浄化槽の保守点検は、環境や日常生活への悪影響を防ぐうえで欠かせません。槽内の汚れや異常を放置すると、処理機能が低下し故障や悪臭の原因になります。
スカムや堆積汚泥の確認、消毒剤の補充、残留塩素の測定が重要です。この記事では、点検手順と必要な道具について解説します。記事を読めば保守点検の要点がわかります。
浄化槽点検の手順

浄化槽点検の具体的な手順は、以下を参考にしてください。
- 1槽目の外観チェックと点検手順
- 2槽目の点検とガス抜き作業
- 担体流動槽の点検ポイント
1槽目の外観チェックと点検手順

点検は、マンホール周りの外観確認から始めます。周辺に異常がないことを確認したうえで、1槽の内部をチェックします。
1槽は汚水が最初に流れ込む場所で、最も汚れが溜まる槽です。1槽に発生するスカム(浮きカス)や底部に堆積した汚泥の状態を確認します。
スカムが厚くなっている場合は、清掃の目安になります。堆積汚泥の測定方法は、以下の動画をご覧ください。
保守点検では、槽内に発生した害虫の駆除も行います。チョウバエや蚊を確認した際は、槽内へ殺虫剤を散布し、マンホールを約3分間閉じると効果的に駆除できます。
2槽目の点検とガス抜き作業

2槽目も1槽と同様に、スカムや汚泥の状態を確認します。嫌気ろ床槽ではろ材にガスが溜まりやすいため、ガス抜きを忘れずに行ってください。

ガス抜き作業は、槽内の詰まりを防ぐうえで重要です。塩ビ管とブロワーを使って2槽を撹拌し、溜まったガスを放出します。作業中は槽内に泡がブクブクと発生します。

ガス抜きの作業方法は、以下の動画を参考にしてください。
担体流動槽の点検ポイント

2槽の点検が終わったら、次に担体流動槽の点検を行います。担体流動槽では、好気性微生物が酸素を使って汚水を分解・処理しています。
担体に汚れが付着していないか、エアー量に問題がないか、担体が適切に旋回・流動しているかを確認します。
以下の動画では、担体が槽内でどのように動いているかを確認できます。
消毒剤の補充と残留塩素の測定方法

消毒剤の補充と残留塩素の測定方法は、以下のとおりです。
- 消毒剤の補充
- 残留塩素の役割
消毒剤の補充

消毒剤は、浄化槽の機能を適切に保つために欠かせません。減少すると殺菌効果が弱まり、大腸菌などが含まれた処理水が排出されてしまいます。
保守点検では必ず消毒剤の残量を確認し、不足していれば補充しましょう。法定検査でも消毒剤の不足は指摘対象になります。
残留塩素の役割
残留塩素とは消毒後に水中へ残る塩素のことです。適切な濃度が保たれていれば、消毒が十分に行われた証拠となります。
残留塩素が不足すると微生物が繁殖し、水質が悪化します。測定にはDPD錠剤を使い、遊離残留塩素と結合残留塩素を判別できます。
遊離残留塩素と結合残留塩素の違いは、以下のとおりです。
- 遊離残留塩素は殺菌スピードが早く活性状態で細菌やウイルスを除去する
- 結合残留塩素は有機物と反応し消毒効果が低下する
DPD錠剤による検査では、遊離残留塩素はすぐに反応しますが、結合残留塩素は反応までに時間がかかります。塩素濃度は適正な範囲に保ち、結合残留塩素はできるだけ少なく抑えることが大切です。
測定手順は以下の動画で確認できます。
浄化槽点検に必要な道具と使い方

浄化槽点検で必要なツールと使い方について、以下で解説します。
- 亜硝酸性窒素の測定と硝化反応の確認
- 透視度の測定基準と方法
亜硝酸性窒素の測定と硝化反応の確認

硝化反応は、有機物が分解される過程で発生します。亜硝酸性窒素を測定し、処理が正常に行われているかを確認しましょう。
透視度・pH・DOも測定し、点検記録票に記入します。定期的に記録を残せば浄化槽の状態を把握しやすくなります。
透視度の測定基準と方法

浄化槽の放流水における透視度の基準は、合併処理浄化槽で20度以上、単独処理浄化槽で7度以上です。透視度計を使い、底にある十字マークが見えるかを確認します。
透視度の基準を満たしていれば、処理状況は良好と判断できます。今回の点検では透視度が30度以上あり、適切に処理されていることが確認できました。
ブロワーフィルターとバルブの清掃方法

ブロワーは槽内に空気を送り込み、微生物の活動を活性化させる重要な装置です。フィルターが汚れると空気の供給量が不足し、処理性能が低下します。
点検時には必ずフィルターを清掃しましょう。フィルターの清掃手順は、以下のとおりです。
- ブロワーの電源を切る
- フィルターを取り外し、汚れを取り除く
- フィルターを再び取り付ける

清掃後、すべてのバルブを開放し、正常に機能しているか確認します。マンホール周辺を清掃し、フタの向きを調整してロックすれば作業完了です。
まとめ|NISSIN-NIS型浄化槽管理のポイント

浄化槽の維持管理を怠ると、処理性能が落ちて周囲の環境へ悪影響を与えます。定期的な点検と清掃を行い、常に適切な管理を心がけましょう。
マンホール周辺の点検や、各槽内のスカム・汚泥の確認、消毒剤の補充、残留塩素の測定は欠かせない作業です。透視度やBOD基準の確認、ブロワーフィルターの清掃も重要です。
維持管理を徹底すれば、浄化槽の性能を安定して保てます。長期間にわたって安心して使用し続けるためにも、日頃の管理が欠かせません。