
- 浄化槽とは?生活排水を浄化するための設備
- 清掃が必要な理由:機能維持と効率的な浄化のため
- 浄化槽法とは?浄化槽の設置、維持、管理に関する法律
浄化槽は私たちの生活に欠かせないものです。健康かつ快適な生活を実現するためには、定期的なメンテナンスと管理が不可欠です。
今回は、浄化槽清掃の大切さと重要性について詳しく解説していきます。
浄化槽とは?生活排水を浄化!

浄化槽は、公共の下水道が整備されていない地域の「汚水処理設備」として、環境保全に欠かせない役割を担っています。
生活排水、例えばトイレや台所からの排水は、浄化槽内の微生物によって浄化され、その後側溝や河川、海に放流されます。
浄化槽の所有者は維持管理の一環として「保守点検、清掃、法定検査」の実施が義務付けられています。
維持管理を怠ると、不衛生な状態や水質汚染が引き起こされ、健康や環境に悪影響をもたらします。
さらに理解を深めたい方は、以下の動画をチェックしてください。
単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違い
浄化槽には大きく分けて、「単独処理浄化槽」と「合併処理浄化槽」の2種類が存在します。
単独処理浄化槽
このタイプは「みなし浄化槽」とも称され、昭和35年頃に普及し始めました。
その背景には、「くみ取り式トイレ」から「水洗トイレ」への移行を求めるニーズが増加したことがあります。単独処理浄化槽は、「トイレの排水のみ浄化処理することが可能」です。
合併処理浄化槽
このタイプは家庭内で発生する全ての生活排水、つまりトイレだけでなく、台所や浴室の排水も浄化処理できる能力を持っています。
昭和58年に制定された「浄化槽法」により、単独処理浄化槽の製造は禁止され、現在では製造されていません。
今は合併処理浄化槽しか設置できない!
現在、単独処理浄化槽の製造は廃止され、全ての排水を処理可能な「合併処理浄化槽」が主流となっています。
合併処理浄化槽は、小型の下水処理施設ともいえます。
かつては、単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違いをマンホールの数で判別できました。
単独処理浄化槽は2つの蓋があり、合併浄化槽は3つの蓋が設けられていました。
近年の合併処理浄化槽は非常にコンパクトな設計となっており、マンホールの蓋だけでは区別がつきづらくなっています。
単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への交換をご検討の場合、自治体によっては「補助金制度」が存在します。
詳細はお住まいの市役所や町役場への相談がおすすめです。
浄化槽と下水道の違い

浄化槽と下水道は、家庭や建物からの排水を処理する設備ですが、運営方法、規模、システムが異なります。
浄化槽
- 個別の家庭や建物に設置される
- 生活排水を微生物の働きで浄化し、有機物を分解
- 処理後の水は消毒・滅菌され、側溝や河川に放流
- 設置や維持管理は利用者の義務
下水道
- 公共の汚水処理システムで、自治体が管理・運営
- 下水道網で集められた排水は、地域の下水処理施設で集中処理
- 処理後の水は河川や海に放流
- 使用料は毎月の下水道料金として請求
- 利用者は個別の処理装置を持つ必要がない
主な違いは「浄化槽」が各家庭や建物ごとの排水を処理するのに対し、「下水道」は公共の設備として地域全体の排水を集中的に処理する点です。
近くに側溝や河川が存在しない場合、3つの方法があります。
- 処理した汚水を蒸発させる「蒸発拡散方式」
- 処理した汚水を地下にしみこませる「地下浸透方式」
- タンクに貯めてバキュームカーで吸い取る「貯留方式」
浄化槽の設置は、その土地の特性によって決定されます。したがって、個人が自由に選ぶことはできません。
浄化槽の設置には、専門的な知識と技術を持つ「浄化槽設備士」の国家資格が必要です。
専門性が要求されるため、一般の方が自身で設置を行う、いわゆるDIYは適切ではありません。
浄化槽清掃の重要性と必要性!
- 汚れや堆積物が浄化槽内に蓄積し、浄化処理能力が低下
- 有機物や固形物の腐敗により、不快なニオイが発生
- 蓄積物によって微生物や処理装置が覆われ、処理能力が低下
- 浄化能力の低下は環境への影響や浄化槽トラブルを引き起こす可能性
浄化槽清掃や保守点検は、日々の生活を快適に送るためにも欠かせません。
定期的な清掃や点検を怠ると槽内に汚泥が溜まり、処理能力が低下してしまいます。
環境への悪影響はもちろん、浄化槽自体の寿命も短くなります。
清掃や点検は環境の保護だけでなく、浄化槽の耐用年数を延ばすためにも重要な作業です。
清掃が必要な理由と装置破損のリスク

浄化槽は家庭の汚水を微生物の力で効果的に浄化し、清潔な水として側溝や河川に放流する役割を持っています。
しかし、維持管理を怠ると、「汚泥や油、メタンガスなどが槽内に溜まり」、さまざまな問題を引き起こします。
特に、汚泥が外部に流れ出ると、衛生上のリスクや水質の汚染が生じてしまいます。
浄化槽には、ポンプ、配管、ろ材などの装置が備わっています。これらが汚泥で詰まると、ろ材が流出するなどのトラブルが起きます。

故障した場合の修理費用は、清掃料金よりも高くなることが多いため、定期的な清掃と保守点検が必要です。
汚泥の蓄積を放置せず、早めの清掃をおすすめします。
専門業者への清掃依頼
浄化槽の清掃作業は、地域の専門業者に依頼することが一般的です。
その費用は、浄化槽の型式、容量、地域などによって異なりますが、平均的な相場は、「5人用の浄化槽で約20,000円から40,000円程度」とされています。
また、一部の自治体では浄化槽の維持費用の一部を補助する制度を設けている場合があります。
費用面での不安がある方は、自身の住んでいる自治体に問い合わせてみると良いでしょう。
浄化槽清掃・保守点検は義務!

「浄化槽法」に基づき、「浄化槽の清掃は年に1回以上行うことが義務」付けられています。
清掃を怠ると、未処理の生活排水が側溝や河川に流れ出し、環境への悪影響が懸念されます。
多くの生物に影響を与え、最悪の場合、全球的な環境問題を引き起こす可能性があります。
清掃を怠った際の罰則として、「最大6か月の懲役や最高100万円の罰金」が科されることが考えられます。
環境を守るために法律を遵守し、適切な清掃を行うことの重要性を十分に認識しましょう。
法定検査と保守点検!役割の違い
浄化槽の利用に際しては、清掃だけでなく「保守点検」と「法定検査」も法令で義務付けられています。
保守点検
浄化槽の正常な機能や水質、故障の有無を確認するもの。必要に応じて修理や消毒剤の補充を行います。
法定検査
この検査では、浄化槽が適切に管理・清掃されているかをチェックするためのものです。自治体が指定する検査員が行い、第三者の視点から浄化槽の状態を確認します。
保守点検と法定検査は、それぞれの目的に基づいて行われ、浄化槽の正確な管理と運用をサポートする重要な役割を担っています。
保守点検は定期点検、法定検査は車検と覚えておきましょう!
浄化槽法のまとめ
浄化槽法は、昭和58年に制定された法律であり、浄化槽の設置や清掃・保守点検に関する規定が含まれています。
以下に、浄化槽法に定められた内容と必要な資格をまとめます。
浄化槽の設置
浄化槽を設置する業者は、法律で定められている特定の資格や許可を持つことが必要です。
清掃・保守点検
浄化槽の所有者は、法律に定められた規則に従い、定期的な清掃と保守点検を行う義務があります。
必要な資格
浄化槽の設置及び管理に関与する業者は、浄化槽法に基づき特定の資格を取得する必要があります。これらの資格は、浄化槽の安全な設置と適切な管理を確保するために不可欠です。
以上が、浄化槽法において定められた内容と必要な資格の要点です。
- 浄化槽の設置: 「浄化槽設備士」が担当
- 清掃: 年1回以上、「浄化槽清掃技術者」が実施
- 保守点検: 年3回以上、「浄化槽管理士」が実施
- 法定検査: 年1回、「浄化槽検査員」が浄化槽の正常な状態の確認を行う
浄化槽清掃の頻度は年1回以上!

浄化槽清掃は「浄化槽法」に基づき義務付けられています。
合併処理浄化槽や単独処理浄化槽でも、「最低年1回以上の清掃が必要」です。また、単独処理浄化槽の「全ばっ気型」は、6ヶ月に1回以上の清掃が求められます。
汚泥の過剰な蓄積は浄化槽の性能を低下させ、微生物の活動や水質に悪影響を及ぼします。
その結果、浄化槽は単なる汚水の貯留タンクと化し、非常に不衛生な状態になります。放置すれば、害虫やニオイ発生の原因となり、日常生活に支障をきたす恐れもあります。
浄化槽清掃は、専門的な知識を有する「浄化槽清掃業者」が行います。
自身の地域で清掃業者を見つけるのが困難な場合、市町村役場への問い合わせてください。
業者に清掃を依頼することで、浄化槽を適切に管理し、健全かつ快適な生活環境を保てます。
浄化槽清掃と汚泥の処分方法
浄化槽清掃では、専用の「バキュームカー」を使用して汚泥やスカムを吸引します。
清掃中は、配管の洗浄、槽内の異常確認、バルブの調整が行われ、最後に水を張りを行い作業完了となります。
吸引した汚泥や尿は、各市町村の尿処理場で処理されます。一部の地域では、「汚泥を乾燥させて肥料として再利用」しています。
活性炭を使用する処理場では、処理水からの色やニオイを除去し、ほぼ水道水程の品質まで浄化します。最終的に、処理水は塩素で消毒されてから河川や海に放流されます。
清掃の様子は、以下の動画でご確認いただけます。
浄化槽の清掃後、槽内が空になると「土圧」の影響を受ける恐れがあります。そのため、清掃後には「水張り」という作業で槽内に水を充填することが必要です。
浄化槽の寿命と維持の秘訣
浄化槽の寿命は「約20〜30年」といわれています。
平成14年に公表された「生活排水施設計画策定マニュアル」によれば、30年が経過した浄化槽でも問題なく使用できていると記載されています。
浄化槽は、地震や土壌の状態による災害で破損するリスクがあります。
しかし、定期的な清掃や保守点検を行うことで、寿命を延ばすことができます。
また、最新の浄化槽は「ジシクロペンタジエン」という、強度と耐衝撃性に優れた樹脂を使用しています。
災害の影響を受けず定期的な維持管理を行っていれば、浄化槽は非常に長持ちし、半永久的に使用できると私は考えています。
まとめ

下水道が整備されていない地域での快適な生活を維持するためには、浄化槽は欠かせない設備です。
浄化槽は生活排水を適切に処理し、環境と人々の健康を守る役割を果たします。
浄化槽が正しく機能しないと、環境にバクテリアや大腸菌が放流され、私たちの健康を危険にさらす可能性が高まります。
そのため、以下の点が非常に重要です。
定期的な清掃と保守点検
浄化槽の機能を継続的に保つためには、定期的な清掃と保守点検が不可欠です。
浄化槽を放置すると、環境への悪影響が増大します。さらに、浄化槽の故障リスクが高まり、結果として修理にかかる費用も増加します。
法的検査
国や地方自治体の基準を満たしているかを確認するため、法定検査は必須です。
法定検査によって浄化槽の適切な機能が保証され、生活環境の維持に寄与しています。