バキュームカー運転手の仕事内容や給料が気になる方は多いです。この仕事は「3K」と呼ばれることもありますが、実際の現場はどうなのか。
本記事では、7年間バキュームカー運転手としての経験を持つ筆者が、仕事内容や給料の実態を解説します。
記事を読むことで、業務の詳細や業界の魅力について理解できます。
バキュームカー運転手の給与について
バキュームカーの運転手の平均年収は約400万円です。以下の表は一例であり、参考程度にご覧ください。
項目 | 詳細 |
平均年収 | 20代:350〜430万円 30〜40代:400〜500万円 50代:400〜800万円 |
月給の目安 | 25〜50万円 |
給与の特徴 | 比較的高い給与水準が維持され、待遇や福利厚生が良好な会社が多い。年齢や経験に応じた昇給傾向がある |
待遇 | 昇給・賞与制度、各種手当(住宅手当、扶養手当など) |
給与に対する評価は人それぞれで、高いと感じる人もいれば、低いと感じる人もいます。わたし自身は満足していますが、他業者の話を聞くと、まだまだ低いなと感じます。
経営者の方々へ、業績が好調であれば給与の引き上げを検討してください。給与の改善は優秀な人材の確保や離職率の低下につながります。
汚水処理施設は定時で閉まるため、残業はほとんどありません。多くの企業では土日祝日が休みで、安定した労働環境です。
待遇や福利厚生が充実している会社も多い点も大きな魅力です。
バキュームカーの仕事内容
バキュームカーの仕事内容や特徴は、以下のとおりです。
- 浄化槽やくみ取り便所の吸引作業
- 3K:キツイ、臭い、汚いと言われる
- バキュームカー作業に求められる体力
浄化槽やくみ取り便所の吸引作業
バキュームカーの業務は、くみ取り便所や浄化槽の定期清掃です。槽内を清潔に保ち、次回の清掃日まで快適に使用できる状態を維持します。
トイレ詰まりなどの緊急トラブルにも対応します。し尿や生活排水をタンクに収集し、汚水処理場へ運ぶのが基本の作業です。
バキュームカーは通常の2t車より重く、運転には準中型または中型免許が必要です。
3K仕事?でも実際は…
この仕事は「キツイ・臭い・汚い」の3Kと見られがちです。実際には浄化槽の作業でそう感じる場面は少ないです。慣れもあるかもしれません。
お客様から「キレイにしてくれてありがとう」と感謝されることが多く、やりがいを感じられます。お客様との豊富なコミュニケーションも魅力の一つです。
バキュームカー運転手は、インフラや環境衛生を支える重要な役割を担っています。
作業に求められる体力は?
バキュームカーの作業は、他の肉体労働と比べて体力的負担が少なめです。ホースの扱いに慣れると、さらに楽になります。
主に力を使う場面として、以下の作業が挙げられます。
- マンホールの開閉時
- サクションホースを引っ張る作業時
- 大ホースの取り扱い時
バキュームカーの作業は女性でも一人でこなせることが多く、体力が理由で辞めるケースはほとんどありません。
退職の主な理由として挙げられるのは、人間関係の問題が多いです。
バキュームカー作業中のニオイについて
バキュームカーのニオイや作業中については、以下を参考にしてください。
- バキュームカーのニオイについて
- 槽内の状態を見ると生活環境がわかる
- 最もニオイがきつい現場
バキュームカーのニオイについて
バキュームカーのニオイは昔より改善されていますが、完全な無臭化は難しいです。
感じ方には個人差があり、苦手な方には厳しい場合もあります。ただし、多くの人は1か月ほどで慣れ、気にならなくなります。
作業中、小学生が「臭い」と言いながらも笑顔で寄ってくる場面もよくあります。
「作業員やバキュームカーが臭くなる」というのは都市伝説です。運転席は無臭で、他のトラックと変わらないので安心してください。
体にニオイが染みつくんでしょ?
体に臭いが染み付くこともありません。注意して作業すれば、汚泥の付着は防げます。
槽内の状態を見ると生活環境がわかる
現場経験を積むことで、ニオイや汚泥の状態から、生活習慣や健康状態を推測できます。以下の表を参考にしてください。
槽内の状態 | 改善点 |
汚泥の蓄積や油量が多い | 使用頻度が多いか、食べ残しや油を流している |
異物の混入 | ビニールやプラスチック片など、分解しにくい異物を流している |
水質の状態 | 濁りや異臭がある場合、ブロワーの故障を放置している |
微生物の活性度 | 洗剤の過剰使用で、微生物の活性が低下している |
生活習慣 | 食べ残しや油の適切な処理、洗剤や薬品の使用の見直しが必要 |
最もニオイがきつい現場
糖尿病患者がいる家庭や油を多く使う環境では、特有のニオイが発生します。尿中に糖分が増えると発酵臭が生じます。
糖分や油の過剰な流入は槽内の微生物バランスを崩し、処理能力が低下します。
ニオイを防ぐためには、以下の対策が有効です。
- 浄化槽清掃の頻度を定期的に増やす
- 糖尿病患者は血糖値管理を徹底する
- 油を使った後は必ず油分を拭き取る
バキュームカー作業の注意点
作業時の注意点は以下のとおりです。
- バキュームカー業務の7割は運転
- バキュームカー作業のコックの注意点
バキュームカー業務の7割は運転
バキュームカーの業務は主に運転が中心で、「安全運転」が最も重要です。山道や狭い道を通ることで、運転技術が自然と向上します。
作業中はサクションホースが動くため、取り扱いに注意が必要です。通行人やお客様の花壇などを傷つけないよう細心の注意を払います。
作業は多くの場合、2人1組で行います。一人が吸引作業を担当し、もう一人がサポートを行います。
単独作業ができる場合は、自分のペースで進められるため、人間関係によるストレスが少ないのもメリットです。
タンクが満杯になると汚水処理場へ向かいます。処理場では洗車が可能なため、バキュームカーは清潔な状態で次の現場に向かえます。
コック開閉作業の注意点
バキュームカーの操作は直感的でシンプルです。レバーを左に倒すと吸引、右に倒すと排出が行えます。
コック開閉の注意点は以下のとおりです。
- コックを開いて排出をかける
- 圧が掛かっている場合は中立にする
- コックの開閉に異常を感じたら作業を中止する
排出作業時は、必ずコックを開けてください。タンク内が高圧状態になるため、コックを開けずに排出すると汚泥が飛び散る危険があります。
コックを開け忘れた場合は、レバーを中立に切り替え、圧力を抜いてからコックを開いて作業を再開してください。
排出方法は、先輩が真っ先に教えてくれます!
圧力計は定期的に確認し、異常な圧力上昇がないか注意が必要です。コックの開閉は慎重に行い、急な操作は避けましょう。
コックに違和感を感じた場合は、作業を中断してください。異物が詰まっている可能性があります。移動時には必ずコックを閉めてから移動するよう徹底しましょう。
元作業員が教える!作業で気を付けるべき5つのポイント
浄化槽の清掃作業は一見単純に見えますが、実際には技術と注意が必要です。以下の5点に気をつけましょう。
- 周囲の安全確認
- 汚水の飛散
- ホースの詰まり
- 槽内への転落防止
- 型式に合った清掃手順
周囲の安全確認
作業前には歯止めを行い、作業区画をコーンやバーで明確に区切ります。作業員の安全を確保し、周囲への影響を最小限に抑えられます。安全確認は作業効率よりも優先すべきポイントです。
汚水が付着する
トイレットペーパーを多く使用する家庭では、紙が水分を吸収し、汚泥が乾燥して吸引しづらくなります。
ホースを差し込むだけでは吸引できず、技術が求められます。清掃作業では吸引と排出を繰り返し行います。
排出が難しい場合は水道水を使って水分を加えましょう。排出時は汚れが跳ね返り服に付着する可能性があるため、十分注意してください。
実際の清掃方法を、以下で紹介しています。
浄化槽清掃の手順
浄化槽清掃では、作業前に周囲の状況を確認し、衛生面を考慮してゴム手袋を着用します。ホースを挿入する際は、角度や深さに注意が必要です。
効率的に吸引するため、ホースを回転させたり、前後に動かすなど工夫します。作業は現場の状況に応じて臨機応変な対応を心掛けましょう。
ホースの長さと詰まり対策
ホースの長さは現場によって異なり、約10〜70mと幅があります。バキュームカー運転手の好みや現場条件に応じて調整しています。
長距離の作業が必要な場合は、2台のバキュームカーを使い、ホースを連結して100m以上にすることもあります。
ホースが長くなると吸引力が低下し、作業時間が延びます。
現場の状況や立地によっては、作業に1時間以上かかることがあります。ホースの詰まりは一度は経験します。
慌てずエアーを噛ませることで効率よく吸引可能です。急いで作業を進めると詰まりやすい点に注意が必要です。
ホース先端で詰まる場合、汚れが飛び散ることがあるため、タオルをあてて飛散を防ぎます。詰まりを防ぐには吸引技術の向上と経験の積み重ねが必須です。
槽内への転落防止
浄化槽清掃作業では、槽内への転落防止が重要です。清掃時に水を使用するため、足元が濡れて滑りやすくなります。
現場によってはコケや泥がある場合もあるため、足元に注意しながら安全に作業を進めましょう。
型式に合った清掃手順を守る
浄化槽にはさまざまな型式があります。清掃方法を誤ると仕切り板が破損したり、ろ材が落下するなど、浄化槽が損傷する可能性があります。
清掃方法が分からない場合は、浄化槽の維持管理要領書を確認しましょう。型式名に「維持管理要領」を加えて検索すると、必要な情報が見つかります。
古い浄化槽では維持管理要領書がない場合があります。その場合は、製造メーカーに直接問い合わせて確認しましょう。
まとめ|バキュームカーの魅力について
バキュームカー運転手の仕事は大変ですが、やりがいと充実感があります。お客様から直接感謝される機会が多く、大きな励みになります。
チップや飲み物、食べ物を頂くこともあり、心温まる瞬間が多いのも特徴です。
毎日異なる現場で作業するため、新鮮な気持ちで仕事に取り組めます。地図を使って移動することで、自然と地理の知識も深まります。
一人の時間も多くあり、浄化槽業界は他の業種に比べて自由度が高い職業です。浄化槽の仕事に興味を持つ方やキャリアを考えている方の参考になれば幸いです。