「浄化槽から不快なニオイがする」とお困りではないでしょうか。ニオイは不快なだけでなく、浄化槽の異常を示すサインです。
この記事では、浄化槽の仕組みや微生物の役割、ニオイの原因と対策を解説します。適切な対策で浄化槽の機能が正常に戻り、ニオイの改善が期待できます。
原因を理解し、快適な生活環境を手に入れましょう。ニオイの原因は以下のとおりです。
- 浄化槽本体や配管の経年劣化
- 槽内の汚れや堆積物の蓄積
- 排気管や通気孔の詰まり
- 微生物への酸素供給不足
- 廃棄物や油脂による悪臭
- マンホールの隙間からのニオイ
以下の動画でもわかりやすく解説しています。
浄化槽の仕組みと微生物の役割
浄化槽の役割と仕組みは以下のとおりです。
- 浄化槽の目的は水質の浄化
- 嫌気性微生物は酸素を嫌う浄化槽の主役
- 好気性微生物が活性化し浄化を促進する
浄化槽の目的は水質の浄化
浄化槽は、下水道が未整備の地域で生活排水を処理し、公共用水域の水質を保護するための設備です。
浄化槽の機能には、有機物を分解・浄化する主に2種類の微生物が重要な役割を担っています。
以下に、槽内での汚水処理の流れを説明します。
- 嫌気ろ床槽1室で基本的な分解を行う
- 嫌気ろ床槽2室でさらに分解・処理を行う
- ばっ気槽で微生物が水中の窒素を還元する
- 消毒槽で微生物や大腸菌を滅菌し放流する
嫌気性微生物|酸素が嫌いな浄化槽の主役
嫌気性微生物は酸素を必要としない微生物です。
嫌気ろ床槽には微生物が生息できる「ろ材」が設置され、汚水が通過する際に微生物が固形物を分解し、水を浄化します。
以下の動画もご覧ください。
好気性微生物|活性化する役割
好気性微生物は酸素を必要とし、酸素のない環境では生存できません。
嫌気ろ床槽の1室と2室を通過した汚水は、次にばっ気槽へ移送されます。ブロワーから空気が供給され、好気性微生物が汚水中の有機物を分解します。
空気を送る機器をブロワーと呼びます。
浄化槽の悪臭の原因と解決法
ニオイ問題を解決するためには、原因を知ることが重要です。ニオイの主な原因は、以下のとおりです。
- 悪臭の原因は槽内で発生するガス
- 油や食べカスが処理能力を超えてしまう
- ブロワー故障や風量不足で浄化機能が低下する
- 保守点検を怠ると汚れが溜まり臭いが発生する
- マンホール破損がニオイの原因になる
- 害虫の排泄物や死骸も悪臭の原因
- 新築やリフォーム時でも臭いが発生する
ニオイの原因はガス|槽内のメカニズム
浄化槽からのニオイの原因は、し尿から発生するアンモニアや硫化水素などのガスです。
アンモニアは刺激的なニオイを放ち、硫化水素は腐った卵やタマネギに似た独特のニオイが特徴です。
以下の動画で、ガスの発生過程を確認できます。
油や食べカスを含む汚水は処理能力を超えてしまう
浄化槽に油や食べカスを含む汚水が流れ込むと、処理能力を超え、不十分な処理が悪臭の原因になります。油脂や食べカスは分解が難しいためです。
家庭や飲食店では、油を流さず、食べカスを事前に取り除くことが重要です。定期的な清掃やメンテナンスで浄化槽のトラブルや悪臭を防げます。
ブロワー故障や風量不足で浄化機能が低下している
ブロワーが故障して風量が不足すると、槽内の酸素供給が不足し、処理機能が低下します。悪臭や水質悪化が発生します。
ブロワーの修理や交換で適切な風量を確保することが重要です。
ブロワー交換時には一時的にニオイが発生するため、シーディング剤の使用がおすすめです。
シーディング剤は、微生物のバランスを整え、悪臭の原因となる物質を分解し、脱臭効果があります。
保守点検や清掃を怠ると汚れが溜まり、臭いが発生する
浄化槽の機能を維持し、ニオイを防ぐには、定期的な保守点検と清掃が必要です。清掃を怠ると、槽内に汚泥が過剰に蓄積し、浄化槽の性能が低下します。
微生物の活動が弱まり、水質にも悪影響を及ぼします。保守点検を怠ると、浄化槽が本来の機能を十分に発揮できなくなります。
マンホール破損がニオイの原因
マンホールの耐用年数は使用状況によりますが、目安は約10年です。破損すると、槽内の悪臭が外部に漏れ出す原因となります。
ヒビ割れや蓋のズレ、老朽化が進むとガスが漏れ、悪臭の原因になります。破損が見られた場合は、早急に修理や交換が必要です。
害虫の繁殖で排泄物や死骸が悪臭の原因になる
浄化槽内は一年中暖かく、害虫が繁殖しやすい環境です。マンホールの隙間から侵入した害虫が槽内や周辺で繁殖すると、排泄物や死骸が溜まり悪臭の原因となります。
害虫発生を防ぐため、浄化槽周辺を清潔に保つことが重要です。
害虫対策には、殺虫プレート「バポナ」が効果的です。槽内に設置すると、約3か月間殺虫ガスが持続し、害虫を駆除します。
新築・リフォームでもニオイは発生する
新設の浄化槽でも、微生物環境が整うまで約6か月かかるため、ニオイが発生することがあります。
「シーディング剤」を使うと、微生物の活動が活性化し、ニオイを抑えられます。
正しい浄化槽の使用方法
ニオイの原因について解説しましたが、浄化槽を正しく使うことが重要です。以下にポイントをまとめました。
- 浄化槽にはトイレットペーパー以外流さない
- 洗剤使用には要注意!浄化槽への影響もある
- 浄化槽管理者の責任と義務を理解する
流していいのはトイレットペーパーだけ|浄化槽の正しい使い方
浄化槽に流して良いものは、トイレットペーパーのみです。
トイレットペーパーは水に溶けやすく設計されています。ティッシュやウェットティッシュは溶けにくく、槽内で詰まりるため、流してはいけません。
トイレットペーパー以外をトイレに流すと、詰まりや故障の原因になります。
「流せる〇〇」も詰まりを引き起こすため、使用後はゴミとして処分しましょう。
以下の動画では、トイレットペーパーとティッシュの溶けやすさの違いを実験しています。
洗剤選びで決まる|浄化槽にやさしい製品
強力な洗剤や漂白剤を多用すると、槽内の微生物がダメージを受け、処理能力が低下します。
環境にやさしい中性洗剤や浄化槽対応洗剤を使えば、微生物を守りながら洗濯ができます。
適量を守れば、洗剤が浄化槽に悪影響を与えることはありません。洗剤の過剰使用は避けましょう。
中性洗剤や酸素系洗剤を使うと、微生物への影響を抑え、槽内環境を維持できます。
浄化槽の必須知識|所有者の責任と義務
浄化槽の維持管理には、「法定検査、保守点検、清掃の実施」が法律で義務付けられています。維持管理により、ニオイの発生を抑え、快適な生活環境を保っています。
維持管理は所有者の責任であり、持続可能な環境を守るためにも欠かせません。
浄化槽を快適に保つためのポイント
ニオイ問題を放置すると悪化し、周囲にも迷惑がかかります。定期的な維持管理と対策で、問題を未然に防ぎましょう。
点検や清掃を行い、トラブルが発生した際は迅速に対応することで、清潔で快適な生活環境を保てます。