、錆はないか
- ブロワーの型式・年式・設置場所(雨ざらし・直射日光の有無)
- 通気管や配管勾配の確認
- 地面の沈下・ひび割れはないか
- 清掃車の導線は確保されてるか、駐車スペースはあるか
- ブロワーの動作音や振動の異常はないか
- ポンプの設置の有無
- ポンプの型式・年式(古いと交換のタイミングが近い)
- ポンプの動作音や振動の異常
- 雨水や湧水の侵入跡はないか
- マンホール周辺や建物裏での臭気・虫の発生はないか
- 浸透桝や側溝の水はけや臭気はないか
浄化槽の基礎知識
浄化槽の基礎知識は以下のとおりです。
- 浄化槽とは何か?|仕組みと役割
- 下水道との違いと維持費の目安
- 下水道生活との違い|使い方にも意識が必要
浄化槽とは何か?|仕組みと役割
浄化槽は、下水道が整備されていない地域で生活排水を処理するための設備です。地中に埋められた槽の中で微生物が汚水を分解し、きれいな水にして放流します。
都市部では下水道が一般的ですが、郊外や地方では今も浄化槽が生活に欠かせない役割を果たしています。
下水道との違いと維持費の目安
下水道は、敷地外の排水管以降を自治体が一括で管理する公共の仕組みです。住民は下水使用料を支払うだけで、設備の維持や点検を自分で行う必要はありません。
浄化槽は自主管理の設備であり、設置から点検・清掃・修理まで、土地の所有者が行う必要があります。この違いは、下水道エリアから住み替える際に特に注意すべき点です。
浄化槽の維持管理費は、毎年かかる固定費として見逃せません。
浄化槽の種類や人槽、地域によって異なりますが、5人槽の場合、年間の目安は約5~10万円です。さらに、機器の交換費用や故障時の修理費用が別途かかることもあります。
維持管理費用の内訳は以下のとおりです。(5人槽の場合)
| 項目 | 頻度・年間費用 |
| 保守点検 | 年3〜4回 / 約2万円〜4万円 |
| 清掃 | 年1回 / 約2万円〜4万円 |
| 法定検査(11条検査) | 年1回 / 約5千円 |
| ブロワー・放流ポンプ電気代 | 常時使用 / 数千円〜2万円 |
» 【基礎知識】浄化槽利用者や導入する前に知るべき維持管理について徹底解説!
下水道生活との違い|使い方にも意識が必要
浄化槽は家庭ごとに設置される小規模な処理設備のため、流すものの影響を受ける特徴があります。
一方、下水道は地域全体の排水をまとめて処理する大規模な設備であり、家庭単位の排水は平均化されるため、個別の影響は小さくなります。
浄化槽では油や洗剤、固形物を多く流すと、処理に関わる微生物の働きが弱まり、悪臭や機能低下の原因になります。
浄化槽のある暮らしでは、設備を意識して丁寧に使うことが大切です。
» 【浄化槽と下水道比較】メリット・デメリット・費用について解説!
浄化槽付き中古住宅に向いている人・向いていない人

浄化槽付き中古住宅に向いている人・向いていない人について以下で解説します。
維持管理のコストや手間を理解して購入を検討できる人
中古住宅は本体価格が安くても、点検や清掃などの維持費が定期的にかかるため、総費用を事前に把握しておくことが大切です。
浄化槽は放置できない設備のため、点検時期を管理し、業者との連絡や日程調整を行える人に向いています。
広い土地や自然の多い暮らしを楽しみたい人
郊外や田舎など自然に囲まれた地域では、浄化槽の利用が一般的です。広い土地や静かな環境を重視する人には適しています。最近は、都会を離れて田舎でDIYを楽しむ暮らしも注目されています。
ランニングコストや管理の手間を暮らしの一部として受け入れられる人
定期点検や維持費を「住まいを維持する習慣」として前向きに受け入れられる人は、浄化槽付きの中古住宅でも長く快適に暮らせます。
浄化槽付き中古住宅に向いていない人
浄化槽付き中古住宅に向いていない人は、以下のとおりです。
- 「安い」だけの理由で中古物件の購入を決めてしまう人
- 定期的な費用や手間を負担に感じる人
- 排水の扱いを意識できない人
「安い」だけの理由で中古物件の購入を決めてしまう人
中古物件は購入時の初期費用が安くても、修理費や維持管理費を見落とすと、結果的に総費用が高くなります。
定期的な費用や手間を負担に感じる人
浄化槽は、点検・清掃・検査などを年間を通じて行う必要があり、維持管理に手間がかかります。これを生活の一部として受け入れられない場合、負担に感じます。
排水の扱いを意識できない人
浄化槽は家庭で使った排水を微生物の力で処理します。そのため、薬品や油、流してはいけないものを流すと処理能力が落ちます。日常的に使い方に注意できない人には適していません。
まとめ|浄化槽付き中古住宅は「理解して選ぶと安心」
浄化槽付きの中古住宅を購入する際には、管理や費用などに注意が必要です。浄化槽の仕組みや維持管理の流れを理解し、定期的な点検・清掃を行うことが、安心して暮らすためのポイントとなります。
中古住宅を購入する前に、浄化槽の種類や状態をしっかり確認することが大切です。事前に把握しておけば、購入後の思わぬ出費やトラブルを防げます。
浄化槽の仕組みを理解し、適切に管理すれば、安心して使用できます。メリットとデメリットをふまえ、自分のライフスタイルや住環境に合った住宅を選ぶと、満足度の高い住まいが見つかります。

