浄化槽の維持管理とは?点検・清掃・法定検査の基本を解説!
浄化槽は下水道が整備されていない地域で生活排水を処理する設備です。維持管理は法律で決められた義務です。
そのため定期的な点検と清掃を受けなければいけません。
この記事では浄化槽管理士歴10年以上の私が、浄化槽の利用者やこれから導入を考えている方に向けて維持管理の基本と正しい使い方を解説します。
管理をしないと臭気や水質汚染の原因になるので注意してください。浄化槽を正しく使えば、環境を守りながら快適に暮らせます。
次の動画では浄化槽の仕組みや維持管理を紹介しています。
浄化槽の仕組みと役割

この章で紹介するのは次の3つです。
- 汚水処理設備としての浄化槽の役割と使い方
- 生活排水を浄化し環境を守る役割
- 浄化槽の普及状況
汚水処理設備としての浄化槽の役割と使い方
浄化槽は下水道がなく、今後も整備される予定のない地域で多く使われている汚水処理設備です。
家庭や施設から出る生活排水をきれいにして、環境の汚れを防ぎます。
浄化槽の仕組みは人間の体によく似ています。人間は口に入れるものが健康に大きく関わるように、浄化槽も流しこんだものの影響を直接受けるのです。たとえば殺菌力の強い液体歯磨きは、口の中の悪い菌だけでなく良い菌まで殺してしまいます。
浄化槽の中でも同じです。殺菌力の強い洗剤を使いすぎると汚水をきれいにする微生物まで死んでしまいます。
浄化槽のはたらきを保つために微生物に悪いものは流さないでください。代表的なものは次の4つです。
- 揚げ物などで出る油
- 決められた量を超える洗剤
- 水に溶けないティッシュやおもちゃなどの異物
- 食べ残しや料理で出る野菜くず
生活排水を浄化し環境を守る役割
浄化槽はトイレや台所、お風呂などの生活排水を処理します。
処理していない排水が川や海に流れると川や海の生き物に大きな影響が出ます。
汚水をきれいにして自然に返すことは今の暮らしだけでなく未来の暮らしを守るためにも大切です。
川や海が汚れると魚が減ったり悪臭が出たり飲み水が足りなくなったりします。
浄化槽の普及状況
浄化槽を使っている人は全国の約10%と少なく、あまり知られていません。北海道や東北、四国地方では多く使われています。
下水道がない地域では浄化槽を設置する必要があります。補助制度を使えば設置費用の負担を軽くできます。
次の動画では実際の浄化槽を紹介しています。
浄化槽の種類と処理性能

浄化槽には次の2種類があります。
- 合併処理浄化槽
- 単独処理浄化槽
合併処理浄化槽|生活排水をすべて処理
合併処理浄化槽は家庭からの生活排水をすべて処理できます。BOD除去率が90%以上と高く、環境にやさしい設備です。
BOD(生物化学的酸素要求量)
Biochemical Oxygen Demand(BOD)は水の汚れの程度を表す数値です。水の中の有機物を微生物が分解するときに使う酸素の量を測ります。BODの値が高いほど有機物が多く、水が汚れているということです。
BODの測定では水を20℃で5日間置きます。その間に水にとけている酸素がどれだけ使われたかを測ります。
単独処理浄化槽|トイレ排水のみ処理

単独処理浄化槽はトイレの排水だけを処理する設備です。
台所やお風呂などの生活排水はそのまま流れるので環境への負担が大きくなります。
今は新しく設置できません。
環境を守るために合併処理浄化槽への切り替えがすすめられています。
ブロワーの役割と重要性

ブロワーは浄化槽の「心臓部」ともいえる装置です。微生物に酸素を送る役割があります。
ブロワーについて知っておきたいことは次の2つです。
- ブロワーの役割
- ブロワーが止まったときのリスク
ブロワーの役割
ブロワーは酸素を好む微生物に空気を送る装置です。微生物は酸素を使って生活排水の中の汚れを分解します。
ブロワーが止まったときのリスク
ブロワーが止まると酸素が足りなくなり、微生物が死んで処理する力が落ちます。臭いが出て水質も悪くなるので注意が必要です。
きれいになっていない汚水がそのまま流れ出てしまいます。ブロワーは定期的に点検しましょう。
次の動画ではブロワーが故障したときの槽の中の変化や影響を解説しています。
浄化槽の維持管理に必要な3つの作業

きちんと維持管理をすれば排水をきれいにでき、環境の汚れも防げます。維持管理に必要な作業は次の3つです。
- 保守点検
- 浄化槽清掃
- 法定検査
この3つは浄化槽法で決められた持ち主の義務です。浄化槽法は1983年にできた法律で、浄化槽の設置や維持管理のルールを定めています。
清掃をせず都道府県の改善命令にも従わないと、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を受けるおそれがあります。
保守点検|運転状況の確認
保守点検では浄化槽の運転状況や異常を確かめます。点検をするのは国家資格を持つ浄化槽管理士です。
浄化槽の型式に合わせて点検します。消毒剤の補充や空気の調整・修理なども行います。
浄化槽清掃|汚泥やスカムの引き抜き

浄化槽清掃は槽の中にたまった汚泥や水面に浮いたかたまり(スカム)をバキュームカーで引き抜く作業です。
清掃をしないと処理する力が落ちて、臭いや環境汚染・故障の原因にもなります。
きれいになっていない汚水が外に流れ出ると環境が汚れ、近所迷惑にもつながります。
定期的に清掃することが浄化槽を長く使うコツです。
法定検査|機能と管理状況の確認
法定検査は浄化槽の機能や管理状況を確かめるために行う検査です。
指定検査員が第三者の立場で検査します。定期的に検査を受けることは法律で決められた義務です。
車で例えると、保守点検は「定期点検」、法定検査は「車検」のイメージです。
次の動画でも解説しています。
浄化槽管理士の役割と資格

浄化槽管理士は国家資格を持つ専門家です。浄化槽の保守点検を行い、浄化槽のはたらきを保ちます。
ここでは管理士の仕事内容と重要性を紹介します。
浄化槽管理士の仕事内容
浄化槽管理士は点検のときに消毒剤を補充し、ブロワーの動きや水質も確かめます。
詰まりや異常があれば修理や調整をして、浄化槽が正常に動き続けるように保つのが仕事です。
浄化槽管理士の重要性
浄化槽管理士が定期的に点検や修理をすれば浄化槽は長持ちします。環境への負担も減らせます。
環境にやさしい洗剤や正しい使い方を利用者に伝えることも管理士の大切な仕事です。
浄化槽清掃|バキュームカーと業者の選び方

この章で紹介するのは次の4つです。
- 浄化槽清掃にはバキュームカーを使用
- 浄化槽清掃の流れ
- バキュームカーの操作と技術
- 信頼できる業者の選び方
浄化槽清掃にはバキュームカーを使用
浄化槽の清掃は年に1回以上行うことが法律で決められています。
単独処理浄化槽の中でも「全ばっ気型」というタイプは槽が小さいので6か月に1回以上の清掃が必要です。
浄化槽清掃ではバキュームカーで槽の中の汚泥を吸い取り処理場まで運びます。
清掃のときはふだんの点検では見えにくい部分の状態も確かめられます。異常を早く見つけて直すためにも定期的な清掃が大切です。
浄化槽清掃の流れ
浄化槽の清掃は専門の業者に頼みます。清掃は次の流れで行います。
- バキュームカーで汚泥やスカムを吸い取る
- 槽の中の汚れを洗い流す
- 配管やポンプを点検して異常があれば直す
- 清掃のあとは槽がつぶれないように水を張る
清掃で吸い取った汚泥やし尿は市町村のし尿処理場で処理するのが一般的です。一部の地域では汚泥を乾かして肥料として再利用する取り組みもあります。
清掃の様子は次の動画で確かめてください。
バキュームカーの操作と技術
バキュームカーの操作は簡単そうに見えますが専門の知識と技術が必要です。
汚泥の状態やたまり具合を見きわめます。浄化槽の構造もよく知っていなければなりません。
汚泥がかたまると吸い取りにくくなります。槽の中の装置や配管をこわさないようにホースを入れる位置や角度にも気をつけます。
信頼できる業者の選び方
業者選びは浄化槽の寿命に関わる大切なポイントです。料金の安さだけで決めず次の点を確かめましょう。
- 許可を受けた清掃業者かどうか
- 清掃後に作業内容を説明してくれるか
- 地域での実績や評判
信頼できる業者を選べばトラブルを防げます。長い目で見て費用もおさえられます。
法定検査の詳細|7条検査と11条検査

法定検査には「7条検査」と「11条検査」の2種類があります。
どちらも浄化槽がきちんと管理されているかを確かめるための検査です。それぞれの違いを見ていきましょう。
- 1度だけ行う7条検査
- 毎年受ける11条検査
1度だけ行う7条検査
7条検査は浄化槽を使い始めて3か月たってから8か月以内に1度だけ受けます。
排水の流れやブロワー・配管に問題がないかを確かめて、浄化槽が正しくはたらいているかを詳しく調べる検査です。
毎年受ける11条検査
11条検査は年1回行う定期検査です。指定検査員が保守点検や清掃の状況を確かめ、浄化槽の機能が正常に保たれているかも調べます。
見のがしやすい問題を早く見つけられるので、浄化槽を安定して使い続けるのに役立つ検査です。
浄化槽の維持管理にかかる費用

維持管理にかかるおもな費用は次の4つです。
- 保守点検費用
- 浄化槽の清掃費用
- 法定検査の費用
- ブロワーや放流ポンプの運転費用
保守点検費用
保守点検は浄化槽の種類によって3〜4か月に1回以上行います。
費用は契約内容や人槽、地域によって異なります。1回あたり数千円〜1万円程度が一般的です。
浄化槽の清掃費用
一般的な家庭用サイズの5人槽の清掃費用は1回2〜5万円ほどが目安です。
費用は地域や業者・使い方・汚泥のたまり具合によって変わります。
法定検査の費用
法定検査を受けることは浄化槽の持ち主(浄化槽管理者)の義務です。設置したあとに受ける7条検査と毎年受ける11条検査があります。
費用の目安は7条検査が約13,000円、11条検査が約6,000円です(地域によって異なります)。
ブロワーと放流ポンプの運転費用
ブロワーの運転費用は消費電力と使用時間によって変わります。
家庭用の30〜80Wのブロワーなら月あたりの目安は約670〜1,790円です。年間では約8,000円〜2万円ほどです。
放流ポンプの運転費用も動く時間と消費電力によって変わります。月あたりの目安は数百円程度です。
浄化槽の維持管理を怠った場合のリスク

浄化槽の維持管理をしないと次のリスクがあります。
- 環境・衛生面のリスク
- 修理費用の増加
- 浄化槽の寿命が縮む
環境・衛生面のリスク
保守点検や清掃をしないと次の問題が起こります。
- 浄化槽の働きが落ちて大腸菌などがそのまま流れ出る
- 地下水が汚れて水の生き物や環境に悪い影響が出る
- 変なにおいや音が出て暮らしにくくなる
修理費用の増加
汚泥やスカムが浄化槽の中にたまりすぎるとろ材や仕切り板などの装置が故障します。
配管やポンプが詰まると浄化槽がきちんと働かず修理費が高くなりがちです。故障が進むと修理できずに本体ごと交換になることもあります。
浄化槽の寿命が縮む
浄化槽本体の寿命は約20〜30年です。手入れをしないと汚泥がたまって機器がいたみ、寿命を縮めます。
ブロワーやポンプは本体より寿命が短い消耗品です。交換の目安は次のとおりです。
- ブロワー:5〜10年
- 放流ポンプ(水中ポンプ):7〜10年
- マンホール:約15年(設置状況によって変わります)
点検や検査で指摘を受けたら契約している管理会社に相談して早めに直しましょう。小さな不具合をほうっておくと故障が大きくなり寿命を縮めます。
浄化槽のよくあるトラブルと対処法

浄化槽でよくあるトラブルと対処法は次の5つです。
- 臭いが気になるとき
- 虫が発生したとき
- 漏水が起きたとき
- 停電が起きたとき
- 水位が高くなったとき
臭いが気になるときはまずブロワーを確かめる
浄化槽から臭いが出る原因はさまざまです。まずはブロワーがきちんと動いているか確かめましょう。
ブロワーに問題がなければ浄化槽そのものに異常があると考えられます。おもな原因は汚泥のたまりすぎや配管の詰まり、使う水の量の増加などです。原因を見つけるのは難しいので契約している管理会社に相談しましょう。
虫が発生したら殺虫プレートを使う
槽の中は一年中暖かく虫が好む環境です。対処法としては槽の中に吊るす殺虫プレートが効果的です。
浄化槽の清掃も効果があります。槽の中をきれいにすれば虫の発生をおさえて臭いも減らせます。
漏水は管理会社に相談する
浄化槽本体にヒビが入ると汚水が漏れて土を汚してしまいます。漏水の原因を見つけたり直したりするのは難しいので、契約している管理会社に相談してください。
停電が起きたら水を流すのを控える
停電中はブロワーが止まり槽の中に空気を送れません。放流ポンプを使っている場合は水位が上がって水の流れが悪くなります。
停電中は浄化槽の働きが一時的に落ちるので、水を流すのをなるべく控えましょう。停電が直ったら機器がきちんと動いているか確かめてください。
水位が高くなったら詰まりを疑う
水位が高くなる原因には大雨や槽の中の詰まり、放流口からの逆流などがあります。なかでも多いのは槽の中の詰まりです。
水位が上がると汚水をきれいにできなくなり生活にも困ります。定期的に維持管理を行って正しい水位を保ちましょう。
浄化槽コミュニティを活用しよう

LINEオープンチャット「浄化槽研究所」では浄化槽に関心のある方や現場で働く方が情報を共有しています。
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まとめ|浄化槽の維持管理で環境を守ろう

浄化槽の維持管理は生活環境を守るために大切です。
保守点検・清掃・法定検査をきちんと行えば浄化槽のはたらきを保てて、環境への負担もおさえられます。
この記事ではブロワーの役割や浄化槽管理士の仕事、清掃の流れも紹介しました。維持管理を怠ったときのリスクやよくあるトラブルの対処法、費用の目安も説明しています。
浄化槽はふだん目に入らないので契約している管理会社に定期的に見てもらうことが大切です。







