浄化槽は、家庭の排水を浄化する環境保護に重要なインフラ設備です。誤った使い方をすると処理機能が低下し、悪臭や詰まりの原因になります。
本記事では、浄化槽を正しく使用し、適切にメンテナンスするためのポイントを解説します。
記事を読めば、浄化槽の寿命を延ばし、トラブルを未然に防ぐための具体的な方法がわかります。以下の動画も参考にしてください。
浄化槽の仕組み

浄化槽の構造を理解するには、仕組みを知ることが重要です。
合併処理浄化槽は複数の槽で構成されており、各槽が異なる役割を果たしています。
- 生活排水は最初の槽で固体と液体に分離する
- 分離した水は次の槽に移送される
- 2槽目で嫌気性微生物がろ材を使い水を処理する
- 処理後の水は3槽目に移送される
- 3槽目では好気性微生物が空気で有機物を分解する
- 最終的に消毒槽で滅菌され、側溝や河川に放流される
家庭からの汚水は、槽内で約12時間かけて処理します。不適切な物を流すと処理が遅れ、故障や詰まりの原因となるため注意が必要です。
以下の動画でも、フローの流れについて解説しています。
浄化槽の正しい使い方

浄化槽を正しく使用するためのポイントは、以下を参考にしてください。
- トイレの流し方で失敗しないためのコツ
- マンホールの上に物を置いてはいけない理由
- 浄化槽に絶対流してはいけないもの
- 微生物を守る環境に優しい洗剤と選び方
トイレの流し方で失敗しないためのコツ
トイレを正しく使うには、十分な水量で流すことが重要です。水量が不足すると排水が不完全となり、詰まりの原因になります。
大量のトイレットペーパーは一度に流さず、数回に分けて流すよう心掛けましょう。
紙おむつやティッシュペーパー、油は絶対に排水に流さないでください。
「流せる」と表示されている除菌シートやおしりふきも分解されにくく、詰まりの原因になるため、使用は避けましょう。
トイレには排泄物とトイレットペーパーのみ流してください。「シングル・パルプ100%」と記載されたトイレットペーパーがおすすめです。
マンホールの上に物を置いてはいけない理由
浄化槽は定期的な点検や清掃が必要です。物を置くと蓋を開けられなくなるため、何も置かないようにしましょう。
重い物を置くと、破損したり浄化槽本体に負荷がかかります。なにか置く際は、軽量で簡単に移動できる物にしましょう。
定期的にマンホールを確認し、ひび割れや損傷がないかチェックすることをおすすめします。
浄化槽に絶対流してはいけないもの

浄化槽を正しく使用するために、以下のものは排水に流さないよう注意しましょう。
- 油脂や食用油
- 残飯や食べカス
- 溶剤やペイント
- 除草剤や農薬
- 化学薬品や薬剤
- 大量の漂白剤や除菌剤
- 砂や石・石鹸の固まりなどの固形物
- おむつ・生理用品
- ペットの毛や異物
- 紙くず・テッシュペーパー
- タバコ・新聞紙
浄化槽に固形物を流すのは避けましょう。野菜くずや魚の骨、使用済みの食用油は詰まりの原因になります。
生ごみは水気をよく切って可燃ごみとして処分しましょう。食用油は凝固剤で固めるか、キッチンペーパーなどで吸い取ってから捨ててください。
ティッシュペーパーは分解できないので、トイレには流さないようにしましょう。

微生物を守る環境にやさしい洗剤と選び方

浄化槽を使用する家庭では、中性または酸素系の洗剤を選びましょう。洗剤は多く使っても汚れが落ちるわけではなく、逆に残ります。
過剰な洗剤はすすぎ時間を延ばし、水の使用量を増やして浄化槽に負担をかけます。適量の使用を心がけましょう。
アルカリ性洗剤は油汚れに効果的ですが、浄化槽内の微生物を死滅させます。
お風呂用のカビ取り剤やパイプ用洗剤にも、微生物に悪影響を与える成分が含まれています。どれも適量であれば問題ありませんが、大量の使用は避けるようにしましょう。

ブロワーの電源は切らない|常時稼働が必要な理由

ブロワーの電源を切ってはいけない理由は、以下の点を参考にしてください。
- 浄化槽の働きを支える微生物たち
- 空気供給が止まると微生物が死滅する
浄化槽の働きを支える微生物たち
浄化槽は、生活排水を微生物の力で処理する設備です。微生物が有機物を分解し、汚水を浄化します。
好気性微生物(酸素を必要とする微生物)と嫌気性微生物(酸素を使わない微生物)が共存し、バランスを保つと正常に機能します。
バランスが崩れると処理機能が低下するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
エアー供給が止まると微生物が死滅する

ブロワーはエアーを送り込み、微生物に酸素を供給しています。
汚水を浄化するうえで欠かせない装置です。留守中や夜間でも、電源は必ず入れたままにしておいてください。
ブロワーを停止すると酸素が不足し、好気性微生物が死滅します。浄化機能が低下し、悪臭の原因となります。
1年以上浄化槽を使用しない場合は、休止届を提出し、清掃と水張りを行いましょう。この場合は、ブロワーの電源は切っても問題ありません。
浄化槽詰まりの前兆と対処法|故障時の費用目安

故障や詰まりの対策と費用については、以下をご参照ください。
- 詰まる前に発生する異音の原因
- 浄化槽の修理費用について
- 補助金を利用|故障時の支援制度
詰まる前に発生する異音の原因
家庭の排水管と浄化槽の接続部分に油や固形物が溜まると、詰まりや臭気の原因になります。
排水溝から臭気がしたり、「ゴポゴポ」と音がする場合は、詰まりの前兆です。詰まり部分に溜まった空気が押し出される際に発生します。
無理に対処すると排水管が破損するため、清掃業者や詰まり抜き専門業者に相談してください。
浄化槽の修理費用について

浄化槽本体の修理費用は、故障箇所や型式、依頼する業者によって異なります。目安として、修理費用は約10〜50万円です。
出張費や作業時間によって追加料金が発生するため、事前に業者へ確認しておきましょう。大規模な工事が必要な場合は、費用や工事日数がさらに増えます。
補助金を利用|故障時の支援制度
浄化槽の交換や修理が必要な場合、自治体から補助金がでます。詳細はお住まいの役所で確認・相談することをおすすめします。
火災保険で修理費用を補える場合もあるため、保険会社にも相談しましょう。修理費用の負担を軽減できます。経年劣化による故障は保険対象外です。
以下のケースは火災保険の対象です。
- 火災による浄化槽の破損は火災保険で補償される
- 台風による浄化槽の破損も火災保険の対象となる
- 落雷による過電流で水中ポンプが故障した場合も補償される
- 豪雨や洪水による浄化槽の破損も補償の対象となる
- ブロワーの盗難も火災保険で補償される
浄化槽の正しい使い方まとめ

浄化槽は、正しく使い、定期的に維持管理することが大切です。トイレやキッチンでは、使用する洗剤や製品にも注意し、詰まりや臭いの発生を防ぎましょう。
不具合が見つかった場合は、専門業者へ相談し、トラブルに発展する前に対応することが重要です。
環境に配慮した洗剤や節水型トイレなどを選ぶことで、浄化槽の負担を減らし、寿命を延ばせます。