浄化槽の維持管理費用は年間いくら?5人槽の目安と修繕費の積み立て額
下水道のない地域では浄化槽が生活排水をきれいに処理して河川へ放流します。
これから浄化槽を使う方は維持管理の費用が特に気になるでしょう。浄化槽は設置して終わりではありません。
保守点検・清掃・法定検査が義務づけられていて毎年一定の費用がかかります。年数がたつと部品交換や修繕の費用も必要です。
この記事では浄化槽管理士歴10年以上の私が浄化槽にかかる費用を解説します。維持管理費の内訳や消耗品・修繕費をいくら貯めておけばよいかの参考にしてください。
浄化槽の維持管理が浄化槽法で義務になっている理由

浄化槽は管理者である設置者が責任を持って管理します。これは浄化槽法で定められた義務です。
保守点検や清掃を怠ると微生物のバランスが崩れます。においが出たり処理能力が落ちたりして川の汚染にもつながります。
浄化槽法で定められた3つの義務|保守点検・清掃・法定検査
浄化槽の管理者には3つの義務があります。義務ごとに担当する業者や行う回数が違うので注意しましょう。
- 保守点検:機器の点検・調整や消毒剤の補充。登録業者が行います。
- 清掃:たまった汚泥の引き抜き。許可業者が行います。
- 法定検査:正常に働いているかを全体的に調べる検査。指定検査機関が行います。
この3つはそれぞれ別の役割を持ちます。保守点検・清掃の契約を結んでいても法定検査は自動では行われません。
浄化槽の維持管理費用|年5〜10万円が目安

毎年かならず発生する維持管理費を見ていきましょう。保守点検・清掃・法定検査の3つにかかる費用と年間合計の目安を紹介します。
なお次の金額は5人槽の一般的な家庭用浄化槽の目安です。実際の費用は人槽や地域・業者・使用状況によって大きく変わります。
保守点検の費用と頻度|年3〜4回が目安
保守点検では浄化槽が正常に動いているかを確かめて槽内の点検や消毒剤の補充も行います。一般家庭の槽なら年3〜4回の実施が一般的です。
保守点検の費用は年間で1〜3万円が目安です。
単独処理か合併処理かといった浄化槽の種類や槽の大きさによっても金額は違います。年間契約を結ぶケースが多く契約内容で金額が変わります。
清掃の費用と頻度|年1回・2〜5万円が目安
浄化槽清掃は槽内にたまった汚泥や浮いた汚れのスカムを引き抜く作業です。
原則として年1回以上行うことが義務づけられていて、全ばっ気方式など一部は半年に1回以上必要になります。
1回あたり2〜5万円が目安です。汚泥の量や使用状況によって増減します。
清掃をせず放置すると汚泥の水分が抜けて固まります。固まった汚泥を吸い取るには水が必要です。
使う水の量が増えるため料金は高くなります。
法定検査の費用|7条検査は約13,000円・11条検査は約6,000円
法定検査には2種類あります。
- 7条検査:使用開始後3〜8か月の間に1回のみ受ける検査。工事が正しく行われたかを確かめる検査です。費用は約13,000円が目安です。
- 11条検査:翌年以降に毎年1回受ける定期検査。費用は約6,000円が目安です。
11条検査の手数料は都道府県ごとに決められていて、家庭用の浄化槽ではおおむね4,000〜7,000円の範囲です。
正確な金額はお住まいの自治体か指定検査機関で確かめてください。
年間の維持管理費用の目安|5人槽で年5〜10万円
保守点検・清掃・法定検査の3つに加えてブロワーや放流ポンプの電気代も必要です。
保守点検・清掃・法定検査の3つでおおむね4〜9万円程度が目安です。電気代を加えると年5〜10万円程度になります。
次の表は5人槽の家庭を想定したイメージです。
| 保守点検 | 年3〜4回/約1〜3万円 |
| 清掃(汚泥引き抜き) | 年1回以上/約2〜5万円 |
| 法定検査(11条検査) | 年1回/約6,000円 |
| 電気代(ブロワー・放流ポンプ) | 常時/約1〜2万円 |
| 年間にかかる合計 | 約5〜10万円 |
人槽別の年間維持費|7人槽・10人槽は清掃費が上がる
浄化槽が大きくなるほど汚泥の量が増えるので、清掃費や電気代も上がります。人槽ごとの年間維持費の目安は次のとおりです。
| 項目 | 5人槽 | 7人槽 | 10人槽 |
| 保守点検 | 約2万円 | 約2万円 | 約2万円 |
| 清掃 | 約2万円 | 約3万円 | 約5万円 |
| 法定検査(11条検査) | 約6,000円 | 約6,000円 | 約6,000円 |
| 電気代 | 約1万2,000円 | 約1万5,000円 | 約2万円 |
| 合計 | 約5万8,000円 | 約7万1,000円 | 約9万6,000円 |
金額は地域や業者によって変わります。くわしくは契約している管理会社に確かめましょう。
浄化槽の消耗品にかかる費用|ブロワーなどの交換

毎年の維持管理費とは別に数年〜10年ごとに発生する消耗品の交換費用もあります。
浄化槽は機械で動く設備なので部品はいつか寿命を迎えます。あらかじめ知っておけば急な出費にも慌てずに済むでしょう。
ブロワーの交換費用と寿命|5〜10年が目安
ブロワーは24時間動き続けて槽内の微生物に空気を送る大切な機械です。寿命の目安は5〜10年程度です。
業者に頼んだ場合の交換費用は機種や風量によって幅があります。1口タイプで約3〜4万円、2口タイプで約5〜6万円が目安です。
配管や台座の交換が必要な場合は追加費用がかかります。
ブロワーが止まると微生物に空気が届かず、汚水をためるだけの状態になって悪臭の原因になります。
異音や振動が出てきたら止まる前に交換を検討しましょう。ネットで購入すれば業者の人件費がかからず安く交換できます。
バルブ・散気管の費用|5千円〜2万円
バルブや散気管はブロワーから送られた空気を槽内へ均等に行き渡らせる部品です。
目詰まりや劣化が起きると槽内に空気が送られず、微生物が死んでにおいが出たり処理した水が汚れたりします。
点検のときに状態を確かめて必要があれば掃除していますが、長く使うと詰まりや破損は起こるものです。
交換費用は部品代と作業費を合わせて5千円〜2万円程度が目安です。
放流ポンプの交換費用|7〜12年が目安
放流ポンプは処理した水をくみ上げて放流する装置です。土地に十分な傾きがなく自然に水を流せない場合に設置します。
基本的に2台一組で設置されています。設置した時期が同じため2台がほぼ同時に故障するケースも少なくありません。
寿命の目安は約7〜12年です。
交換・取り付け費用はポンプのメーカーにもよりますが1台8〜15万円程度が目安です。
槽内の経年劣化と修繕にかかる費用

浄化槽を長く使うと消耗品の交換だけでは済まなくなり、槽の内部も古くなって傷んでいきます。
修繕の規模によって費用は大きく変わります。
担体の交換費用|5万円程度
「担体」は微生物が住み着いて汚れを分解するための部材です。
プラスチックやスポンジ製が多く1個1㎝に満たない大きさです。
担体には細かい穴がたくさん開いていて微生物がくっつきやすくなっています。長年使うと傷んで微生物が住み着きにくくなります。
劣化が進むと処理能力が落ちるため担体の補充・交換が必要です。費用は機種や量によって変わりますが5万円程度が目安です。
ろ材の浮上・落下と入れ直しの費用
「ろ材」は汚水をきれいにする微生物を槽内に住み着かせるための部材です。固形の汚物をこしとる役割もあります。
ろ材を固定する台が外れて浮き上がったり逆に落下したりすることがあります。
本来の処理ができないため、ろ材の入れ直しや固定部分の補修が必要です。点検時に見つかる場合が多く状態によって作業費が変わります。
槽内に入っての作業になるので10〜20万円ほどの費用がかかります。
漏水・湧水のトラブルと修繕費用
槽の本体にひび割れができると中の水が外へ漏れ出す「漏水」や地下水が槽内に入り込む「湧水」が起こります。
どちらも放っておけない状態なのですぐに修理が必要です。槽内に入っての専門的な作業になるので費用は10〜30万円ほどかかります。
本体の損傷が大きいと大規模な修繕や80〜150万円程度かかる浄化槽そのものの交換が必要になります。
費用を抑えるには早めに見つけて対処することが大切です。
修繕費は積み立てで備える|年間2〜5万円が目安
浄化槽は長く使い続けるうちに傷んでいく設備です。
そこで消耗品の交換や修繕に備えて修繕費を積み立てておくと安心です。急な出費にも慌てず対応できます。
目安は保守点検・清掃・法定検査・電気代に修繕費を加えて年間7〜15万円ほどです。
内訳は電気代込みの維持管理費5〜10万円に修繕費の積み立て2〜5万円を加えた金額になります。
毎年これだけ確保しておけばブロワーの交換や本体の修繕が必要になっても落ち着いて対応できます。
浄化槽の費用に関するよくある質問

浄化槽の寿命は何年くらいですか?
浄化槽本体の寿命は一般的に20〜30年程度が目安とされます。ただしきちんと保守点検・清掃を続けた場合の話です。
管理を怠ると劣化が早まり寿命が縮みます。こまめな点検と清掃や早めの部品交換を心がければ長く安心して使い続けられます。
空き家や長期不在のときも維持管理は必要?
浄化槽を使っていなくても設置されている限り管理者の義務は続きます。長期間まったく使わない場合は自治体へ「使用休止届」を出すのも一つの方法です。
使用休止届を出すと休止中の法定検査などが免除されます。条件は自治体によって違うので事前に確かめましょう。
空き家にする予定があるなら早めに窓口へ相談しておきましょう。
引っ越しで使用者が変わったら手続きは必要?
はい、必要です。浄化槽の管理者が変わったときは「管理者変更報告書」などの書類を自治体へ届け出ます。
あわせて保守点検や清掃の契約も新しい使用者へ引き継ぎます。引っ越しの際は届け出と契約の引き継ぎを忘れずに行いましょう。
法定検査を受けないとどうなりますか?
法定検査は浄化槽法で定められた義務です。受けずにいると自治体から指導や助言、勧告が行われます。
それでも改善しないと次の段階として改善命令が出され、命令に従わないと過料を求められることもあります。
「保守点検をしているから検査は不要」ということはありません。検査費用は省けないものと考えておきましょう。
浄化槽を新しく設置したり撤去したりする費用は?
新しく設置する費用は5人槽で約80〜120万円が目安です。古い浄化槽の撤去には10〜20万円ほどかかります。
設置や入れ替えには自治体の補助金を使えることが多いです。
まとめ|浄化槽の費用は修繕費の積み立て込みで年7〜15万円が目安

浄化槽は毎年の維持管理費がかかる設備です。保守点検・清掃・法定検査に電気代を加えて年5〜10万円程度が目安になります。
加えてブロワーや放流ポンプなどの消耗品交換費もかかります。担体やろ材、漏水といった経年劣化の修繕費も必要です。
実際に積み立てがなく修理ができずに困っているお客様は多くいます。
修繕費も毎年少しずつ積み立てておくと安心です。維持管理費に修繕費の積み立てを加えて年間7〜15万円ほどを目安に確保しておきましょう。
この費用は法律で定められた義務を果たすためのものであり、きれいな水環境を守るためのものでもあります。
大切なのはトラブルを早めに見つけて対処することです。設置や単独処理から合併処理への切り替えの際は補助金も上手に活用しましょう。
お住まいの地域の正確な費用や制度は自治体や契約している管理会社に確かめてみてください。






