浄化槽基礎知識

【水質悪化と臭気の原因】小型浄化槽の水質改善方法と微生物の役割を解説!

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家庭や小規模施設で使われる浄化槽は、生活排水を処理する重要な設備です。維持管理をしないと、微生物の働きが低下し、処理能力が落ちます。

水質をきれいに保つには、微生物の働きを理解し、維持管理することが大切です。

本記事では、嫌気性・好気性微生物の役割や、洗剤が浄化槽に与える影響、水質改善のポイントについて解説します。

適切な維持管理で清潔な水環境を守りましょう。以下の動画では、浄化槽の基礎知識をわかりやすく紹介しています。

浄化槽の水質を改善する方法

水質を改善する方法

浄化槽の水質を維持するには、微生物が適切に活動できる環境を整えることが重要です。

以下の対策を実施しましょう。

  • 微生物を活性化させる
  • 水質悪化の原因と対策

微生物を活性化させる

浄化槽は、微生物の働きによって汚水を分解・処理します。微生物が効率よく働くためには、以下の管理が欠かせません。

エアレーションの調整
供給する空気量(風量)が不足すると微生物の働きが鈍り、有機物が分解されません。逆に、多すぎると微生物のバランスが崩れます。
ブロワーを定期的に点検し、適切な空気量を確保しましょう。
水温管理
冬場は水温が下がると、微生物の活動が鈍ります。シーディング剤の投入は、処理能力を維持するのに役立ちます。
汚泥管理
汚泥が過剰に蓄積すると、処理機能が低下します。年に1回以上の清掃を行いましょう。

水質悪化の原因と対策

水質が悪化する主な原因は、以下のとおりです。

洗剤や薬品の影響
塩素系漂白剤や抗菌成分を多用すると、微生物が死滅します。界面活性剤の少ない洗剤を選び、排水時は水で薄めましょう。油を流すのもNGです。
汚泥の蓄積
汚泥がたまると処理能力が低下します。定期的に清掃が必要です。
曝気装置の故障
故障すると酸素が供給されず、微生物の働きが弱まります。ブロワーや配管を点検しましょう。
大量の水流入
大量の水が流れ込むと処理が追いつかず水質が悪化します。使用量を調整しましょう。

» 泡が発生する原因

単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違い

浄化槽には、単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の2種類があります。処理する排水の種類が異なります。

それぞれの違いは以下のとおりです。

  • 単独処理浄化槽はトイレの排水のみ処理できる
  • 合併処理浄化槽は生活排水全般を処理できる

単独処理浄化槽はトイレの排水のみ処理できる

単独処理浄化槽は、トイレの排水のみを処理する浄化槽です。

キッチンや風呂の排水を処理しないため、環境汚染のリスクが高くなります

現在は新規設置が禁止され、下水道や合併処理浄化槽への転換が推奨されています。

» 単独処理浄化槽の種類について

合併処理浄化槽は生活排水全般を処理できる

合併処理浄化槽は、トイレの排水に加え、キッチンや浴室などの生活排水も処理できる浄化槽です。

処理能力が高く、放流水の水質を改善できるため、現在の主流になっています。

単独処理浄化槽の水質改善方法

単独処理浄化槽は、トイレ排水のみを処理します。

生活排水が混入しないため、アンモニアや窒素成分の濃度が高くなります。

水質を改善するには、以下の方法が有効です。

  • 微生物の活性化
  • 臭気対策
  • 定期的な汚泥引き抜き

微生物の活性化

単独処理浄化槽では、ばっ気管理が重要です。好気性微生物を活発にするため、ブロワーを適切に運用しましょう。

フィルターの詰まりを定期的に点検し、酸素供給が不足しないよう管理することが大切です。

臭気対策

臭気対策

単独処理浄化槽はアンモニア濃度が高く、臭気が発生しやすい点が課題です。脱窒菌を活発にするには、pHを6.5~8.0付近に維持することが重要です。

シーディング剤を投入すると、処理能力の向上が期待できます。

» 臭気の原因5選と対策

定期的な汚泥引き抜き

単独処理浄化槽は、汚泥が蓄積すると処理能力が低下します。年に1回以上汚泥を引き抜き清掃し、処理効率を維持しましょう

» 浄化槽清掃の流れ詳細

合併処理浄化槽の水質改善方法

合併処理浄化槽は、トイレ排水に加えて生活排水も処理するため、処理負荷が大きくなります。

台所や浴室の排水に含まれる油分や洗剤は、水質悪化の原因になります。水質を改善する方法は、以下のとおりです。

  • 油分の流入を防ぐ
  • 浄化槽に適した洗剤を使用する
  • 定期的に清掃とメンテナンスを行う

油分の流入を防ぐ

合併処理浄化槽では、台所排水の油分が微生物の働きを阻害します。

油は直接流さず、キッチンペーパーで拭き取ってから排水し、浄化槽の負荷を軽減しましょう。

浄化槽に適した洗剤を使用する

浄化槽に適した洗剤を使用する

洗剤に含まれる界面活性剤や抗菌成分は、微生物の活動を低下させます。

生分解性の高い中性洗剤や「浄化槽対応」の洗剤を使用し、大量の使用は控えましょう

» 浄化槽対応製品10選

定期的に清掃とメンテナンスを行う

合併処理浄化槽は単独処理浄化槽より点検箇所が多いです。

ブロワーの動作確認や汚泥の定期的な引き抜き清掃、水質チェックを行いましょう。

浄化槽の仕組みと微生物の役割

浄化槽の仕組みと微生物の役割

浄化槽は微生物の働きによって汚水を浄化・処理します。

嫌気性微生物と好気性微生物が異なる役割を担い、有機物や窒素を分解します。両者の違いは以下のとおりです。

  • 嫌気性微生物の働き
  • 好気性微生物の働き

嫌気性微生物の働き

嫌気性微生物は、酸素なしで有機物を分解する細菌群です。浄化槽の嫌気槽で活動し、有機物をメタンガスや二酸化炭素に変えて固形物を分解します。

一部の菌は硝酸や亜硝酸を窒素ガスに変える脱窒作用を行い、窒素除去に貢献します。

嫌気性微生物が適切に働くには、酸素のない環境を維持することが重要です。

好気性微生物の働き

好気性微生物は、酸素を使って有機物や窒素を分解する細菌群で、ばっ気槽で活動します。

有機物を二酸化炭素と水に分解し、水質を改善します。硝化菌がアンモニアを硝酸に変え、窒素の除去を促します。

好気性微生物が効率よく働くには、酸素供給が必要です。ブロワーのばっ気量が不足すると活動が低下し、水質が悪化します。

» ブロワーの役割詳細

浄化槽にやさしい洗剤の選び方

浄化槽に優しい洗剤の選び方

日常使用する洗剤は、浄化槽の水質に影響を与えます。微生物の活動を妨げない洗剤を選ぶことで、水質の悪化を防げます。

避けるべき洗剤とおすすめの洗剤は、以下のとおりです。

  • 避けるべき洗剤
  • おすすめの洗剤

避けるべき洗剤

塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)や抗菌成分(トリクロサンなど)を含む洗剤は、微生物の働きを阻害します。

大量の強酸性・強アルカリ性の洗剤は、pHバランスを崩し、微生物の活動を低下させる原因です。

おすすめの洗剤

浄化槽には、生分解性の高い中性洗剤や「浄化槽対応」と記載された製品が適しています

クエン酸や重曹を使った洗剤も、微生物にやさしい洗浄方法として注目されています。

水質を良好に保つには、微生物の働きを活かし、適切に維持管理することが重要です。

» 浄化槽対応製品10選

まとめ

清潔で安全な水環境を維持

浄化槽の水質を維持するには、微生物の活動を理解し、維持管理することが重要です。浄化槽の使い方も水質に大きく影響します。

正しい管理と使用を心がけ、清潔で安全な水環境を維持しましょう。

» 川をきれいにする理由

ABOUT ME
いなかの浄化槽
いなかの浄化槽
わたしは、浄化槽業界に10年以上携わる現役の浄化槽管理士です。「浄化槽をもっと身近に、浄化槽の仕事が好きになる」をコンセプトに、ブログやSNSで情報を発信しています。 浄化槽は、主に下水道が整備されていない地域で活躍する重要なインフラ設備です。微生物の働きを利用して汚水を浄化する仕組みで、適切な維持管理が欠かせません。 維持管理には、浄化槽管理士、清掃員、検査員、そして浄化槽所有者の協力が必要です。浄化槽の役割や正しい使用方法を多くの方に伝える活動に取り組んでいます。
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